アイズルームのブログへようこそ。

私たちのボランティア活動を通して、生活に苦しむ方々の問題解決にあたる中で、常に直面するのが日本の社会構造に深く根差した「経済格差」の壁です。欧米化する格差の拡大は、「親ガチャ」という言葉に象徴されるように、生まれながらにして人生の難易度を決定づけ、社会の分断と競争からの脱落を加速させています。

一部の富裕層への富の集中が進む一方で、貧困層はより深い困難に陥り、社会的孤立を深めています。この分断は、やがて社会の活力を奪い、最終的には紛争の火種にもなりかねません。

私たちは、この深刻な事態を食い止め、誰もが希望を持てる社会を取り戻すために、日本社会に横たわる「七つの格差」を深く考察し、その是正に向けた具体的かつ論理的な問題提起を行います。

7つの格差が織りなす日本の貧困と分断の連鎖
私たちが着目すべきは、これらの格差が独立して存在するのではなく、複雑に絡み合い、互いを増幅させているという点です。

1. 日本の貧困格差(相対的貧困の深刻化)
問題の核心
日本の相対的貧困率は15.4%と、およそ6~7人に1人が貧困状態にあります。特にひとり親世帯の貧困率は44.5%と極めて高い水準にあり、貧困が次世代へ連鎖する「貧困の再生産」が深刻です。貧困は教育機会の制限へと直結し、将来の選択肢を奪います。

問題提起:見えにくい貧困層への支援のあり方
一度貧困状態に陥ると、スキルアップや再就職のための投資ができず、抜け出すことが困難になります。生活保護制度のスティグマ(負の烙印)や制度の複雑さも、困窮者を支援から遠ざけています。

2. 日本の資産格差(「親ガチャ」の決定力)
問題の核心
収入格差以上に深刻なのが資産格差です。資産は貯蓄、投資、そして相続によって世代を超えて引き継がれ、経済成長や金融緩和の恩恵を享受します。親の資産は、子どもの教育環境、住居の確保、挑戦の際のセーフティネットとなり、人生の選択肢の幅を根本的に変えてしまいます。

問題提起:富の固定化と社会の活力を阻害するメカニズム
経済的な成功が生まれ持った環境に大きく依存する構造は、貧しい家庭に生まれた若者の向上心を削ぎ、社会全体の活力を阻害します。相続税などの制度設計が、この富の固定化にどう影響しているのか、真剣な議論が必要です。

3. 日本の収入格差(非正規雇用の拡大と賃金の停滞)
問題の核心
日本のジニ係数(所得格差を示す指標)は高止まり傾向にあり、その背景には、非正規雇用の拡大と、全体の実質賃金の長期的な停滞があります。非正規雇用は低賃金・不安定雇用の問題に加え、正社員との間に大きな収入・福利厚生の格差を生んでいます。

問題提起:生産性の向上と公正な分配の仕組みの欠如
労働生産性の向上に見合った賃金が支払われていない企業構造、そして同一労働同一賃金原則の実効性の低さが、格差拡大の主要因です。「頑張っても報われない」という感覚を払拭し、企業収益を労働者へ公正に分配する仕組みと、非正規雇用者の待遇改善が不可欠です。

4. 日本の年金格差(老後の生活を脅かす世代間・年金制度内の格差)
問題の核心
年金制度は、「老後の貧困」に直結する大きな格差要因です。現役世代の負担増と将来的な給付水準の低下(世代間格差)、そして国民年金のみに頼らざるを得ない非正規雇用者やひとり親の老後生活水準の低下(制度内格差)が深刻です。

問題提起:セーフティネットとしての年金機能の維持
年金制度が格差を固定化する要因となっており、本来のセーフティネットとしての機能が揺らいでいます。現役時代に低収入であった層や、制度の谷間に落ちる人々を救済するための、より強固で普遍的な最低保障年金制度の確立が必要です。

5. 日本の学歴格差(教育機会と職業選択の非対称性)
問題の核心
親の収入や資産が、子どもの学歴に直接影響する「教育格差」は、格差の連鎖の出発点です。経済的な余裕のある家庭は、高額な教育投資を行え、結果として高収入の職へのアクセスが容易になります。貧困世帯の子どもは、経済的な理由から進学を断念したり、奨学金という借金を背負って社会に出ざるを得ず、キャリアの選択肢が限定されます。

