Blogをご愛読の皆様、アイズルームの代表です。

この度、私は視覚障害者1級となり、皆様のように活字を読むことはできなくなりました。しかし、私から読書を取り上げることは誰にもできません。なぜなら、今はDAISY(デイジー)図書という素晴らしいデジタル読書環境があるからです。

私は、健常者の頃と変わらず、毎週5冊の読書を続けています。

DAISY図書の利用について

公的な助成制度を利用して専用の再生機器(プレクストークなど)を購入できます。

点字図書館などの視覚障害者情報提供施設から、録音図書(デイジーデータ)をCDやダウンロードで借りられます。

この仕組みは、私たち視覚障害者の「読書権」を支える重要な基盤であり、私の生活に欠かせません。

デイジー図書とボランティアの方々への感謝

私が聞いているデイジー図書は、全てボランティアの方々による朗読で成り立っています。

この場を借りて、読み上げをしてくださる皆様に心から感謝申し上げます。

ただ、朗読者の声は比較的年齢の高い女性が多く、若い女性や男性のボランティアが少ないことは、読書環境の多様性を考える上で、今後の課題だと感じています。

私が普段読んでいるのは、主にビジネス書や自己啓発本です。しかし、そんな中でも唯一、仕事の知識やスキルではなく、「人生そのもの」を楽しむために聞き続けている作家がいます。それが、渡辺淳一先生です。

私が尊敬する渡辺淳一先生の経歴と作品、そして「医療と恋愛」というテーマに込められた深い思考を、改めて皆様と共有したいと思います。

渡辺淳一先生の「生と愛」の哲学
渡辺淳一先生の作家としての経歴と愛への思考
項目 概要
作家になる前の経歴 1933年北海道生まれ。札幌医科大学医学部卒業後、整形外科の医師・講師として勤務されました。
特に、1968年の和田心臓移植事件では、学内にありながら疑問を呈し批判的な立場をとったため、大学を辞職。
1969年、専業作家として上京するという異色の経歴が、後の医療倫理を問う作品群の基盤となっています。
作家としての経歴 1970年、『光と影』で直木賞を受賞。医師としての経験に基づく「医学もの」と、「愛と性」を鋭く描いた「恋愛もの」の二つの柱で活躍しました。
1997年の『失楽園』は社会現象を巻き起こし、恋愛小説のジャンルに大きなインパクトを与えました。
2007年のエッセイ集『鈍感力』はミリオンセラーとなり、人生論としても大きな影響を与えました。
結婚と恋愛への思考 先生の作品は、しばしば不倫や許されない愛を描き、道徳や世間体を超えた男女の「本能的な愛」を追求されています。
愛とは、理屈ではなく、人間が持っている根源的な「業(ごう)」であり、その追求の先にこそ真実があると捉えていたと考えられます。
「女性の強さ」と「男性の弱さ」を浮き彫りにしながら、愛における人間の葛藤や、死をも恐れない究極の情熱を描き続けました。
渡辺淳一先生の主な作品と内容
作品名 主なテーマと内容
光と影 【医学・人間ドラマ】:直木賞受賞作。同窓生の二人の医師の、才能、女性、そして運命をめぐる愛憎を描いた、初期の傑作です。
無影燈 【医学・命の倫理】:天才的な外科医でありながら、破滅的な生き方をする主人公の孤独と、医療現場の厳しさをリアルに描いています。
失楽園 【恋愛・究極の愛】:社会現象を巻き起こした代表作。妻帯者と人妻の道ならぬ恋が、最終的に心中という形での「永遠の愛」に昇華する物語です。
愛の流刑地 【恋愛・愛憎の深淵】:妻子ある医師と女性の激しい愛の末、女性を絞殺してしまう事件から始まる物語。愛の深さと、それに伴う「業」を描いています。
鈍感力 【エッセイ・人生哲学】:人生を前向きに生き抜くために、「物事にいちいち過敏に反応せず、鈍感でいることの強さ」を説いたエッセイ集です。
渡辺淳一先生の文学は、まさしく「医療と恋愛」が対象です。しかし、それは表面的な話ではなく、人間の持つ「生」と「性」、そして「死」といった根源的なテーマに直結しています。

私がデイジー図書で先生の作品を聞いているとき、その朗読者の声を通して、登場人物たちの心の奥底にある情熱、嫉妬、喜び、そして諦めといった感情が生々しく伝わってきます。活字が読めなくなったからこそ、耳から入る情報が、想像力をより深く刺激し、渡辺文学の濃密な世界に引き込んでくれるのです。

私と同じように、ビジネス書の合間に先生の作品を楽しまれている読者の皆様に、この情熱が伝わることを願っています。私たちの「読みたい」という気持ちは、決して失われることはありません。