【​障害者虐待の連鎖を断ち切るために:厚木市・藤沢市グループホーム事件から問われる福祉の資質と営利優先主義への警鐘。安住の場が危険な場所に変わる現実を放置してはならない】

      

【​障害者虐待の連鎖を断ち切るために:厚木市・藤沢市グループホーム事件から問われる福祉の資質と営利優先主義への警鐘。安住の場が危険な場所に変わる現実を放置してはならない】

若い女性が説明をしているeyesroom.comのHP表示画像です。

​神奈川県厚木市および藤沢市の障害者グループホームにおいて、運営法人「ワイズ・インフィニティ・エイト」による入居者への暴行や暴言など、計4件の虐待が自治体によって認定されました。共同通信が入手した映像には、知的障害のある入居者をスタッフが怒鳴り、複数回叩くという、あってはならない光景が記録されていました。
​この法人は昨年、障害福祉サービス報酬の不正請求や、入居者を一方的に退去させるなどの不適切な運営により行政処分を受けています。それにもかかわらず虐待が繰り返された事実は、現在の障害福祉サービスが抱える構造的な闇を象徴しています。
​1. グループホームの原点:親たちの切実な願い
​障害者グループホームの歴史を辿れば、その始まりは1970年代後半の神奈川県などに遡ります。当時、障害を持つ子の親たちが「自分たちが亡くなった後、この子はどうなるのか」という切実な不安を抱え、大規模な入居施設ではなく、地域の中で家庭的な雰囲気を持って暮らせる場を求めて手作りで始めたのが原点です。
​本来、グループホームは安心・安全な終の棲家であるべき場所でした。しかし、制度化が進み、株式会社などの営利法人が参入しやすくなった結果、その理念はどこかへ置き去りにされています。
​2. 営利目的によるサービスの質低下と資質の欠如
​現在、障害福祉の現場には、就労移行支援や、就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所といった様々なサービスが溢れています。しかし、福祉への志を持たず、公費(税金)を原資とした報酬を目当てに参入する企業が少なくありません。
​採用基準の甘さ:専門知識や倫理観のないスタッフが現場に投入されている。
​経営者の資質不足:福祉の理念がない経営者は、利用者を利益を生むユニットとしか見ていない。
​経営感覚の欠如:逆に、理念があっても経営能力がなければ、事業所は破綻し利用者は行き場を失う。
​このように、福祉の技術と経営感覚、そして何より障害者への深い理解が三位一体とならなければ、サービスを受ける当事者は悲惨な状況に置かれます。
​3. 氷山の一角:声なき声が届かない現実
​今回発覚した4件の事件は、氷山の一角に過ぎません。多くの障害者は、幼少期から偏見や差別に晒され、心に大きな傷を負っています。さらに、自ら助けてと言葉にできない方も多く、虐待やいじめが密室の中で隠蔽されているケースが多々あります。
​アイズルームでは、これまで悪質なグループホームから脱出を希望する方々の支援を続けてきました。しかし、これは障害者施設に限った話ではありません。高齢者施設においても、人格を無視した過度な行動制限が行われるなど、同様の問題が噴出しています。
​厚生労働省への提言:福祉の質を担保するための解決策
​厚生労働省はハコ(施設)を作ればいいという段階を、既に終えなければなりません。今後は人(質の管理)に徹底してフォーカスすべきです。
​1. 参入障壁の厳格化と福祉版免許更新制の導入
​営利企業の参入を否定はしませんが、経営層に対して一定期間の現場実習と倫理試験を義務付けるべきです。また、数年ごとの更新制とし、虐待や不正があった法人は、別名義での再参入を永久に禁止するブラックリストの共有を徹底してください。
​2. 第三者機関による抜き打ち監査の常態化
​現在の自治体による監査は事前通告があることが多く、形骸化しています。入居者の声を直接拾い上げる、利害関係のない第三者による抜き打ち訪問を義務化し、映像記録(防犯カメラ)の設置と適切な保存を補助金とセットで義務付けるべきです。
​3. 就労継続支援事業所の実態調査と再編
​就労継続支援A型事業所や就労継続支援B型事業所において、単に作業をさせるだけでなく、個人の権利が守られ、適切な工賃が支払われているかを厳格に審査してください。質の低い事業所を淘汰し、本当に必要な支援を行っている事業所へ資源を集中させるべきです
​4. スタッフの処遇改善と国家資格保持者の配置義務
​質の向上を求めるならば、それに見合う処遇が必要です。現場スタッフの給与水準を公的に引き上げると同時に、各ユニットに必ず国家資格(社会福祉士、介護福祉士等)を持つ責任者を配置することを、報酬加算ではなく最低条件に引き上げるべきです。
共生社会の実現に向けて
​私たちは、障害当事者の団体として、これからも人権擁護の立場を貫きます。住まいが危険な場所へと変わるような社会を、これ以上許してはなりません。
​厚生労働省、そして運営事業者の皆様には、今一度、グループホームが誕生した時の親たちの願いに立ち返ることを強く求めます。福祉はビジネスである前に、人の命と尊厳を守る聖域でなければならないのです。
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