【障害者の尊厳を踏みにじる「経済合理性」の暴力・机上の空論では語れない真の共生社会と就労支援の未来】

約40年にわたり、会社経営を通じて障害者の居住支援や就労支援に尽力してまいりました。自社においても、障害者を一般雇用し、宿舎や借り上げアパートを用意するなど、単なる雇用に留まらず、生活の基盤となる住居の手配までを一貫してサポートしてまいりました。現在は障害がやや重度化し、事業会社の経営からは退きましたが、その経験を活かし、中小企業の問題解決コンサルタントとして活動を続けております。
先日、「ReHavQ」の「ひろゆきvs障害者就労」YouTube番組で、障害者の就労支援や就労移行支援を問題提起する番組が放映されているのを視聴いたしました。出演者は、就労移行支援事業所・就労継続支援B型事業所の関係者、経済学者、そしてひろゆき氏でした。
誠に遺憾ながら、番組の核心的なテーマが「障害」であるにもかかわらず、当事者である障害者本人や、障害を持つ家族の方が、ただの一人も呼ばれていなかったという事実は、この番組が抱える根本的な欠陥を象徴しています。
彼らは「経済合理性」というドライな言葉を盾に議論を進めておりましたが、人の命と尊厳に関わる「障害福祉」の問題を、冷徹な経済論だけで語り尽くせるはずがありません。彼らの議論は、福祉という名の領域で、弱者の心を切り捨てる「暴力」に等しいと感じました。
そもそも、「障害」と一口に言っても、精神障害、身体障害、発達障害など、その特性や必要な支援は多岐にわたります。これら多様な人々を「障害者」という一括りのカテゴリーで論じることは、個々の尊厳を無視した暴論であり、断じて容認できません。
番組内で、大企業が障害者を雇用することへの批判的な見解が示されましたが、これは本質を見誤った意見です。零細企業や中小企業が、体制や費用の面から障害者を受け入れることが困難である現実を考えれば、社会的責任能力を持つ大手企業が率先して障害者雇用を進めることは、社会全体のインクルージョンを推進するための極めて重要な責務であると私は強く主張します。
さらに、議論の中で「足を切断した人」「何もできない障害者」といった、障害を持つ人々の尊厳を深く傷つける表現が幾度となく使用されました。障害当事者である私にとって、これは極めて不愉快であり、メディアとしての品位を疑わざるを得ません。視聴者にある程度の影響力を持つYouTube番組であれば、弱者への配慮に満ちた発言と、真の理解を示すゲストを選定する責任があります。
「障害者と経済合理性を一体化させた議論」は、ナンセンスの極みです。
私は以前、発達障害を持つスタッフを「障害者雇用」という枠ではなく、一般のスタッフと全く同じ条件で雇用していました。作業速度自体は確かに一般社員よりも遅いこともありましたが、彼の存在が職場の雰囲気を和ませ、結果的に会社の生産性ではない、「人間性」の向上に大きく貢献してくれました。
かつて、関西のセキスイグループのユニットバス組み立て工場を見学させていただいた際、障害を持つ方々が、一般の労働者と全く区別なく共に働き、質の高い成果を上げている姿を拝見しました。
番組制作陣は、福祉を「ちょっとかじった」程度の知識で、机上の空論を振りかざす人たちだけを呼んで、いったい何が得られたのでしょうか。彼らがいくら議論を重ねても、障害者の就労に関する真の結論は、永遠に得られないでしょう。なぜなら、そこには当事者の「声なき叫び」が存在しないからです。
成功事例として紹介された件数も少なく、統計的に「評価できる」と容認するには程遠いものでした。
私は、この議論の場に、厚生労働省の現役の役人、できれば大臣や事務次官といった決定権を持つ人々に参加していただき、その横に必ず障害当事者も同席させるべきだと提言します。その上で、本当の意味での「障害者の就労」についての問題提起と、実行可能な結論を出してほしいのです。
現在、日本の人口の約10%が障害者です。そのうち半数、すなわち人口の5%が就労対象年齢にあるとされています。私は、その中の半数にあたる2.5%の障害者の方々が、一般企業での就労が可能だと信じています。
残りの2.5%に関しては、引き続き就労継続支援B型事業所などがきめ細やかに対応し、就職が可能な障害者に関しては、社会全体で対策を講じて受け入れるべきです。
この実現の背景として、義務教育の段階からの「インクルーシブ教育」の徹底が不可欠です。小学生や中学生のうちから障害を持つ人々と触れ合い、助け合い、慣れていくこと。それにより、一般企業の中に2.5%の障害者が自然と溶け込んでも、お互いに補完し合いながら仕事が円滑に進む、真の共生社会が生まれるのです。
経済合理性などという冷たい「計算」ばかりを先行させると、人の心は確実に疲弊し、破壊されます。「人」という字が支え合う形であるように、人は本来、助け合いながら生きるものです。
番組の中で中心となり、計算論を述べていたゲストの方に、私は強く申し上げたい。
あなたは常に「計算」ばかりしているが、最も重要な「人の心」が読めていない。本当に社会に貢献できる優秀な人物であれば、このような表層的なYouTubeの番組などに出演するのではなく、自身の仕事に没頭し、実体のある成果を出しているはずです。口先だけで分かったような評論を述べている場合ではありません。
あなたも、いつか障害者になるかもしれない。
その時になって後悔しても、失われた人生と尊厳は取り戻せません。
私は、すべての人々が助け合いながら暮らせる共生社会、すなわち「インクルーシブ」な世界を築くために、これからも一人でも努力を続けてまいります。私の会社「アイズルーム」は、障害を持つ方が主体となり、一般雇用として心豊かに働ける場所でありたいと願っています。
私自身は障害当事者ですが、私の副社長もご家族に障害をお持ちの方がいらっしゃいます。障害に深く関わるからこそ、私たちは心の痛み、人生の叫び、そして悩み苦しみの先にある「生きる道」を見つけ出すことができるのです。
この重い現実から目を背けず、真の共生社会の実現に向け、皆様の理解と行動を強く求めます。