【人獣境界線の崩壊 2025年、野生の脅威が市街地を覆う時—「共存」の理想と「駆除」の現実の狭間で、私たちは何を為すべきか? アイズルームからの問題提起・重なる「疲弊」の構図】

この活動は、野生の熊の問題とは全く関係がないように思えますが、社会における「問題」を見つけ出し、問題提起と解決策を生み出すという点では共通しています。障害者の問題が、当事者やその家族だけを疲弊させるのと同様に、山間部では熊の脅威に怯え、地域が疲弊しています。
私は重度の視覚障害者で目が見えませんが、だからこそ、目に見えない問題の核心を捉えたいと日々学んでおります。
野生動物と人間の共存は、地球環境を救うために必要不可欠な理想です。しかし、昨今の急激な熊の出没と人身被害の増加を前に、現実として「駆除」を選択せざるを得ない状況に至っています。
この記事では、この深刻な問題の現状を正確に捉え、人命の安全を最優先としつつ、野生の熊とどう向き合うべきか、その具体的な方向性を、アイズルームの読者の皆様と共に考えていきたいと思います。
1. 2025年 クマによる死傷事件と「境界線の崩壊」
2025年度は、クマによる人身被害が相次ぎ、社会に大きな危機感をもたらしました。
象徴的な事象:
「アーバンベア(都市の熊)」の増加:本来の生息域を離れ、都市部や住宅地へ出没するクマが増え、人との接触リスクが急増しています。
「人獣境界線の崩壊」:人間社会と野生動物の生息圏との間にあった里山などの緩衝地帯が、人の手が入らなくなったことで曖昧になり、クマが容易に人里へ侵入する環境が常態化したことを示します。
2. クマが市街地に急増した具体的な原因
クマの行動が急激に変化し、市街地へ出てくるようになった背景には、複雑な要因が絡み合っています。
個体数の増加と生息域の拡大
一部地域では、保護政策や狩猟者の減少・高齢化により、クマの個体数が増加傾向にあります。
森林の生態系変化と食料不足
主食の不作:気候変動や人工林化の影響で、クマの主食であるブナやミズナラなどのドングリ類が不作となる年が増えています。
エサを求めた行動圏の拡大:山の食物不足により、特に冬眠前の栄養補給のため、クマが標高の低い人里へ移動せざるを得なくなっています。
人為的な誘引物の存在
放置された餌:過疎化や高齢化による耕作放棄地の増加、管理されていないカキ・クリなどの果樹が、クマにとって容易な餌場となっています。
不適切なゴミ管理:生ゴミの放置や管理不十分なゴミ集積場が、クマを誘引し、人里での餌付けを学習させています。
里山の荒廃
緩衝地帯の消失:人の手が入らなくなった里山や農地が藪化し、クマが人目を避けながら人里近くまで侵入しやすい環境(侵入ルート)を提供しています。
3. 地元・行政によるクマ出没対策事例
クマの出没増加に対し、地元住民や行政は連携し、人命と生活を守るための具体的な対策を講じています。
ゾーニング管理の推進
(事例:長野県軽井沢町など) 人の生活圏、緩衝地帯、保護優先地域を明確に分け、生活圏にはクマを生息させない方針を徹底しています。
誘引物(餌)の徹底的な除去・管理
未収穫果樹の伐採・撤去を行政が指導・支援しています。
クマが開けられない構造のゴミ箱や施錠付きゴミ集積場の設置を進めています。
環境整備と物理的防御
侵入ルートの刈り払い:クマの隠れ場所となる集落周辺の藪や耕作放棄地の刈り払いを実施しています。
電気柵の設置:農地や集落周辺への電気柵やワイヤーメッシュ柵の設置による物理的な侵入防止策を強化しています。
迅速な情報共有と啓発
SNS(Xなど)や防災アプリを通じたリアルタイムの出没情報配信を行っています(事例:山梨県)。
住民や学校へクマよけ鈴やスプレーの携行の徹底を呼びかけています。
4. 猟銃使用に関する法改正(緊急銃猟制度)
