【精神疾患と賃貸経営の壮絶な現場から問う、居住支援の限界と共生社会への真の課題】

      

【精神疾患と賃貸経営の壮絶な現場から問う、居住支援の限界と共生社会への真の課題】

女性スタッフが賃貸物件の案内及び管理状況を説明している画像

賃貸経営において、入居者とのトラブルは避けては通れない課題です。どれほど厳格に審査を行っても、一定の確率で問題行動が生じることは避けられません。また、入居時は健康であっても、環境の変化や病によって精神疾患を患い、状態が変貌してしまう方も少なくありません。
​精神疾患を抱える方の受け入れに対して、多くのオーナー様は拒否感を示されます。賃貸保証会社も同様です。表向きは法律を遵守していても、疾患を把握した段階で、明確な理由を告げることなく保証を否決するのが現実です。よほど担当者と深い信頼関係がなければ、拒絶の真意を知ることさえできません。
​実際に精神疾患のある方を入居させた場合、およそ2割の確率で深刻な問題が発生するというのが、私の現場での実感です。主治医に現状を訴えても、通院時の本人は状態が安定していることが多く、そこまで悪いはずはないと言い切られてしまうことも多々あります
​しかし、管理現場でのトラブルは苛烈を極めます。ベランダから通行人に罵声を浴びせる、夜中に鍵を紛失したと大暴れする、薬が切れた際に他人の居室に侵入しようとする。あるいは、意味もなく不気味な表情で水をまき続けたり、昼夜を問わず呻き声を上げたりといった事態が日常茶飯事となります。
​こうした事態が一度発生すれば、周囲の入居者は次々と退去していきます。しかし、問題行動を起こした本人を退去させるには、半年から2年もの歳月を要します。生活保護を受給されている方が多いため、本人の意思だけでは転居できず、市役所へ何度も足を運び、福祉課に許可と費用の捻出を掛け合わなければなりません。時には弁護士や地方議員の協力を仰ぐこともありました。
​訪問介護による支援も試みましたが、抜本的な解決には至りませんでした。警察を呼んでも、民事不介入の原則から一時的な対応に留まり、最終的には「管理会社で解決してください」と委ねられます。精神疾患に起因するトラブルは365日24時間発生します。当時の私は、自ら、あるいは従業員とともに、寝る間も惜しんで対応に当たりました。
​これほどの緊急対応を夜間に行える不動産会社が、果たしてどれほどあるでしょうか。ビジネスとして考えれば、到底成り立つものではありません。しかし、障害者を社会から排除せず、共生社会を実現するためには、こうした困難な現実と真摯に向き合い、戦い抜く必要があるのです。
​本人たちもまた、自らの病と戦い、自分を制御できない苦しみの中にいます。薬を適切に服用できている間は安定していても、病の波に翻弄されているのです。
居住支援が必要な方々は、精神疾患だけでなく、犯罪履歴や多重債務、認知症など、複合的な問題を抱えているケースが少なくありません。これらを偏見の目で見ることなく、しかし現実の困難を直視した上で、いかにして安全で安らかな住まいを提供すべきか。現在の国の制度では、この最前線の苦境に全く対応できていないのが実情です。
​私は現在、問題解決コンサルタントとして支援団体の方々と接する機会も増えましたが、一般の住宅における精神疾患への対応について、福祉サービスの理解はまだ十分とは言えません。グループホームを拒絶する方もいる中で、精神疾患の方が最低限の尊厳を持って一般賃貸で暮らすためには、現場を知る者が声を上げ続けなければなりません。
​私は誰よりも多くの現場を見てまいりましたが、いまだに唯一の正確な答えは見つかっていません。その後、私自身が全盲となり、現場の第一線からは退くこととなりましたが、現在はセミナーを通じて「居住支援の真の課題」を伝え続けています。
​賃貸物件における差別の解消、保証会社の受け入れ促進、24時間の緊急医療・介護体制の整備、問題発生時の速やかな退去に関する法整備、そして措置入院を含む医療機関や地方自治体との緊密な連携。これら一つひとつを解決して初めて、真の居住支援住宅は成立します。
​これらの問題は、賃貸事業におけるタブーとされてきました。しかし、蓋をしていては何も変わりません。より詳しい実情や解決策についてお聞きになりたい方は、問い合わせフォームよりご連絡ください。
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