【度重なるクールジャパンの大失敗「失われたユニコーンの夢」】

日本政府は経済発展を促すために「クールジャパン」というプロジェクトを推進しておりますが、ことごとく失敗しております。今回はクールジャパンが関わった巨大ユニコーン、295億円の最終赤字、350億円の返済期限が迫る「Spiber社」を取り上げます。
Spiber社の軌跡:夢の素材と冷酷な現実
Spiber社の代表者と政府からの支援
Spiber社は、人工クモ糸を開発するベンチャー企業として、2007年に設立されました。代表者は関山 和秀(せきやま かずひで)氏です。彼は慶應義塾大学の学生時代からこの研究に取り組み、その革新的な技術が政府の目に留まりました。政府は「クールジャパン」戦略の一環として、この未来を担う技術に多額の資金を投じました。その金額は、官民ファンドのクールジャパン機構(CJF)から150億円、政府系の日本政策投資銀行などから200億円とされています。総額350億円もの公的資金が、この「日の丸ユニコーン」に注ぎ込まれたのです。
夢の素材「Brewed Protein™️」
Spiber社が開発したのは、微生物の発酵プロセスを利用して人工的にタンパク質を生産する技術です。この技術で作られた素材は「Brewed Protein™️(ブリュード・プロテイン)」と名付けられ、クモの糸のように軽くて丈夫、かつ環境に優しい次世代素材として注目されました。従来の石油由来の化学繊維や、動物性の素材に代わるサステナブルな素材として、ファッション業界や自動車業界など幅広い分野での活用が期待されていました。
なぜ「ユニコーン」は沈んだのか?:需要の壁
Spiber社の経営が苦境に陥った背景には、いくつかの要因があります。
量産化の難しさ:革新的な技術であったものの、大量生産には大きなコストと時間がかかりました。当初の想定よりも製造コストがはるかに高くなり、採算が合わない状況に陥りました。
市場の需要との乖離:素材そのものの需要は存在したものの、最終製品の市場が未成熟でした。高コストな新素材は、既存の安価な素材に比べて価格競争力がなく、採用が進みませんでした。コロナ禍による経済の停滞も追い打ちをかけました。
過剰な投資:政府からの巨額の資金注入は、研究開発を加速させる一方、事業化の段階で現実とのギャップを生みました。投資に見合うだけの収益を上げることができず、巨額の赤字を抱えることになります。
クールジャパンの失敗とユニコーン育成の限界
Spiber社の事例は、日本の官製ユニコーン育成の難しさを浮き彫りにしています。政府が主導するプロジェクトがことごとく失敗する理由には、以下の点が挙げられます。
官主導の「トップダウン」型モデル:市場のニーズや変化を十分に理解しないまま、政府が「有望」と判断した事業に巨額の資金を投じるスタイルは、市場の現実と乖離しやすい傾向があります。
リスク評価の甘さ:革新的な技術には必ずリスクが伴いますが、政府主導のプロジェクトでは、そのリスク評価が甘くなりがちです。短期的な成功を求め、長期的な市場性や事業継続性を軽視する傾向が見られます。
意思決定の遅さ:民間企業に比べ、公的機関の意思決定は時間がかかります。市場の変化に迅速に対応できず、ビジネスチャンスを逃すことがあります。
今後の展望と教訓
Spiber社は現在、新たな資金調達と事業再編を進めていますが、その道のりは険しいものとなるでしょう。この事例は、日本政府が経済成長を促すために、単に資金を投じるだけでなく、市場の動向を正確に把握し、リスクを適切に評価する能力を高める必要があることを示唆しています。
クールジャパンは、単なる資金提供ではなく、日本の文化や技術を世界に広めるための「戦略」であるべきです。しかし、現状は「官製ユニコーン」を創出しようとする、リスクの高い投機的事業に傾倒しているように見えます。日本経済の未来のためには、政府と民間の役割分担を再考し、真に市場原理に基づいた成長を促すことが不可欠です。