【「命を繋ぐ居住支援・あなたは、人を殺めた人と話したことはありますか?」】

      

【「命を繋ぐ居住支援・あなたは、人を殺めた人と話したことはありますか?」】

手錠をはめた犯罪者が2人の刑事に監視されながら、新幹線を使い護送されているイメージ画像となります。

このお話は、居住支援に携わる人にとって、重くのしかかる現実です。居住支援は、その対象者を選びません。もちろん、断ることもできますが、その先にある社会的な意味を考えると、簡単なことではありません。

日本の司法において、殺人罪の量刑は、被害者の人数や事件の状況によって大きく異なります。死刑が求刑されるのは、一般的に2人以上の殺害や、残虐性が極めて高いケースなど、社会に与える影響が甚大な場合とされています。一方、被害者が1人の場合は無期懲役や有期刑が選択されることが多く、刑期を終えて社会に戻ってくる元殺人犯は少なくありません。

しかし、彼らが直面するのは過酷な現実です。過去の犯罪歴、いわゆる「デジタルタトゥー」は、就職活動において大きな壁となります。多くの企業は採用に二の足を踏み、結果として大半が生活保護を受給することになります。かつては、出所者を積極的に雇用する工場などもありましたが、現代ではコンプライアンス遵守が厳しくなり、元殺人犯の社会復帰は一層困難になっています。

再犯防止のためには、こうした出所者を孤立させず、社会のセーフティネットで支えることが不可欠です。適切な住居や就労の支援がなければ、彼らは再び犯罪に手を染め、新たな犠牲者を生み出してしまうリスクがあるからです。

このような背景から、私たちは元殺人犯への居住支援も行っています。支援対象者の中には、元暴力団組員で薬物依存症の経歴を持つ方もいます。現在、薬物を断ち、生活保護を受給していますが、感情の起伏が激しく、スタッフが恫喝されることもあります。

身長180cm、体重85kgの私であれば、相手が凶器を持っていなければ押さえつけることもできるでしょう。しかし、温厚なスタッフは、元暴力団というだけで恐怖を感じ、萎縮してしまいます。

「刑務所で更生したはずなのに、なぜ穏やかに生きられないのだろうか?」

時折、そんな疑問が頭をよぎります。更生施設での訓練を経ても、根本的な性格や偏見はなかなか変わらないのではないか。つい、そんな偏見を持ってしまう自分もいます。しかし、私自身、交通違反で警察の世話になったことがある程度の、ごく普通の人間です。現在は視覚障害を患い、運転免許も返納しました。

私が今できることは、ボランティア活動を通して、少しでも社会が良くなるように居住支援と就労支援に励むことだけです。出所者が安心して暮らせる環境を整え、再犯を未然に防ぐことが、未来の誰かの命を守ることに繋がると信じています。