アイズルームは障害福祉に関連したBlogを毎日配信しています。今日のテーマは、在宅人工呼吸療法(HMV)における停電や災害時の対策についてです。
​在宅で生活を支える人工呼吸器にとって、電源の喪失は生命に直結する重大なリスクです。特に障害福祉の現場では、利用者様やご家族とともに、具体的な「バックアップ体制」を事前に構築しておくことが求められます。今回は、訪問医療・介護事業所の情報をベースに、福祉現場で押さえておきたい実務的なポイント、そして災害時に本当に必要となる広範なサポート体制について深掘りします。
まず、もっとも重要なのがバッテリーの管理と優先順位の把握です。多くの人工呼吸器は、外部バッテリー、内部バッテリーの順に電力を消費するように設計されています。内部バッテリーはあくまで「最後の非常用」であることを意識し、普段から外部バッテリーを接続した状態で運用することが基本です
​ここで注意したいのが、バッテリーの駆動時間はカタログ値通りにはいかないという点です。設定されている換気条件(呼吸回数や圧の設定)や、使用開始からの経年劣化によって、実際の持ち時間は大きく変動します。バッテリーは消耗品ですので、購入から何年経過しているかを台帳等で管理し、定期的な交換サイクルを医療機器メーカーと確認しておくことが大切です。
​次に、電源確保の代替手段についても知識を深めておく必要があります。停電が長期化する場合、自家発電機や車のシガーソケットからの給電を検討することもありますが、これには注意が必要です。人工呼吸器は精密機器であるため、出力される電気の波形が「正弦波」である発電機でなければ故障の原因になります。使用を想定している機器が対応しているかどうか、事前にメーカーへ確認をとっておくのが福祉従事者としての重要な役割です。
​また、意外と見落としがちなのが「雷」への対策です。落雷による突発的な過電圧は、コンセントを通じて機器を破損させる恐れがあります。雷が近づいている場合は、あえてACコンセントを抜き、安定したバッテリー駆動に切り替える判断も、機器を守るための有効な手段となります。
​しかし、大きな震災などで停電が長期化した際、問題は電源だけにとどまりません。バッテリーが尽きれば手動でのアンビューバッグによる送気が必要となり、家族がつきっきりでサポートし続けなければならず、精神的・肉体的な限界がすぐに訪れます。特に高層マンションでの療養の場合、エレベーターの停止により「水」の確保が困難になり、呼吸器以外にもおむつやガーゼ、カニューレの予備といった「衛生用具・医療用具」の在庫不足が死活問題となります。
​重度障害者や難病患者は、健常者に比べて必要となる備品が圧倒的に多く、かつ特殊です。これらは避難所にすぐ準備されているものではなく、個別の支援物資として届けてもらう仕組みが不可欠です。
​現在、多くの自治体で「避難行動要支援者」としての登録制度がありますが、実態としては「登録しただけで、具体的な指示や公的サポートの確約がない」という不安を抱えている方が少なくありません。本来であれば、国や地方自治体は「どこに、どのような疾患の人がいて、何日分のどの備品が必要か」をリアルタイムで把握し、プッシュ型支援(要請を待たずに届ける支援)を行える体制を組む必要があります。
​また、私たち一人ひとりにもできることがあります。皆さんはご近所に人工呼吸器を使っている方がいるかご存じでしょうか。一家族だけで全てを補うのは不可能です。だからこそ、地域のコミュニティで存在を知ってもらう「顔の見える関係」が、非常時の命をつなぐ第一歩となります。
さらに、今後の課題として以下の視点も提案したいと思います。
​「福祉避難所」への確実なアクセス:一般の避難所では対応が難しい難病患者が、優先的に医療的ケアの整った場所へ移動できるルートの確保。
​医療用具の「備蓄拠点の公開」:災害時に特定のおむつやカテーテルをどこで受け取れるか、自治体とメーカーが連携した情報の透明化。
​遠隔モニタリングの活用:通信が生きていれば、バイタルや機器の状態を外部から把握し、優先順位をつけて救助に向かう仕組み。
​災害はいつ起こるかわかりません。日頃のモニタリングの際に、バッテリーを確認するだけでなく、自治体の支援計画がどこまで進んでいるかを確認し、時には声を上げていくことも必要です。
​アイズルームでは、これからも現場で働く皆さまや利用者様の安心に役立つ情報を発信し、より深みのある支援のあり方を考えていきます。