【ニューヨークからの緊急帰国、住む場所を失った彼女を救ったのは「制度」ではなく「人の手」でした。コロナ禍の居住支援が教えてくれた、本当のセーフティーネットの姿】

      

【ニューヨークからの緊急帰国、住む場所を失った彼女を救ったのは「制度」ではなく「人の手」でした。コロナ禍の居住支援が教えてくれた、本当のセーフティーネットの姿】

生活困窮者が生活保護申請の相談をしている画像

窓の外に広がる景色は見えなくなりましたが、あの日、私の手を取った彼女の震える手の感触は、今でも鮮明に覚えています。
本日の物語は、私が全盲となる前、居住支援の第一線で活動していた頃に実際に出会った、コロナ禍でのある女性の物語です。
現在は現場を退き、過去の経験を未来へ繋ぐためにボランティアでセミナー講師を務めております。制度の狭間で困っている方が、一人でも多く救われることを願って、この記録を綴ります。
《第1章 ニューヨークの空の下、消えかけた希望》
純子さん(仮名)は、輝く夢を胸に海を渡り、60歳を過ぎてもなお、大好きなニューヨークの街で懸命に働いておられました。
しかし、突如として世界を襲った未知の感染症が、その日常を奪いました。街はパニックに陥り、入院費は想像を絶する高額に。
「このままでは生きていけない」
日本に頼れる身よりはいませんでしたが、彼女は生きるために、成田空港行きの飛行機に飛び乗りました。
​《第2章 母国で突きつけられた、あまりにも高い壁》
ようやく辿り着いた日本の地。しかし、彼女を待っていたのは厳しい現実でした。
成田空港の職員さんや行政に相談しても、今の日本のルールでは、携帯電話がなく、住民票もなく、保証人もいない方は、住まいを借りることが非常に困難なのです。
「日本に帰ってくれば、きっとなんとかなる」
そう信じていた彼女の心は、絶望という冷たい壁に突き当たってしまいました。
​《第3章 届いた SOS、動き出した支援の輪》
成田空港近くのホテルで途方に暮れていた彼女の状況を知り、私の元へ緊急の要請が入りました。
行政としても、住民票がないと制度を動かすことができません。お金を持っていても、連絡手段がないと契約すらできない。
そんな混迷する状況の中で、私は「理由がどうあれ、住まいに困っている人がいるなら、まず手を差し伸べる」という信念だけを胸に、彼女を迎えに行く決意をしました。
女性スタッフが賃貸物件の案内及び管理状況を説明している画像
《第4章 小さな空き家から始まった、再生への第一歩》
私は彼女のすべてを受け入れ、私が管理していた空き家へとご案内しました。
「まずは、ゆっくり休んでください」
そうお伝えし、その足ですぐに市役所へ向かい、住民登録を済ませました。手に入れたばかりの住民票を手に銀行へ行き口座をつくり、その日のうちに携帯電話も契約。
一つずつ、社会と繋がるための「糸」を繋ぎ直していく作業は、彼女の顔に少しずつ笑顔を取り戻させてくれました。
世帯分離による独立引越し作業現場写真、家族から独立してアパートへ引越す引越し作業画像。
《第5章 寄り添いながら、新しい生活の舞台へ》
彼女の予算に合わせ、都内の落ち着いた賃貸物件を一緒に探し、私が緊急連絡先となって新しい住まいを確保しました。
家具や家電は、ジモティーを通じて譲ってくださる方を探し、善意のバトンを繋いで揃えました。
生活が安定するまでは生活保護の力も借りましたが、現在の純子さんは、元気にパートでお仕事をされています。保護も卒業し、日本での穏やかな暮らしを心から楽しんでおられます。
eyesroom.com運営会社の会社概要です。
コロナの混乱の中、ニューヨークから命からがら戻ってきた彼女。当時の日本では、そのような方々をどの自治体が、どの制度で守るべきか、セーフティーネットそのものが揺らいでいました。
私は、居住支援とは「救急医療」と同じだと思っています。どんな理由があっても、目の前で困っている人を拒まない。法律や制度でカバーできない部分を補う「受け皿」が必要なのです。
携帯電話や住民票、そして身寄り。そのどれか一つが欠けるだけで、日本での再建は驚くほど難しくなります。
自治体も苦しい状況にあるのが事実ですが、だからこそ、無条件で相手を想い、最短で動く支援が求められています。
視覚障害者社長の活動報告Blogトップページ画像です。
アイズルームのブログでは、私がこれまでに向き合ってきた居住支援の実態を、ありのままに記録しています。
支援団体の皆様、公共機関の皆様、もしお時間がございましたら、ぜひ他の記事もご覧ください。また、こうした実体験に基づいたセミナーも承っております。ボランティア(無償)で登壇させていただきますので、どうぞお気軽にお声がけください。
現在は全盲のコンサルタントとして、制度の枠を超えた深い視点から、皆様と共に歩んでいきたいと願っております。
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