【崩壊寸前の日本の医療制度を救う!現役経営者が提言する「安心・安全」を持続させるための大胆な改革案 アイズ ルームからのメッセージ:危機にある日本の医療・福祉への思い】
私は20歳で起業して以来、医療機器のシステム開発(超音波診断装置、CT、MRIなど)を皮切りに、レセプト開発、クリニック経営指導、遠隔医療システムの構築など、一貫して医療というフィールドと共に成長してきました。その中で目の当たりにしてきたのは、かつて世界に誇れた日本の「誰もが平等に送れる医療制度」が、今、崩壊の危機に瀕しているという現実です。
現在の医療現場では、医療機関の半数以上が赤字経営に苦しんでいます。インフレによる物価高騰は深刻ですが、医療保険制度の枠組みでは、その高騰分を収入に適切に反映できない構造的欠陥があります。さらに、医師、看護師、介護士などの専門職は、労働に見合った対価が担保されず、慢性的な人員不足が常態化しています。
この「赤字」という現実は、単なる経営問題に留まらず、倫理的な問題を引き起こします。不必要な手術の実施や、本来退院できる患者の入院延長といった、不適切な医療行為の温床となりかねません。そもそも、人命を扱う医療の現場において、「赤字/黒字」という議論自体が問題であり、福祉の現場は社会インフラとして適切に補完されるべきものです。
この危機的状況を打破し、少子高齢化の時代においても、すべての人に適切で正しい医療を提供し続けるためには、持続可能な社会保険制度への再構築が不可欠です。本記事では、この喫緊の課題に対し、現状の深掘りと具体的な解決策を提言します。
1. 日本の医療が抱える三重苦:現状の深掘り
日本の医療制度は、「国民皆保険制度」という世界に類を見ない優れた仕組みを基盤としてきましたが、現在は以下の三つの深刻な課題に直面しています。
1-1. 医療財政の構造的な危機:止まらない医療費の増大と収入のミスマッチ
加速する医療費の増加
日本の国民医療費は年々増加の一途をたどり、2022年度には約46兆円(※1)を超えています。最大の要因は少子高齢化、特に高齢者人口の増加に伴う医療ニーズの増大です。また、再生医療や最先端の医療機器・薬剤の登場は、医療の質を向上させる一方で、その高額な費用が医療費全体を押し上げています。
インフレと診療報酬の乖離
医療機関の収入源の大部分は公定価格である診療報酬によって決まります。しかし、昨今のインフレによる光熱費、資材費、医薬品費などの物価高騰に対し、診療報酬の改定は追いついていません。物価高騰分が収入に反映されないため、コストだけが増大し、特に中小規模の病院やクリニックの赤字経営を加速させています。
1-2. 医療人材の不足と低待遇:現場の疲弊
医師や看護師、介護士などの医療従事者は、極めて専門性が高く、かつ重労働です。しかし、彼らの給与水準は、欧米諸国と比較しても、またその労働強度に見合った水準とは言えず、労働対価の評価が不十分です。
これが若手人材の医療・福祉分野離れを引き起こし、慢性的な人員不足を深刻化させています。現存するスタッフへの過度な負担は、医療の質を低下させ、ミスを引き起こすリスクを高めています。
1-3. 医療の目的の不明確化:延命治療とQOL
本当に必要な医療は何か、という問いが置き去りにされています。特に終末期医療において、本人の意思に関わらず不要な延命治療が行われるケースは少なくありません。
高額な費用と人的資源を費やす延命治療が、必ずしも患者の生活の質(QOL)向上に繋がっているとは限らず、医療費の非効率な支出にも繋がっています。健康寿命を延ばし、安らかな終末期を迎えるための医療へのシフトが求められています。
2. 持続可能な医療制度への提言:アイズルームの改革案
日本の優れた医療制度を守り、すべての人に安心・安全な医療を提供し続けるためには、従来の枠を超えた大胆な改革が必要です。私たちは以下の三つの柱で制度再構築を提言します。
2-1. 財政基盤の強化と受益者負担の見直し
高齢者を含む全世代型の負担の見直し
現在の制度では、現役世代への負担が過重になりすぎています。高齢者にも、その経済力に応じて一定の医療費の負担増をお願いする、全世代型の負担構造への見直しが必要です。世界唯一優秀な日本の医療制度を維持するためには、「保険料の持続可能性」を最優先に議論し、富裕層にはより公平な負担を求める必要があります。
診療報酬制度の柔軟な運用
診療報酬を改定する際、インフレ率や人件費の動向をより迅速かつ適切に反映させる特別加算措置や柔軟な改定メカニズムの導入が必要です。医療機関の経営を安定させることは、質の高い医療を提供し続けるための必要経費と認識すべきです。
2-2. 医療資源の最適化と効率化
予防医療への大転換
病気になってから治す「治療中心」の医療から、病気になる前の「予防中心」の医療へと舵を切るべきです。健康診断の強化、健康教育の推進、生活習慣病の重症化予防に予算を集中させることで、将来的な医療費の大幅な削減が見込めます。健康寿命を延ばす取り組みこそが、最も効果的な医療財政対策です。
医療・介護連携の徹底と在宅医療の推進
不必要な入院を防ぐため、地域包括ケアシステムの強化を急務とします。病床を減らし、在宅医療や介護サービスとの連携を徹底することで、患者は住み慣れた地域で生活を続けながら必要な医療を受けられ、医療費も適正化されます。
終末期医療に関する国民的議論の促進
アドバンス・ケア・プランニング(ACP:人生の最終段階における医療・ケアに関する話し合い)を普及させ、「不必要な延命治療」を避けるための仕組みを確立する必要があります。これにより、患者本位の「安らかな最終期」を実現すると同時に、医療資源の非効率な消費を抑制できます。
2-3. 医療従事者の待遇改善とデジタル化の推進
労働に見合った適正な報酬の確保
医療従事者の専門性と労働対価を正しく評価し、給与水準を大幅に引き上げる必要があります。人員不足の解消こそが、質の高い医療を持続させる唯一の方法です。
医療現場のデジタル化・AI活用
遠隔医療システムやAIによる画像診断支援、電子カルテの全国的な標準化などを強力に推進し、医療従事者の事務作業や非効率な業務を徹底的に削減します。これにより、医師や看護師が本来の業務である患者ケアに集中できる環境を整えます。
結び:持続可能な「安心・安全」な未来のために
世界の医療制度が崩壊しつつある中、日本の国民皆保険制度は「最後の砦」です。この優秀な制度を次の世代に受け継ぐために、私たちは痛みを伴う改革から目を背けてはなりません。
アイズルームは、日本の医療財政が永遠に持続可能となり、全ての方が安心・安全に医療に関われることを心から願っています。
この問題は、私たち一人ひとりの健康と未来に関わる問題です。この記事をきっかけに、皆さまが日本の医療の現状と将来について深く考え、議論を始める一助となれば幸いです。
(※1)出典:厚生労働省「令和4年度 国民医療費の概況」より