​皆様、こんにちは。
私は現在、全盲の問題解決コンサルタントとして、福祉支援事業所の経営改善指導に携わっております。
​今回お話しするのは、私がまだ晴眼者(視覚障害のない状態)として第一線で活動していた頃に直面した、居住支援の生々しい実態です。これまでもブログを通じて現場の過酷さを何度かお伝えしてきましたが、今回取り上げる事例は、刑事事件にまで発展した深い闇を内包していました。
《第1章:暗闇のワンルームに身を潜める7人の家族》
ある日、一件の切実な相談が舞い込みました。「DV被害から逃れてきた、6人のお子様を抱えるシングルマザーを助けてほしい」という内容です。
​状況が把握しきれないまま指定された場所へ向かうと、そこには想像を絶する光景がありました。わずか一間のワンルームアパートに、お母様と中学生から幼児までのお子様6人、計7人が息を潜めるようにして身を寄せていたのです。
​避難のきっかけは、長男が野球で骨折したという出来事でした。しかし、その真相は父親による凄惨な暴力(傷害事件)でした。子供たちの命を守るため、お母様は着の身着の着のままで家を飛び出し、緊急避難先としてこの狭い部屋に辿り着いたのです。加害者である夫は警察に逮捕されましたが、一家にとっての地獄はここから始まりました。昨日まで自分たちが住んでいた家を遠くに眺めながら、離婚訴訟という出口の見えない闘いに備え、2週間もの間、彼らは世の中から消えるようにひっそりと佇んでいました。
《第2章:多子世帯を拒む「民間賃貸」の冷酷な現実》
お母様はスーパーでのパートタイム勤務で家計を支えていましたが、この騒動で仕事も休まざるを得ない状況でした。幸い、前年度の収入証明はありましたが、いざ新しい住まいを探し始めると、民間の賃貸市場の分厚い壁が立ちはだかりました。
​「子供が6人もいたら騒音がひどい」「パートの収入だけで7人を養えるはずがない」
そのような偏見と懸念から、何百軒という物件に問い合わせても、返ってくるのは全て「お断り」の言葉でした。学校をこれ以上休ませるわけにはいかないという焦りの中、社会から拒絶されているような絶望感がお母様を襲いました。
《第3章:行政との交渉と、生活再建への執念》
民間が無理ならば、公共住宅しか道はありません。私はお母様と協力し、現状を打破するための「攻め」の資料作成に取り掛かりました。
​まずは前年度のパート収入に加え、離婚後に受給可能となる児童手当や自治体の助成金をすべて精査し、可視化しました。それらを合算した独自の「収支計画書」を作成し、入居審査の担当者へ提示したのです。
「こうした困難な状況にある家族を救えなくて、何のための公共住宅なのか」
UR都市機構の窓口で、私たちは切実な懇願を続けました。その熱意と、緻密に積み上げた数字による証明が実を結び、ついに入居審査を通過することができました。
《第4章:暗闇からの脱出と、家族が取り戻した日常》
公共住宅への入居が決まると、生活基盤を整えるため「ジモティー」などを活用し、善意の方々から家具や家電を譲り受けました。新居に選んだのは、活発な子供たちの足音が響きにくいRC構造(鉄筋コンクリート造)の物件です。
​現在、お母様は以前の職場に復帰し、自治体の支援制度を最大限に活用しながら、厳しいながらも平穏な日々を送っています。暴力に怯える日々とは決別し、離婚も成立しました。
中学生の長女と長男が下の子たちの面倒を見るという、家族の強い絆によって家庭は回っています。かつて、わずか6畳ほどの暗闇で声を殺して耐えていた2週間が嘘のように、今は7人が手を取り合い、前を向いて生きています。
《第5章:貧困の連鎖を断ち切る「教育」への提言》
​この家族を救ったのは、ギリギリの収入と自治体の手当を組み合わせた、執念の審査通過でした。
私自身、アイズルームの代表として活動しておりますが、私自身のルーツも母子家庭にあります。現在の日本において、母子家庭の2人に1人が貧困状態にあるという厳しい現実があります。
​親が貧困であれば、子供は習い事や塾に通うことができず、選択肢が狭まったまま社会に出ることになります。私自身も高校を卒業後、1年間の就職を経て起業の道を選びました。当時の私の家庭環境には「大学進学」という選択肢など存在しなかったからです。学歴に関係なく這い上がるためには、起業こそが最後に残された手段でした。
​昨今、高校や大学の無償化に向けた議論が進んでいます。私は、これこそが貧困格差を是正する最大の手段だと確信しています。
もちろん、誰もが大学に行く必要はありません。勉強が苦手な人や、学問に興味がない人にまで公費を投じる必要はないでしょう。そうした方々には、高校卒業後に「手に職をつける」ための専門教育や就業支援を手厚くすべきです。
​しかし、学びたいという強い意志と才能がありながら、経済的な理由で断念せざるを得ない人たちには、大学、さらには大学院まで無償で通える道を用意すべきです。教育に予算を投じ、格差を固定化させない社会を作ること。それが、かつての私や、今回救った7人家族のような子供たちが、自らの力で未来を切り拓くための唯一の光になると信じています。
​本日の内容は以上となります。この記事を通じて、一人でも多くの方が居住支援と教育格差の問題に目を向けてくださることを願っています。
​今回の事例のような居住支援や、福祉施設の運営改善に関するご相談がございましたら、いつでもお問い合わせください。次の一歩を共に考えさせていただきます。