【癌と診断されても焦る必要はない!障害福祉専門のアイズルームが問う「がん保険は本当に必要か?」〜公的制度の現実と、尊厳ある最期のあり方〜】

今日は、多くの方が関心を持つ「がん保険」について、本当に有効なのか、日本の公的な医療制度も踏まえて、冷静にその必要性を考えてみたいと思います。
重篤ながんになった場合、「高額な治療費の心配があるから、がん保険に入らなければ」と焦るかもしれません。しかし、現在の日本の医療制度を考慮すると、すべての人にとってがん保険が必須とは限りません。
日本国民の約4人に1人ががんで死亡する時代です(2023年データに基づく男性の確率)。アイズルームは、障害者や難病患者の問題解決に取り組む企業として、末期がんの患者さん(ステージ4)のメンタルケアも行っており、その中で医療費に関する現実も見てきています。
高額療養費制度が医療費の負担を劇的に軽減する
まず、日本の医療には「高額療養費制度」という非常に強力なセーフティネットがあります。これは、公的医療保険が適用される医療費について、ひと月あたりの自己負担額に上限を設ける制度です。
この上限額は所得に応じて定められており、長期にわたるがん治療でも、自己負担が青天井になることはありません。この制度を理解していれば、「高額医療」という言葉に過剰に恐れる必要はありません。
70歳未満の方のひと月あたりの医療費自己負担上限額(世帯合算あり)の目安は以下の通りです。
住民税非課税世帯の場合:月額上限は35,400円です。
年収300万円程度(約370万円未満)の場合:月額上限は57,600円です。
年収600万円程度(約370万円〜約770万円)の場合: 月額上限は**80,100円+(総医療費−267,000円)×1%**です。
年収1,000万円程度(約770万円〜約1,160万円)の場合: 月額上限は**167,400円+(総医療費−558,000円)×1%**です。
(※この総医療費は、医療費の総額(10割分)です。同じ区分で直近12ヶ月間に3回以上上限額に達した場合は、4回目以降の月額上限がさらに引き下がります。)
具体的な例を挙げれば、年収600万円程度の方が1ヶ月に100万円の保険適用治療を受けた場合、自己負担は計算上約87,430円で済みます。また、年収1,000万円程度の方でも、自己負担は約171,820円程度です。残りの約80万円〜90万円は、公的医療保険と高額療養費制度でカバーされます。
この医療費の上限設定を考えれば、保険適用内の治療において、長期のがん治療で3年以上かからなければ、がん保険に長年加入して保険料を負担するより、トータルの収支バランスは良いと判断できるケースが多いでしょう。つまり、高額療養費制度で補える治療に専念するという選択肢が一般的になってきています。
がん保険も有効になる例外的なケース
ただし、高額療養費制度の恩恵を受けられない費用を賄う場合は、当然がん保険に入っていた方が有利です。
個室や二人部屋の差額ベッド代:これは保険適用外で、全額自己負担となります。
保険治療ではできない最先端医療:自由診療や先進医療など、公的医療保険の適用外となる治療を行う場合、費用は全額自己負担となります。
重いがん患者の方で、がんの転移が見られても延命治療をしたい人に関しては、保険適用外の高額な医療費がかかってしまう可能性があり、がん保険が必要となるでしょう。
マスメディアが伝えない現実と「尊厳ある生き方」の選択
マスメディア、特にテレビCMでは、保険会社が大きな収入源であるため、高額療養費制度による公的なサポートの現実は絶対に取り上げません。保険会社はがん保険を積極的に宣伝していますが、公的制度で補える範囲の治療を考えた場合、がん保険によって受ける恩恵より、全体的に考えるとマイナス面の方が大きい、つまり「宝くじを買っているようなもの」という現実があります。言葉の表現は悪いですが、重い病状で闘病生活が長い場合に限り、がん保険が有効となるということです。
また、がん保険の有無にかかわらず、医者は病気を治す先生であり、お金に余裕があるなら新しい治療を試してみたいという患者の衝動に駆られることもあるでしょう。
しかし、末期がんで治る見込みがないのに、痛み止めと抗がん剤を使い、限られた時間を有効に使えないのは人生にとってマイナスであるかのように、私には思えます。もちろん、今の医療でも難しいと思われても最後まで戦いたいと思う患者さんがいても、それは本人の人生であり、否定するつもりはありません。
私は、人生の最後まで尊厳ある生き方をしたいと考えております。好きなものを食べて自由に歩けないのなら、ベッドの上で苦しんで延命治療を続ける時間は、私にとっては無駄な時間とカウントされます。
皆さんも、延命治療と尊厳ある最期のあり方について、今一度ご家族間で話し合ってください。病状が進行し、脳に転移してしまうと、会話が通じなくなるなどの症状が出てきます。がんになって余命宣告を受けてから最後の生き方を考えるのはあまりにも辛すぎるので、元気な時にどのような死に方をしたいか話し合っておくことは、決して無駄にならないと思います。
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