【命の値段が155億円で買われる時代。カルテ改ざんとサイバーテロが招く「静かなる大量虐殺」の恐怖】

      

【命の値段が155億円で買われる時代。カルテ改ざんとサイバーテロが招く「静かなる大量虐殺」の恐怖】

視覚障害者(弱視)50代の男性がデスクトップパソコンを使用し仕事をしている画像です。

サイバー攻撃という言葉を聞いて、多くの人は「コンピュータが動かなくなること」や「クレジットカード情報が盗まれること」を想像するかもしれません。しかし、現在起きている事態は、もはや情報の窃取という次元を超え、私たちの「命」そのものを人質に取る段階へと突入しました。
最近、155億円という巨額の身代金が要求されたニュースが世間を騒がせています。これまでに発生した大手飲料メーカーのサントリーや、事務用品通販のアスクルに対するサイバー攻撃も、社会に大きな衝撃を与えました。これらの企業が受けた被害は、物流の停止や個人情報の流出、そしてシステムの稼働停止による莫大な経済的損失です。
​しかし、今回の医療機関への攻撃は、これら一般企業の被害とは比較にならないほど致命的なリスクを孕んでいます。お酒や文房具が届かなくなることは、不便ではあっても、即座に誰かの命を奪うものではありません。一方で、医療現場におけるサイバー攻撃は、まさに「目に見えない兵器」による襲撃と言えます。
​もし、病院の電子カルテが改ざんされたらどうなるでしょうか。アレルギーのない人に禁忌の薬が投与され、手術の必要がない健康な部位にメスが入れられる。あるいは、人工透析や人工呼吸器の制御データが書き換えられれば、医療従事者がどれほど注意を払っても、防ぎようのない医療ミスが誘発されます。
​また、難病患者の方々の自宅住所や病歴といった、極めて機密性の高い個人情報が公表されるリスクも看過できません。これは単なるプライバシーの侵害ではなく、社会的弱者に対するテロ行為に等しいものです。
私自身、かつてグローバル企業を経営していた際、多言語対応のホームページを展開していたこともあり、頻繁にサイバー攻撃を受けました。メールサーバーが止まったり、データの一部を書き換えられたりといった実害を経験しましたが、当時はあくまでも企業の経済活動を阻害するものが主流でした。しかし、今の攻撃は標的がより「生」に近い場所へと移っています。
​現在、私は視覚障害当事者として福祉のコンサルティングに携わっていますが、企業規模や業種に応じて、攻撃の質も変化していると感じます。国家レベルの支援を受けたハッカー集団にとって、医療機関やインフラ施設は、最も効率的に社会を混乱させ、多額の金を奪える「戦場」となってしまったのです。
​これはもはや、一病院や一企業の努力で防げるレベルではありません。実際の戦争よりも恐ろしいのは、電力が停止し、通信網が遮断され、そして医療データが書き換えられることで、社会が内側から崩壊していくことです。ミサイルが飛ばなくても、キーボード一つで日本という国が機能不全に陥るリスクが目の前にあります。
​今後の対策として、日本はサイバーセキュリティを国家戦略の最優先事項に据えるべきです。医療情報などの重要データを保護するための専用ネットワークの構築や、攻撃を受けた際のバックアップ体制の義務化、そしてホワイトハッカーの育成を国家規模で急がなければなりません。
​サイバー攻撃は、画面の向こう側の出来事ではありません。私たちの命を守る医療現場が、そして私たちの平穏な日常が、常に銃口を向けられているのだという危機感を共有する必要があります。これからの日本には、防衛費の議論と同様に、デジタル空間における「命の防衛策」を確立することが強く求められています。 
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