【超高齢社会の羅針盤:住まいと地域で支える「認知症とともに生きる」社会へ〜不動産管理会社は必読!「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」と、経営改善コンサルタントが示す協働の道筋〜】

私たちアイズルームは、約40年間にわたり、様々な業態変更を繰り返しながら、障害者や高齢者の住居に関する問題に真摯に向き合い、不動産管理会社・居住支援法人・福祉関連企業の経営改善指導や問題解決をサポートしてきました。その中でも、大きなテーマの一つが「認知症」を抱える方の居住支援、そしてそれを担う企業への支援です。
私どもの長年の居住支援事業を通しても、ご入居時に認知症を発症されていなくても、長く住んでいただく中で加齢に伴い認知症を発症される方は少なくありません。
この状況下で、賃貸管理会社には、ご高齢の入居者様が安心・安全に暮らし続けられるよう、認知症に関する正しい知識を学び、福祉サービスや居住支援法人といった地域社会の支援者と密に連携を取り、高齢者の見守りを地域としてサポートしていくという重要な役割が求められています。軽度の認知症を理由に大切な住まいを奪うようなことはあってはなりません。
認知症は、その初期段階では「鍵をなくしてみたり」「物が取られたと言ってみたり」「日頃通っている場所でも迷子になってみたり」といったサインが必ず現れます。これらのサインを見逃さず、適切な支援につなげることが、ご本人様・ご家族様、そして地域全体の安心につながります。
後期高齢者になれば、軽い認知機能の低下は誰にでも起こりえます。だからこそ、賃貸管理会社はもっと認知症について学ぶ必要があります。また、福祉サービスや居住支援法人と不動産管理会社が連携を密に取り、高齢者の見守りを地域としてサポートする仕組みづくりこそ、私たちが支援すべき経営改善の重要な柱となります。
今回は、この課題を解決するための国の指針である「認知症基本法」について詳しく解説し、病気の進行段階に応じた対応策について、皆様(特に不動産管理会社の皆様)と一緒に考えていきたいと思います。
認知症とともに生きる社会の実現を目指して
【必読】「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」とは
この課題に対応するため、国は「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(以下、認知症基本法)を制定しました。
厚生労働省のデータなどに基づいてまとめると、この法律の目的は、認知症の人を含めた国民一人ひとりがその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(共生社会)の実現を推進することです。
この法律は、2024年(令和6年)1月1日から施行されました。
認知症基本法は、認知症の人を単なる「支援の対象」ではなく、「権利の主体」として捉え、以下のような内容を柱としています。
基本理念: 認知症の人が尊厳を保持し、希望を持って暮らせる社会の実現。
国・地方公共団体の責務: 認知症施策を総合的かつ計画的に推進する責務を明記。
認知症施策推進基本計画の策定: 政府は基本計画を策定し、施策の目標と方向性を示す。
推進体制: 認知症施策推進本部を設置し、施策を強力に推進する。
国民の理解増進、教育・啓発: 認知症に対する関心と理解を深めるための取り組みを推進。
私たちアイズルームは、この法律の精神に基づき、住まいを通じた支援を担う不動産管理会社の皆様が、適切な体制を構築し、持続可能な経営を行えるようサポートすることが責務であると考えています。
認知症という病気:初期・中期・後期症状と対応の原則
認知症は、脳の病気や障害などによって認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が生じる状態を指します。進行は緩やかで、早期に適切な対応をとることで、住み慣れた地域での生活を続けることは十分に可能です。
進行段階 主な症状(初期サイン) 家族・地域、そして不動産管理会社が連携して行う対応策
初期段階 ・もの忘れが増える(体験の一部を忘れる) ・物の置き忘れが増え、「盗られた」と訴える ・時間や場所の感覚が曖昧になる(日時の間違い) ・今までできていたことへの意欲低下 【基本方針:否定しない、早期発見・早期受診】 ・本人の訴えを頭ごなしに否定せず、共感的に傾聴する。 ・異変を感じたら、地域包括支援センターや専門機関への相談を促す。 ・不動産管理会社は、安否確認の頻度や連絡先(ご家族・保証人・ケアマネジャーなど)を再確認する。
中期段階 ・もの忘れが進行し、事実として受け入れられない ・徘徊、失禁などの周辺症状が出始める ・着替え、入浴などの日常生活に部分的な介助が必要になる ・感情の起伏が激しくなる 【基本方針:環境を整え、生活をサポート】 ・安全・安心な環境整備(例えば、自宅の鍵の管理方法の見直し)。 ・定期的な訪問ヘルパーやデイサービスなどの福祉サービスの導入を促す(賃貸契約更新時に、必要なサービス利用を求める等の条件を検討する)。 ・不動産管理会社とご家族、ケアマネジャーとの情報共有の場を密に設け、連携体制を強化する。
後期段階 ・意思の疎通が難しくなり、理解力が著しく低下 ・食事、排泄、移動など日常生活全般にわたる介助が必要になる ・寝たきりに近い状態になる 【基本方針:尊厳を支える、専門的なケアへの移行】 ・本人の残された能力を活かすよう努め、最期の瞬間まで尊厳を支える。 ・在宅での継続が困難な場合、適正な介護老人福祉施設や認知症専門の施設への移行をご案内する(ただし、ご本人・ご家族の意向を最大限尊重する)。 ・居住支援法人と連携し、転居に関する適切なサポートを行う。
地域と社会はどうあるべきか:今後の対策と私たちコンサルタントに求められる連携
超高齢社会を迎えた今、認知症は「驚くべき病気」ではなく、「高齢化とともに多くの方が経験する状態」として捉え、認知症とともに生きることを前提とした社会づくりが求められています。
認知症の人の意思の尊重と尊厳の保持
認知症になっても、ご本人の意思や思いを最大限尊重し、自分らしく暮らせるよう支援することが社会の責務です。
地域での見守り・早期対応体制の強化
地域包括支援センター、福祉サービス、そして不動産管理会社が密に連携を取り、「チーム」として高齢者の見守りをサポートする必要があります。
不動産管理会社は、契約更新時に認知症のテスト(認知機能の簡易チェックなど)やヒアリングを行い、一人の生活が厳しいと判断される場合は、定期的なヘルパーの導入や、症状に応じた適切な施設へのご案内といった具体的な居住支援の仕組みを構築し、実践する責任があります。
私たちアイズルームは、この「賃貸契約の更新時に認知症のテストを行い一人の生活が厳しい場合には定期的にヘルパーさんに入っていただくこと、症状が重い場合には適正な老人施設に入っていただけるようにご案内すること」といった実務を、不動産管理会社の皆様が円滑かつ適正に行えるよう、経営指導を通じてサポートしています。
認知症サポーターの養成と啓発
地域住民や企業(特に不動産管理会社や金融機関など)が、認知症に関する正しい知識を持つ「認知症サポーター」となり、地域全体で認知症の方を見守り、支える体制を築くことが重要です。
私たちアイズルームは、障害者・難病患者・高齢者が住み慣れた地域でサポートを受けながら安心安全に暮らせる社会を作るために、今後も皆様と共に社会課題を解決していきたいと考えております。不動産管理会社や福祉関連企業の皆様への指導を通じて、この社会課題の解決を推進してまいります。
当社の障害福祉に関するブログは、その知見やノウハウを共有し、より良い社会の実現を目指すためのものです。今後とも、ぜひ応援してください。