今回のテーマは、高齢者の運転免許返納と事故の原因についてです。最近、精神科医の和田秀樹氏が、高齢者の運転に関するこれまでの常識を覆すような主張をされています。その内容と、実際に免許を返納した私の実感を照らし合わせ、公平な視点でこれからの安全について考えてみたいと思います。
​【和田秀樹氏とはどのような人物か】
和田秀樹氏は、高齢者専門の精神科医として長年活動されており、多くの著書を持つベストセラー作家でもあります。彼はYouTubeや講演活動を通じて、現在の日本社会で行われている高齢者バッシングに強く警鐘を鳴らしています。特に、政治の場やメディアで語られる高齢者の運転問題について、医学的かつ統計的な視点から独自の持論を展開されています。
​【和田氏が主張する事故の原因と統計データ】
和田氏の主張の柱は、高齢者の事故は身体能力の衰えよりも、薬の副作用が原因であるという点です。彼は、若者と高齢者の事故率を比較した統計データを元に、二十五歳以下の若年層の方が事故の確率は格段に高いと指摘しています。また、高齢者が服用している睡眠薬、抗不安薬、血圧を下げる薬などが、ふらつきや意識の混濁を招き、それが踏み間違いなどの事故に直結していると説いています。
​【テレビ番組への出演に関するエピソード】
和田氏は、これらの薬害についてテレビ番組で発信したところ、製薬会社などのスポンサーへの配慮があったのか、それ以降テレビ番組を出入り禁止になったというエピソードを公表されています。そのため、現在はYouTubeなどの独自の媒体を通じて、メディアが報じない真実を伝えるという立場で発言を続けておられます。
​【当事者として感じる和田氏の主張への違和感】
和田氏の話には納得できる部分もありますが、すべてを薬のせいにするのは少し極端ではないかと私は感じます。私自身も免許を返納しましたが、高齢になると薬に関係なく、感覚が鈍ったり、とっさに判断ができなくなったりすることが実際にありました。道路をぼーっとして歩いている高齢者や、突然飛び出してくる高齢者がいるのも現実です。和田氏の理論も半分は信じられますが、残りの半分は加齢による運転操作の誤りがあるというのが、現場を知る者の実感です。
​【池袋の事故と被害者への配慮】
特に、社会的に大きな衝撃を与えた池袋の暴走事故などを、簡単に薬のせいだと断罪してしまうことには抵抗を感じます。何よりも被害者やご遺族の心に寄り添うべきではないでしょうか。あの事故において、もし運転者がお金をかけて最新の自動ブレーキ付きの車に乗っていれば、結果は違っていたかもしれません。個人の責任だけでなく、技術で防げる事故を防いでいないという側面も無視できません。
​【これからの高齢者運転への具体的提言】
今後の社会として、六十歳以上の方が新車を買う場合には、ブレーキとアクセルを踏み間違えても発進しない車や、高性能な自動ブレーキがついた車に限定するべきだと考えます。生活弱者への支援は不可欠ですが、経済力のある高齢者は、安全で比較的小さな最新車両に乗ることを推奨するべきです。また、免許更新の際はより厳格なテストを実施し、合格しない方には教習所での再講習を義務付けるような、実効性のあるシステムを構築していくことが重要です。

和田氏が指摘する薬の影響という視点は非常に重要ですが、それと同時に私たち高齢者自身が自分たちの衰えを認め、社会全体の安全を考える姿勢も欠かせません。医学的な知見と、現場のリアルな声を融合させ、悲しい事故を一つでも減らせる社会を目指していきたいものです。