【逼迫する国家財政と福祉の狭間で考える・生活保護費「減額分」の追加支給、故人は対象外とすべきか?】

      

【逼迫する国家財政と福祉の狭間で考える・生活保護費「減額分」の追加支給、故人は対象外とすべきか?】

 

アイズルームは、日々の活動を通じて中小零細企業の経営課題に取り組む傍ら、生活弱者の方々の居住支援や就労支援にもボランティアで携わっております。特に生活保護の申請サポートや生活支援に関わる中で、セーフティネットとしての生活保護制度の重要性と、その財源の有限性を肌で感じています。

本日取り上げるのは、この福祉の根幹に関わる、重要なニュースです。

 ニュースの概要:生活保護費減額訴訟と厚労省の「追加支給」案
厚生労働省は29日、2013年~15年の生活保護費の引き下げを違法とした最高裁判決を巡り、減額分を過去に遡って追加支給する場合の案を専門委員会に提示しました。

その核心は以下の点です。

故人への支給は対象外とする案: 既に死亡している生活保護利用者は、追加支給の対象外とする。

理由: 生活保護は利用者本人を対象とした権利であり、本人が死亡した場合は遺族などに引き継がれないという過去の判例に基づく考え。

原告側の主張: 生死にかかわらず、全ての生活保護利用者に減額分の全額を支給すべき。

利用を止めた人への検討: 現在は生活保護を利用しなくなった人(「最低生活の保障を要しない者」)への追加支給については、慎重に検討する考え。生活保護は「現在の困窮に対応する性質」であるとの見解も示しています。

 アイズルームとしての問題提起と判断の指針
最高裁判決によって、国の行った減額措置が違法とされたことは重く受け止めるべき事実です。しかし、私たちがこの問題を見る視点は、単なる法律論や権利の主張に留まりません。

それは、日本の逼迫した財政状況と、持続可能なセーフティネットの維持という、より大きな国家的な課題です。

1. 生活保護は「一身専属」の権利であり、権利消滅は当然
私たちの基本的な考えは、ニュースにある厚労省の案に近いものです。

生活保護は、その名の通り、今現在、健康で文化的な最低限度の生活を維持するために当事者本人に支給されるものです。これは「一身専属の権利」と解釈されるのが一般的です。

当事者が死亡した場合、その「現在の生活困窮」は消滅します。それに伴い、生活保護を受ける権利も当然に消滅すると考えるべきです。故人に遡っての追加支給は、もはや「生活の保障」という生活保護の目的に合致しません。

2. 国家財政の現実とセーフティネット維持の責任
現在の日本の福祉制度や国家予算は、赤字国債に大きく依存しており、非常に逼迫しています。将来世代に重い負担を課し続けている現状を、私たちは直視しなければなりません。

この限られた財源の中で、誰に、どこまで公的資金を投じるかの判断は、極めて厳格であるべきです。

既に亡くなられた方々(原告だけでも200人以上)にまで遡及して追加支給を行うことは、生活困窮が解消された過去への支出となります。

こうした支出が膨らめば、現在、そして未来に真に支援を必要としている人々、すなわち、生きている生活弱者のための支援予算(セーフティネットの維持・強化)が削られることになりかねません。

私たちが守るべきは、目の前で今困窮している人々への最低限の生活保障であり、そのセーフティネットが機能し続けることです。そのためには、「権利の消滅」という現実を厳しく受け入れ、限られた予算の使い道について厳正な評価を下す必要があります。

3. 制度から離れた人への慎重な検討の必要性
現在、生活保護の利用を止めた方々への追加支給についても、厚労省は慎重な検討が必要だとしています。

これは「最低生活の保障を要しない者」への給付となるため、現在の困窮に対応するという生活保護の原則から逸脱していないか、その妥当性を深く議論すべきです。

アイズルームのまとめ:持続可能な福祉のために、私たちは何を優先すべきか
今回の追加支給の問題は、単なる減額分の返還ではなく、日本の福祉制度の持続可能性と国家財政の規律という二律背反を突きつけるものです。

アイズルームは、生活保護制度を現場で支援する立場として、その財源の有限性を理解しています。だからこそ、以下の原則に基づき、故人への追加支給は対象外とするという厚労省の案を支持すべきだと考えます。

生活保護の原則の徹底: 「現在の困窮に対応する性質」と「一身専属の権利」を厳守する。

財政規律の確保: 逼迫する国家財政において、生きている人のためのセーフティネット維持を最優先とする。

違法な減額措置という国の過ちは反省されるべきですが、その是正のための支出は、福祉の将来を脅かさない範囲で、最も必要性の高い対象に限定されるべきです。この厳しい判断こそが、真に社会全体の利益を守ることに繋がると信じます。

読者の皆様は、この問題について、どのように考えますでしょうか? 限られた公的資源を、私たちはどこに振り向けるべきなのでしょうか。

#生活保護 #追加支給 #社会保障費 #財政問題 #福祉の持続可能性