「はじめに、卑劣な事件の真相と判決」
アイズルームは、障害福祉をテーマに日々の情報を発信しております。今日は、私たちすべてにとって「許すことができない」卑劣な事件の真相と判決内容、そしてこの問題が浮き彫りにする社会の課題、今後の対策などについて、皆様と一緒に真剣に考えていきたいと考えております。

富山地方裁判所では、実の娘(25歳)に性的暴行を加えたとして、準強姦罪(現在の強制性交等罪にあたる罪)に問われていた父親(54歳)に対し、検察側の求刑通り懲役8年の実刑判決が言い渡されました。富山地裁は、「卑劣で悪質性が高い犯行」であると厳しく断罪しています。

この事件は、被害に遭われた女性が勇気を持って実名で告発し、性被害の撲滅を訴えてきたことでも大きな注目を集めました。

事件の内容と判決のポイント
今回の事件における被告の父親は、娘さんが中学生から高校生だった時期にわたり、計8回ほど性的暴行を加えていたとされています。

卑劣な犯行手口: 判決などによると、父親は日常的に教科書で殴るなどの暴力を加えたり、「言うことを聞かないと進学させない」と脅したりするなど、支配的な立場を利用していました。2016年8月には、娘さんが抵抗できない状態にあることを利用して性的暴行に及びました。

判決の理由: 富山地裁が求刑通りの懲役8年の実刑という重い判決を下した背景には、実の親子という立場を利用した極めて卑劣な犯行であり、娘さんの尊厳を深く傷つけた悪質性の高さが挙げられます。信頼すべき親による性暴力は、被害者に心身ともに甚大な、そして長期にわたる影響を与えます。

事件が問いかける社会の問題点
この痛ましい事件は、単なる一家庭内の問題として片付けられない、日本の抱える構造的な問題を私たちに突きつけています。

1. 家庭内における深刻な性暴力・虐待
事件は、最も安全であるべき場所である家庭内で発生しました。特に実の親による子への性的虐待は、被害者が声を上げにくい、逃げ場がないという点で、その悪質性が際立って高いと言えます。

2. 権力勾配の悪用と支配
父親は、親としての絶対的な立場、進学という将来の選択肢を奪う脅し、そして日常的な暴力によって娘さんを精神的・肉体的に支配していました。これは、性暴力や虐待の背景にしばしば存在する権力勾配(パワーバランスの不均衡)の悪用という大きな問題点を示しています。

3. 被害者の「沈黙」と社会の「無関心」
被害女性が長年にわたり被害を告発できなかった期間、周囲の制度や人々は、この深刻な事態を早期に発見し、救い出すことができませんでした。これは、性被害や虐待が「家庭内の問題」として見過ごされがちな社会の構造的な課題を浮き彫りにしています。

問題を早期に発見・予防するための制度作り
このような悲劇を二度と繰り返さないためには、事件が起きる前に子どもたちを守るための予防と早期発見の仕組みを、行政と社会全体で強化する必要があります。

スクールカウンセラー・ソーシャルワーカーの拡充: 学校内での専門家による定期的な面談や、家庭環境の把握に努めるスクールソーシャルワーカーの配置を大幅に増やし、子どもが安心して声を上げられる場所を確保すべきです。

第三者による定期的な家庭訪問: 虐待リスクの高い家庭や、長期欠席が目立つ子どもなどに対し、行政や福祉の専門家が介入し、子どもの安全を確認できる仕組みの構築が求められます。

性教育の義務化と内容の強化: 同意(コンセント)の重要性や、性的自己決定権、信頼できる大人に相談する方法などを含めた包括的な性教育を義務化し、子どもたちが不適切な行為を拒否できる知識を身につけることが重要です。

過去の経験から:アイズルームの決意
私、アイズルームの運営者が、現在の問題解決コンサルタントや障害福祉の事業を始める以前、前身の企業では民間でのDVシェルターを運営しておりました。

そのシェルターでは、公的なDVシェルターでは様々な制約があり利用できない方々のため、行政、弁護士、検察などから紹介を受け、様々な問題を抱えた未成年の方々の避難場所として、成人し就職が決まるまで生活の場を提供していました。

今回の事件のような未成年の女性の性被害や家庭内での虐待を逃れてきた方々も、民間DVシェルターの利用者の中には少なくありませんでした。私たちが運営していた施設は、問題が起きてしまった時の最後の安全な生活の場となりましたが、本来は事件を起こす前、虐待が始まる前に、被害を未然に防ぐための仕組みを行政と共にもっと深く考えていく必要があると痛感しております。

私がこのようなシェルターを運営していた背景には、私自身が小学生の頃に失踪した父親が、母親や姉たちに精神的・暴力的なDVを繰り返し行っていたという個人的な原体験があります。また、父が失踪し、母子家庭で育った経験から、貧困母子家庭のお子様たちがネグレクトなどの被害に遭う状況を救出したいという側面も強く持っていました。

当時は幼少期の方の受け入れはできませんでしたが、ある程度身の回りのことができる方は、成人し就職が決まるまで民間シェルターに入居されていました。

女性の貧困とジェンダー平等という根深い問題
この問題は、結局のところ女性の貧困という日本における根深い問題と切り離せません。

シングルマザーの貧困問題は依然として厳しい現実です。

高齢者の障害年金や老齢年金に関しても、女性は男性より約6万円ほどの開きがあり、高齢者の女性になるにつれて貧困率は増加します。

日本がOECD加盟国の中でも最低限の順位にあるジェンダー平等について、政治の場での真剣な取り組みが必要です。

障害、学歴、性別、病気、貧困などの問題を乗り越えて、すべての方が平和に、安心して暮らせる日本を創るために、「失われた35年」を取り戻すべく、社会全体が構造的な変革に頑張って取り組んでいくべきではないでしょうか。私たちアイズルームも、この問題の解決に向けて発信と活動を続けてまいります。