問題提起:誰もが機会を得られる「教育の平等」の回復
教育へのアクセスが経済力に左右されるのは極めて不公正です。義務教育後の教育費負担を大幅に軽減し、家庭の経済状況に関わらず、すべての子どもが質の高い教育を受け、能力を伸ばせる機会を保障することが、格差の連鎖を断ち切る最大の鍵となります。

6. 日本の男女格差(「見えない壁」による機会の制限)
問題の核心
世界経済フォーラムが公表したジェンダーギャップ指数2024年で、日本は146カ国中118位と、G7(主要7カ国)の中で最下位という極めて低い水準に留まっています。特に深刻なのが政治分野と経済分野です。女性の賃金は男性と比較して低く、管理職比率も依然として低迷しています。出産・育児によるキャリアの中断や、長時間労働を前提とした企業文化が、女性の活躍を阻む「見えない壁」となっています。

問題提起:潜在能力の解放と社会全体の損失の回避
男女格差は、個人の能力を最大限に発揮する機会を奪うだけでなく、社会全体の生産性と活力を低下させる大きな損失です。真の格差是正には、男女間の賃金・所得格差の是正、政治・経済分野における女性リーダーの登用、そして男性の育児参加を促す社会システムの構築が急務です。

7. 日本の障害格差(インクルーシブ社会実現への障壁)
問題の核心
生まれながらの障害や、中途で障害者・難病患者となった方々は、健常者と比較して極めて高い貧困率に直面しています。ある調査では、障害のある人の約8割が相対的貧困以下の生活を強いられており、その9割以上が年収200万円以下のワーキングプア状態にあるという深刻なデータがあります。これは、就労機会の制限、低い賃金水準、そして地域生活を支える福祉サービスの不十分さによるものです。

問題提起:インクルージョンの実現と「普通に暮らす」権利の保障
誰もが地域社会で「普通に暮らす」という当たり前の権利を実現するためには、法定雇用率の達成だけでなく、障害に応じた合理的配慮の徹底、公正な賃金体系の導入、そして住居・移動・コミュニケーションにおける物理的・心理的バリアの除去が必要です。障害福祉の予算を「コスト」と捉えるのではなく、社会全体の包摂性(インクルージョン)を高めるための「投資」として位置づけ直すことが求められます。

アイズルームの結論:社会の分断を回避し、希望を再構築するために日本社会はどうあるべきか
七つの格差が深刻化し、社会の分断が進む現代日本において、目指すべき社会の姿は、「誰もが公正な機会を与えられ、能力と努力に応じて報われる社会」です。

これは、欧米型の「自助努力と自己責任」論が格差拡大と分断を招いた反省から、「連帯と公正な機会の保障」を最優先する社会への転換を意味します。

最終的な提言:格差是正のための3つの柱
柱 対策の方向性 具体的な施策例(問題提起に対する是正策)
機会の平等 生まれや家柄、性別、障害に左右されない教育・挑戦の機会の保障。 1. 高等教育の無償化・奨学金制度の大幅改善(教育格差の是正)。
2. 職場における合理的配慮の義務化徹底と公正賃金体系の導入(障害格差の是正)。
3. 政治・経済分野におけるクオータ制導入の検討(男女格差の是正)。
公正な分配 労働の成果と富を公正に分配する経済システムの構築。 4. 同一労働同一賃金の実効性強化と非正規雇用の待遇改善(収入格差の是正)。
5. 富裕層・大企業への適切な課税強化と、その財源を社会保障へ再分配。
セーフティネットの強化 誰もが安心して最低限の生活を営める普遍的な保障の確立。 6. 最低保障年金の確立と、生活保護制度のより柔軟な制度設計への見直し(年金・貧困格差の是正)。
7. 居住支援の強化:家を失った人々への即時的なシェルター提供と就労・生活支援の一体化。
格差の拡大は、社会全体のリスクです。一部の富裕層だけが潤っても、社会の大部分が疲弊すれば、消費は低迷し、治安は悪化し、最終的には富裕層自身もその恩恵を享受できなくなります。

私たちは、客観的なデータを根拠に、この「格差の連鎖」を断ち切り、すべての人に人生の選択肢と希望を提供する社会の実現に向けて、行動を起こす必要があるのです。

アイズルームは日本の格差について是正できるように政府や地方自治体へ強く働きかけていきます。生まれながらにして不平等が起きないように、全ての国民が インクルーシブ に社会に溶け込めるよう、皆様のお力も借りて社会活動を推進して参ります。今後もアイズルームの活動についてご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

(アイズルーム:居住支援・就労支援コンサルタント)