【障害者福祉の「闇」・賃金半減の特例措置が引き起こす「A型事業所」崩壊の危機—真の就労支援への道はどこに? 】

      

【障害者福祉の「闇」・賃金半減の特例措置が引き起こす「A型事業所」崩壊の危機—真の就労支援への道はどこに? 】

障害者就労支援B型作業所、麻の手芸品加工作業、大勢の障害者が作業にあたっているイメージ画像です。 

皆さんこんにちは。EYESROOM ( eyesroom.com )による福祉の時間です。

約1年前にA型事業所の制度改革が行われ、約4,000人もの労働者が、仕事をしないB型事業所に配置転換されたり、賃金の低下により生活が困難になり、社会問題となりました。 また、そのA型事業所で新たな問題が発生しました。

特例措置による制度を悪用し、普通にA型で働いている人たちを突然雇用契約を解除し、1,100円だった給料を500円という工賃対価に変えてしまったのです。

ニュースの概要と問題点:A型事業所の賃金半減問題
この問題は、就労継続支援A型事業所が、「やむを得ない事由」として特例的に最低賃金を下回る賃金・工賃を支払うことを可能にする「特例の適用」を悪用した事例です。

ニュースの概要
最低賃金以上の賃金が保障されているはずの就労継続支援A型事業所で、一部の利用者が事業所の都合により、突然最低賃金を大幅に下回る工賃体系に変更されました。具体的には、時給1,100円程度で雇用契約を結んでいた労働者である利用者が、500円程度の工賃(B型事業所の支払体系)へと一方的に切り替えられたというものです。これは実質的な賃金半減であり、利用者の生活を脅かす重大な問題です。

問題点
生活基盤の崩壊: A型事業所で最低賃金を得て生活していた障害者にとって、賃金の半減は生活費の確保を困難にし、経済的な自立という目標を根底から崩します。

制度の悪用と倫理: 「特例の適用」は、事業継続が困難なやむを得ない状況下で一時的に認められる措置です。これを安易に、あるいは利益追求のために利用者を雇用契約から切り離し、工賃体系に移行させる形で適用することは、福祉の倫理に反する重大な制度悪用です。

雇用の不安定化: 雇用契約を結んでいるA型事業所の利用者を雇用契約を解除し工賃体系に移行させる行為は、雇用契約の軽視であり、障害者雇用の不安定化を助長します。

A型事業所に対する信頼の低下: このような悪徳事例が報道されることで、真面目に運営しているA型事業所全体のイメージを損ない、就労支援制度への社会的な信頼を失墜させます。

このようなことが行われた背景
この悪質な事例の背景には、就労継続支援A型事業所が抱える構造的な問題と、制度の穴が存在します。

1. 制度改革と経営の厳格化
約1年前に実施された制度改革(2023年度の報酬改定など)により、A型事業所に対して、利用者への最低賃金以上の支払いを厳格化し、一般就労への移行実績を評価する仕組みが強化されました。これにより、元々収益性の低い事業所や、利用者の生産性に見合わない高めの賃金設定をしていた事業所が、経営難に直面しました。

2. 「特例の適用」の存在
厚生労働省は、利用者の急激な生活悪化を避けるためなど、真にやむを得ない事由がある場合に限り、特例として一時的に最低賃金を下回る工賃を支払うことを認める措置を設けています。経営が悪化した一部の事業所が、この「やむを得ない事由」を広範囲に解釈し、安易に利用者の賃金カットに利用したと考えられます。これにより、B型事業所並みの低コストで労働力を確保しようという営利主義が働きました。

3. 福祉と経済性のバランスの難しさ
A型事業所は「雇用型」であり、事業活動を通じて利益を出し、その対価として最低賃金以上の賃金を支払うという経済性と、障害者の就労機会を提供するという福祉的使命という二つの側面を持ちます。しかし、多くの事業所ではこのバランスを取ることが難しく、経済性が破綻に瀕した際に、最も弱い立場である利用者の賃金を犠牲にするという選択肢を選んでしまう背景があります。

今後の改善点と提言:真の就労支援の実現に向けて
この問題の根絶と、より良い就労支援を実現するためには、制度と現場の両面で抜本的な改革が必要です。

1. 制度的な改善
「特例の適用」の厳格化と罰則: 特例の適用要件をさらに厳格化し、安易な利用を防ぐべきです。悪質な事業所に対しては、指定取り消しを含めた厳重な罰則を適用する法整備が必要です。

