【激化する日本の貧困問題の最前線! 誰も取り残さない社会を目指すために〜現代の世帯構造と生活困窮の実態統計から見えてくる課題と政治・自治体への提言〜】
千葉県東葛地域で中小企業の経営支援と、ボランティアで生活弱者の居住・就労支援を行っているアイズルームです。私自身、バツ2という経験を持つ一人として、今日の社会が抱える複雑な家族・生活構造の変化を肌で感じています。
現代の日本は、もはや「専業主婦と夫」という昭和の標準世帯像から大きくかけ離れ、欧米型の高離婚率・非婚化社会へと移行しつつあります。この大きな潮流の中で、私たちが日々接している「生活弱者」の方々が置かれている状況を、最新の統計データに基づき分析し、その実態と課題を共有したいと思います。
10のQ&K(クエスチョン&知識)で見る生活困窮の現状
様々な条件があることを承知しつつ、現在公開されている最新の統計データ(主に2020年代初頭のデータ)に基づき、できる限り明確かつ簡潔に回答します。
1. 貧困率は夫婦と単身ではどちらが多いのか?
【回答】
単身世帯の貧困率が、夫婦世帯よりも高い水準にあります。
特に高齢者世帯で見ると、夫婦世帯の貧困率が比較的低い(約10%台)のに対し、高齢単身女性世帯の貧困率は4割~5割以上と非常に高い水準です。これは、単身世帯では世帯所得を支える稼ぎ手が一人であることや、非正規雇用者の比率が高いことなどが要因です。
2. 貧困世帯では男女で格差はあるのか?
【回答】
格差は非常に大きいです。
全年齢層で見ても貧困者に占める女性の割合が高い傾向にありますが、特に高齢期(65歳以上)になると、女性の相対的貧困率が男性を大きく上回り、格差が急速に拡大します。高齢単身女性世帯やひとり親世帯(大半が母子世帯)の貧困率が顕著に高いことが、女性の貧困の深刻さを示しています。
3. 65歳の高齢者で男女間の年金の差はいくらあるのか?
【回答】
公的年金(国民年金+厚生年金)の平均受給月額には、男女間で約6万円以上の差があります。
男性の平均受給月額が約16万5千円程度であるのに対し、女性は約10万3千円程度と、男性は女性の約1.6倍の受給額となっています(令和4年度末時点)。これは、女性が会社員として厚生年金に加入していた期間や収入が、男性に比べて少ないことが主な理由です。
4. 生活保護者の受給者は男女間でどのような差があるのか?
【回答】
生活保護受給者全体で見ると、女性の割合が男性をわずかに上回る程度(概ね50%台前半)です。
ただし、世帯類型別に見ると、高齢単身世帯では女性の受給者が多い傾向にあり、特に生活保護を必要とする背景(例:高齢単身女性の貧困率の高さ)には男女差が強く見られます。
5. 田舎と都会では生活困窮者の比率は違うのか?
【回答】
生活困窮の指標の一つである生活保護の被保護率(全人口に占める割合)は、地域によって差があります。
一般的に、大阪府や北海道、沖縄県などの大都市圏や一部地域で高く、生活困窮者が集積しやすい都市部や、過疎化・産業衰退が進んだ地域で高くなる傾向が見られます。
6. 高卒と大卒では貧困に至る確率はどのくらい違うか?
【回答】
最終学歴が低いほど貧困率は高くなる傾向が明確です。
例えば、子どもの貧困率で見ると、親(特に母親)の最終学歴が小・中学校卒の場合の貧困率は、大学卒の場合と比べて数倍高い水準にあります(※勤労世代の貧困率の学歴別最新統計は少ないため、子どもの貧困率データから傾向を推察)。高卒と大卒の間にも、生涯賃金や雇用形態(正規・非正規)の差を通じて、貧困に至る確率には有意な差があると考えられます。
7. 健常者と障害者では貧困比率はどのように違うのか?
【回答】
障害のある方の貧困比率は、健常者(障害のない人)の約2倍と非常に高いです。
国の調査に基づくと、障害のある人のうち約半数が貧困線以下の相対的貧困状態にあるとされ、生活保護の受給率も健常者の6倍以上に上るというデータもあります。就労機会の限定や、低い平均年収が主な要因です。
8. 正社員と非正規労働者では年収がどのくらい違うのか?
