【精神科の入院対象から「強度行動障害」が外れる?その背景と課題を考える】

      

【精神科の入院対象から「強度行動障害」が外れる?その背景と課題を考える】

障害者施設で行動障害のある青年が、感情を制御できずに自らの頭を部屋の壁に打ち付けて苦悩している画像です。
厚生労働省が、精神科病院での入院について、強度行動障害を持つ人たちを将来的には対象外とする方針を示しました。これは、長らく「入院」が当たり前だった精神科医療のあり方を大きく変える、大きな転換点となりそうです。

なぜ、この方針が打ち出されたのか?
この方針の背景には、精神科病床を減らし、医療の効率化を進めたいという国の考えがあります。これまでの精神科病院は、症状が落ち着いても退院できず、長期間入院し続けるケースが少なくありませんでした。しかし、今後は「急性期治療」、つまり症状が不安定な時期に集中的な治療を行い、早期の退院を目指す形にシフトしていくことになります。

この方針の中で、「強度行動障害」を持つ人たちが対象外とされたのは、彼らが病気そのものよりも、日々の生活の中で特別な支援を必要とする「障害」を持つ人々と見なされているからです。国は、入院ではなく、地域での福祉サービスを通じて支援していくべきだと考えています。

「訪問看護」で本当に大丈夫?
では、強度行動障害を持つ人たちは、これからどこで支援を受ければいいのでしょうか。厚生労働省は、地域の医療と福祉が連携し、特に「機能を強化した訪問看護事業所」が中心となって支えていく考えを示しています。

これは、従来の入院中心の医療から、在宅や地域での生活を支援する方向への大きな転換です。しかし、この方針には大きな課題と懸念が伴います。本当に訪問看護事業所だけで、重度な行動障害を持つ人たちを支えられるのでしょうか。

この問題は、単に医療体制が変わるという話ではありません。地域社会全体で、重い障害を持つ人々をどのように受け入れ、支えていくのかという、私たちの社会のあり方が問われています。

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現状、重篤な行動障害を受け入れられるグループホームや障害者施設は不足しています。また、専門性のある医師やスタッフも不足しており、行動障害を持った家族は疲弊しきっているのが現状です。

この国の新しい方針は、こうした現状をさらに悪化させるリスクをはらんでいないでしょうか。行政や医療機関だけでなく、私たち一人ひとりが、この社会課題を自分事として考え、解決に向けて行動していくことが求められています。