事業所の情報公開の徹底: A型事業所の財務状況、利用者の平均工賃・賃金、一般就労への移行実績などの情報を、第三者機関がチェックし、透明性の高い形で公開する仕組みを強化すべきです。

A型・B型の垣根の見直し: A型・B型の給与体系や目的の差を明確にしつつ、利用者の生産性の向上を促すインセンティブを制度に組み込む必要があります。

2. 現場のスキルアップと意識改革
私どもEYESROOMは中小零細企業の問題解決コンサルタントをしております。クライアントの中にはこのような障害者作業所A型・B型も含まれております。半数以上のところは赤字経営で、黒字でうまく回ってるところに関しても様々な問題を制度的に抱えています。

私自身も問題解決コンサルタントをしているものの重度視覚障害者で、当事者という目線とコンサルタントという2つの視点からこれらの問題に取り組んでおります。

健常者の方はご家族に障害者がいない限り、また障害福祉に関わる仕事をしていない限り、就労支援A型事業所・B型事業所の存在すら知らないと思われます。障害を抱えている人たちが生きる目的を見つけるため、生活のリズムを作るため、一定の場所に通勤またはリモートワークで低工賃で働くのがB型事業所。障害者の方で雇用契約を結び最低賃金以上で働けるのがA型事業所。A型事業所は給料として対価がいただけます。B型事業所は工賃としていただくので、非常に低額からのスタートとなります。

就労継続支援B型事業所は非雇用型であり、工賃(賃金ではない)が支払われます。工賃には法律上の最低額の定めはありませんが、各自治体が定める指針や事業所の経営努力により、その額は変動します。一般的に、厚生労働省が公表するデータによると、令和4年度の全国平均工賃(月額)は約16,507円でした。時給換算すると200円〜300円台となる事業所も多く、10円といった極端に低い工賃からスタートする事例も残念ながら存在します。

そもそも、障害者の約50パーセントはセーフティーネットである生活保護受給者です。この数字は健常者と比べ約7倍の開きがあり、問題視されるべきです。

たくさんのA型事業所もしくはB型事業所を見ていて、私個人的には正しい姿とは思えません。制度設計も頻繁に変わり、障害者はそれらに意見することもできず、振り回されているのが現実です。

就労支援事業所と言っても、福祉関係の資格を持っている方で構成され、一般企業の経験が浅く、指導役もしくは講師役となっている方たちのスキルが不足していると思われます。また、このような問題点を指摘するとすぐに資格取得に走りますが、一般企業の経験は研修やセミナーでは身につきません。

私が顧問している作業所のスタッフの方たちは、新しい資格を取って仕事の幅を広げて給料を上げたいと考えているようですが、厚生労働省が企画しているのか、公的資格取得のセミナーばかりに行って、実際の社会の仕組みについて、会社はどのような人材を求めているのか、一般企業はどのようなスキルの方が必要なのかなどについて理解をしていないようです。

雇用促進を図るためにA型事業所のスタッフが面接の同行や入社後のアフターフォローに会社の方に行きますが、通勤状況や本人の思いを確認するだけで、その方のスキルアップや仕事の内面の状況までは、それらのスタッフの人たちが経験が浅く対応できていないのが現実です。

障害者の就労支援、今一度原点に戻って障害者のカテゴリーに分けて細かい対応が必要かと思われます。ただ事業所に勤めていても、新たな資格取得のためにセミナーに参加しても、机上の空論では真の障害者の雇用促進には至りません。

より深く企業の実情を知って、企業における人事の採用について学び、継続的なスキルアップを図るためには、障害者にどのようなアドバイスをしたらいいか。精神的なケアに関して継続的にどのように進めたらいいか。就労支援に携わる福祉関係の人たちは、福祉業界の中で留まらず一般企業の要望している人材に関する勉強をしていただきたい。

EYESROOMは今後も障害福祉をテーマとしたブログを毎日発信し続けます。ブログ上で問題提起をするだけではなく、政府や厚生労働省に対しても要望書などで改善の提案をし続けます。

働く意思があり、働ける精神状態と少しでも動けることは、社会に出て自分のアイデンティティを探し出し、自宅以外に自分の生きる場所を作ってほしい。様々な病気や障害があると思いますので、今できることで参加できる仕事を見つけられる社会にしてほしい。

法規制による数合わせだけの障害者雇用ではなく、本当の意味で障害者が主体となり働けるよう企業が増えることを願っています。