【回答】
年収には大きな差があり、全体でおよそ100万円以上の違いがあります。
「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、正社員・正職員の平均年収(所定内給与額ベースに賞与を加味)は、非正規社員の平均年収を大きく上回ります。正社員は昇給や賞与、各種手当の面で優遇されるため、この差は年齢を重ねるごとにさらに拡大する傾向があります。
9. 持ち家と賃貸では収入格差があるのか?
【回答】
収入格差はあります。
世帯主の年収が高いほど持ち家率が高くなるという統計データがあり、年収2,000万円以上の世帯では持ち家率が9割に迫ります。一般的に、高収入の世帯は住宅ローンの審査が通りやすく、資産形成の一環として持ち家を選択する傾向が強いため、持ち家世帯の方が平均年収が高い傾向にあります。
10. 難病を抱えた方の生活はどうなっているのか?
【回答】
難病を抱える方の生活は、病状や治療状況、就労の可否によって様々ですが、経済的な困難を抱えるケースが多いです。
難病患者さんの多くが薬物療法などの治療を継続しており、約半数が「最適な治療法・治療薬がない」と感じているという調査結果もあります。治療による身体的負担や、症状による就労の制限から収入が不安定になりやすく、生活困窮に直結することが少なくありません。
アイズルーム総括:貧困問題の傾向と提言
貧困問題の傾向
上記の統計から、現代の日本の貧困は以下の傾向が顕著です。
「女性の貧困化」の深刻化
特に高齢単身女性とひとり親世帯において貧困率が突出しており、年金制度や雇用形態における男女間の格差が老後にまで尾を引いています。
「単身世帯」のリスク増大
離婚率の上昇や非婚化により単身世帯が増加し、その貧困率が夫婦世帯より高いという構造が、全体の貧困率を押し上げています。
「属性による固定化」
学歴、雇用形態(非正規)、そして障害や疾病(難病を含む)といった属性が、貧困のリスクを大きく高め、一度陥ると抜け出しにくい状況を生み出しています。
政治家・地方自治体への提言
アイズルームは、これらの傾向を踏まえ、誰もが安心して暮らせる社会を実現するために、政治家・地方自治体に対し、以下の提言を行います。
提言1:雇用・年金制度における「性別・非正規格差」の是正と女性支援の強化
年金制度の見直しと最低保障の強化: 厚生年金未加入期間が多い女性や非正規労働者に対し、高齢期に最低限度の生活を保障できる年金底上げ措置を講じるべきです。
非正規雇用の待遇改善: 同一労働同一賃金の原則を徹底し、非正規労働者の正規雇用化支援を強化。特に女性が多く就く非正規職の賃金水準の底上げは喫緊の課題です。
ひとり親支援の拡充: 養育費の確保支援を強化し、公営住宅への優先入居枠や子どもの教育費用への実質的な支援を拡大すべきです。
提言2:「出口」を見据えた地域連携型包括的支援体制の構築
居住支援と就労支援の一体化(アイズルームの活動のモデル化):
私たちが実践しているように、生活困窮者に対し、住居の確保(居住支援)と安定した収入源の確保(就労支援)を切り離さず、ワンストップで提供できる地域連携体制を構築すべきです。
障害者・難病患者へのきめ細かな就労支援:
障害者手帳の有無にかかわらず、難病患者を含めた働く意欲のある方々に対して、病状や能力に合わせた柔軟な勤務形態を導入する企業への助成を強化し、地域企業と福祉機関との連携を深めるべきです。
提言3:統計に基づいた「地方特有の課題」への対応
地域別困窮度に応じた財政配分:
生活保護率や高齢単身世帯率など、地域ごとの貧困指標に基づき、地方自治体への福祉・生活支援事業の財源を重点的に配分すべきです。
地方における生活基盤の維持:
地方での生活基盤(医療、交通、インフラ)の維持・強化は、地方の生活困窮者の孤立を防ぎ、生活の質を保つ上で不可欠です。都市集中型の支援ではなく、地方での「小さなセーフティネット」を支援すべきです。
アイズルームは、これらの提言が、生活困窮の最前線にいる読者の皆さま、そして私たちの活動を支えてくださる福祉関係者、そして政策を担う方々にとって、一歩前進するための気づきとなることを願っています。
「誰もが自分の居場所と役割を持てる社会」の実現へ、今後も活動を続けてまいります。