【危機に瀕する「就労継続支援B型事業所」の存在意義・経営感覚なき「福祉のガラパゴス」からの脱却と悪質フランチャイズビジネスへの警鐘】

      

【危機に瀕する「就労継続支援B型事業所」の存在意義・経営感覚なき「福祉のガラパゴス」からの脱却と悪質フランチャイズビジネスへの警鐘】

障害者就労支援B型作業所、麻の手芸品加工作業、大勢の障害者が作業にあたっているイメージ画像です。 

拝啓 障害福祉支援に携わる皆様

私は、障害福祉関連の就労支援・居住支援に関わる関連企業の問題解決コンサルタントを務めるアイズルームの者です。この度、関西テレビが報じた、大阪府内の就労継続支援B型事業所(以下、B型事業所)における不適切な支援実態に関する報道に、強い危機感を覚えました。

報道では、ものづくりなどを通して障害者の就労を支援する約2050施設のB型事業所を対象とした大阪府の調査で、「在宅での適切な訓練提供の疑義」が複数報告されているとのことです。中には、「自宅で1日数回程度植物に水やりをする」といった事例が挙げられ、府は不適切な場合は指導を行う方針だとされています。

🚨 現状のB型事業所が抱える根本的な課題
B型事業所とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つで、病気や障害により一般企業での雇用契約を結ぶことが困難な方に対し、生産活動やその他の活動の機会を提供し、就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練を行う非雇用型の支援形態です。利用者は、労働の対価として「賃金」ではなく、生産活動の収益から必要経費を差し引いた額を基に算出される「工賃」を受け取ります。(令和3年度の全国平均工賃月額は約1.6万円であり、一般就労の賃金水準とは大きくかけ離れています)。

多くの障害福祉関係企業は、福祉系の専門学校や大学で学び、福祉畑一筋でキャリアを積んだ方が経営者や指導役職員を務めています。しかし、一般企業の経営を学び福祉業界に参入した私の視点から見ると、現在のB型事業所には「経営体質の脆弱性」と「指導役職員の実践経験不足」が深刻な問題として横たわっています。

1. 一般就労とのミスマッチと高い離職率
障害のある方の真の就労を支援するためには、B型事業所側が「一般企業が何を求め、どのような技術や人材が必要とされているのか」を正確に把握することが不可欠です。

しかし、福祉分野の知識のみに偏った人材が就労支援を行う結果、訓練内容が市場のニーズと乖離し、就職後のミスマッチが頻繁に発生しています。現実として、B型事業所を経由して一般企業に就職した方の多くが、高い確率で早期に離職してしまうという厳しい現実があります。

2. 「工賃」と「刑務所の労働」が等価となる不健全な構造
「自宅での水やり」のような簡易な活動を繰り返し、対価として工賃が支払われる現状は、作業内容や対価が実質的に「内職」の域を出ず、就労支援としての本質を見失っています。これは、刑務所内の作業報酬に類する水準の「労働対価」にとどまっており、「福祉的就労」という言葉の影で、障害者の尊厳ある就労機会を奪っている容認できない問題です。

一般企業の経営感覚から見れば、B型事業所の半数は、生産性の低い「内職作業所施設」と見なさざるを得ません。

3. 経営感覚なき経営者と「補助金依存体質」
現在のB型事業所の経営者や指導者の多くは、福祉関係の「机上の勉強」に終始し、「経営感覚」や「実践力」を欠いているケースが散見されます。

国の給付費(補助金や助成金)によって運営が成り立っているため、事業所は一定の条件さえクリアすれば、経営能力が乏しくとも、現場の障害者の就労能力向上に真に役立たなくても、事業を存続させることができてしまう構造に大きな問題があります。つまり、「規則通り運営していれば成り立つ」というシステムが、無能な経営者を温存させているのです。

🚨 悪徳フランチャイズビジネスの参入による業界の崩壊
この脆弱な業界構造は、「フランチャイズ組織」の格好の餌食となっています。

容易な参入: 参入障壁が低いことから、障害者のことを考える基本理念を持たない安易なビジネスとして、フランチャイズ(FC)に加入し、事業を拡大する動きが顕著です。

本部だけが儲かるシステム: 悪質なFC本部は、多額の加盟金やロイヤリティを徴収することで利益を得ます。加入者である事業所が赤字であっても、売上に対してロイヤリティが発生する仕組みや、実態が伴わないにもかかわらず本部だけが儲かるシステムになっています。

「儲かる」という甘い誘惑: 特に、近年ではYouTubeチャンネルなどを開設し、「高収益」や「簡単に成功」といった虚偽的な甘い言葉で加入者を募集するケースも見られます。これにより、事業の実態が伴わないまま一時のブームで店舗拡大を図り、加盟金や保証金だけを残して撤退・倒産する事業所が後を絶ちません。

このような悪徳なビジネスモデルが、福祉という尊い分野にまで入り込んでいることに、強い憤りを感じます。

50代男性講師が、20代から30代の男女に就労支援研修をしているイメージ写真です。

💡 アイズルームが提唱する大胆な改革の必要性
私は、厚生労働省に対し、B型事業所に対するより厳格な指導と取締りを求めます。そして、B型事業所の存在価値そのものを見直す、大胆な改革が不可欠だと確信しています。

福祉関係者だけで物事を完結させるのではなく、一般企業の経営者が持つ「事業の生産性」や「市場のニーズ」といった「経営感覚」をB型事業所の運営に組み込むべきです。

B型事業所が真の意味で「障害者の就労支援」の場となるためには、一般企業で通用するスキルや、社会人として必要な人間性を育む「実践的な訓練」が必須です。

机上の空論ではない、現場で活きる経営と支援を実現することで、B型事業所は初めて、障害のある方が社会で活躍するための真のステップとなり得ると、心から願っております。

SNS キーワード

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