多発するクマの市街地出没と人身被害の深刻化を受け、迅速な対応を可能にするための法改正が行われました。
改正鳥獣保護管理法の成立
2025年度(令和7年)に「緊急銃猟制度」を創設する改正法が成立しました。
改正の要点
市町村長の判断:従来、銃猟が原則禁止されていた人の日常生活圏(住宅密集地など)において、人への被害を防ぐことが緊急に必要と判断される場合、市町村長の判断で特例的に銃器による捕獲(緊急銃猟)を可能とします。
対応体制:市町村長は、市町村の職員や委託を受けたハンターに銃猟を実施させることができます。
安全確保と補償:銃猟実施の際は、住民の安全確保のため通行制限や避難指示を行うことができ、万が一、弾丸が建物などに当たった際の損失は自治体が補償する規定が盛り込まれています。
目的:警察の許可を待たずに自治体の判断で危険なクマを迅速に排除し、人命の安全を確保することにあります。
5. クマ出没による山間部・地方の疲弊と損失
クマの脅威は、人身被害の危険性だけでなく、山間部や地方社会に深刻な損失をもたらし、地域を疲弊させています。
経済的損失
農作物(カキ、クリ、トウモロコシなど)の食害による直接的な経済被害が発生しています。
スギ・ヒノキの樹皮を剥ぐ「クマハギ」による林業被害が発生しています。
地域社会の疲弊と生活の制限
住民、特に高齢者の外出自粛や精神的ストレスが増大し、日常生活が制限されています。
いつ襲われるか分からないという恐怖から、地域に安心感が喪失しています。
地方創生・観光業への影響
クマ出没による観光客の減少や、登山、山菜採りなどのレジャー活動の自粛が起きています。
地方移住や二拠点居住を考える人々にとって安全性の懸念材料となり、過疎化を加速させる恐れがあります。
6. 今後の対策の方向性:人命最優先の「管理」と「対話」
クマとの共存は、感情論ではなく「人命の安全を最優先としつつ、生態系のバランスを考慮する」という現実的な視点に立ち、徹底した管理体制の構築が不可欠です。
方向性その1:徹底した誘引物管理と環境整備
行政主導で収穫放棄果樹の積極的な伐採・撤去を行う必要があります。
集落周辺の緩衝地帯となる藪や未利用地の定期的な刈り払いを強化し、クマの侵入ルートを遮断すべきです。
生活ゴミ、農産物残渣のクマがアクセスできない厳重な管理を地域全体で徹底するべきです。
方向性その2:迅速かつ効果的な個体数管理
緊急銃猟制度を速やかに運用し、人里に出没する危険な個体を排除します。
科学的データに基づき、予防的捕獲も含めた捕獲体制を強化し、狩猟者の育成・支援(報償金増額、ガバメントハンターの導入など)を急ぐべきです。
方向性その3:動物愛護団体との対峙の方向性
「人命の安全確保が最優先」であるという社会全体の共通認識を強く発信すべきです。
「人里に出たクマは保護対象から管理・排除対象へ移行する」という原則を論理的に説明し、感情論ではなく科学的・社会的責任に基づいた対応の必要性を訴えかけるべきです。
愛護団体に対しては、駆除の是非を巡る対立ではなく、クマを人里に寄せ付けないための「誘引物除去」や「緩衝帯整備」などの予防的活動での協働を提案し、現実的な解決に力を注ぐよう促すべきです。
アイズルームの結び:問題解決コンサルタントとしての提言
このクマの問題は、私たちが専門とする障害福祉の問題と根は同じです。困っている人がいる。社会の制度や環境が、その人を苦しめている。
私たちは、この「人獣境界線の崩壊」という社会問題に対し、人命を守るという大原則の下、責任ある「共存」の定義を再構築し、政府や行政へ意見書・陳述書としてまとめ上げ、解決の道筋を示す活動を継続してまいります。
皆様と共に、真に安全で安心できる共生社会、そして自然との新たな関係性を築くために、この問題に正面からぶつかってまいります。
今後もアイズルームの活動へのご支援とご協力をよろしくお願いいたします。