【《危機的状況》高齢化社会の「個人の尊厳」を守れるか?在宅・施設倒産ラッシュに挑む日本の介護の未来像】
今回、私たちは日本の社会保障、特に高齢者介護が直面している複合的な危機について深く掘り下げ、今後の進むべき道筋を皆様と共に考えていきたいと思います。
深刻化する「地域包括ケア」の矛盾と現状
国は、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう、老人施設を減らし在宅介護・在宅医療を推進する「地域包括ケアシステム」を掲げています。これは個人の尊厳を守る上で理想的な方針です。しかし、現場ではその理想とは裏腹に、極めて厳しい現実が突きつけられています。
在宅・施設サービスの経営危機:倒産件数過去最大
民間調査会社のデータが示す通り、訪問介護事業者の倒産件数が過去最多を更新しました。また、特養や有料老人ホームといった施設サービスも、赤字経営や経営破綻が相次いでいます。
この背景には、以下の要因が複雑に絡み合っています。
人手不足の深刻化:後期高齢者が急増し介護ニーズが爆発的に高まる一方、介護職員の賃金水準がインフレに連動せず、他産業への人材流出が止まりません。特に訪問介護では、一人の職員が担う負担が非常に重くなっています。
インフレと保険財政の板挟み:物価高騰は、食事提供や運営コストを直撃しています。しかし、主な収入源である介護報酬(保険での対応)は国の財政によって厳しく管理されており、コスト増に見合った引き上げが追い付いていません。
厚生労働省の方針変更と現場の疲弊:制度改正のスパンが短く、方針が頻繁に変わるため、現場の事業者はその都度、膨大な事務作業や対応に追われ、経営の安定化を図ることが困難になっています。
社会保障のフレームワーク再構築:持続可能性への挑戦
限られた財源の中で、高齢者介護を維持・発展させ、さらに少子化対策を担うこども家庭庁の負担増にも対応するには、従来の社会保障の枠組みを見直す必要があります。
1. 医療・介護連携の壁をどう乗り越えるか
在宅医療推進の重要性は理解されつつも、一部の医師会からは、病院経営を圧迫する訪問診療への反対意見が出るなど、医療側との連携に摩擦が生じています。
提言: 医療機関と介護事業所が連携した場合のインセンティブを強化し、質の高い連携を維持する仕組みを構築すべきです。ITを活用した情報共有(例:地域医療連携ネットワーク)を必須化し、事務負担を軽減することも急務です。
2. 「人の確保」の構造的課題と外国人材の活用
介護サービスの質の根幹は「人」です。人手不足解消なくして、介護崩壊は避けられません。
介護職員の処遇改善:インフレ率を考慮した大幅な介護報酬の引き上げと、それを人件費に確実に充てるための仕組みが必要です。全産業の平均賃金との差を埋めなければ、人材確保は困難です。
外国人労働者の活躍推進:外国人労働者を単なる「労働力」と見なすのではなく、介護を担うプロフェッショナルとして育成・定着させる必要があります。日本語教育、生活支援の充実、日本人職員との文化的な摩擦を解消するための研修が不可欠です。
3. 「尊厳ある介護」を守るための公的関与の強化
在宅・施設の倒産は、そこで暮らす高齢者の生活基盤を奪い、尊厳を大きく傷つけます。
公費投入の再評価:特に公益性の高い訪問介護や特養など、地域社会のインフラとしての機能を果たすサービスに対しては、最低限のサービス維持に必要な公費投入のフレームワークを再構築すべきです。
「無駄なサービス」の見直し:給付抑制の議論は避けられませんが、本当に必要なサービスを維持するためには、高齢者自身の自立支援につながるサービスへのシフトを徹底し、医療・介護の重複利用など非効率な部分をデータ(LIFE等)で可視化し、削減していく冷静な議論も必要です。
日本の高齢者を守るための今後の提言:私たちが目指す姿
私たちアイズルームは、「地域での見守り、個人の尊厳を守る」という国の基本理念を支持します。しかし、理念を絵空事にしないためには、現場の事業者が安定してサービスを提供できる持続可能な土台が必要です。
日本の介護問題を解決するための道は、「財源」と「人材」の二つの大問題を同時に解決することに尽きます。
課題 今後の目指すべき方向性
財源の確保 介護報酬の抜本的引き上げと、IT活用による生産性向上。全世代型での社会保障負担の議論。
人材の確保 介護職員の賃金の大幅改善。外国人材をプロとして育成・定着させるための国レベルでの戦略的な支援。
制度の安定化 厚労省の方針を長期的な視点で策定し、短期間での頻繁な制度変更を避ける。現場の意見を反映した改定サイクル。
介護は、すべての人に訪れる未来であり、社会の最も重要なインフラです。アイズルームでは、今後もこの問題について深く考察し、皆様と共に声を上げてまいります。 高齢者の命と尊厳を守るための、具体的な変革を共に実現していきましょう。
皆様は、この複合的な課題に対し、どのような解決策があるとお考えでしょうか? ぜひご意見をお寄せください。