​日々の暮らしの中で、私たちが明日「障害者」になる可能性を想像することはほとんどありません。しかし、健康であっても不慮の事故に遭ったり、予期せぬ大きな病を患ったりすることは誰にでも起こり得ます。昨日まで当たり前にできていた仕事ができなくなり、収入が激減して生活の基盤が揺らぐ。そんな人生の岐路に立ったとき、私たちを支える制度が「障害年金」です。
​障害福祉をテーマに毎日発信しているアイズルームですが、今回はこの障害年金の具体的な仕組みと、現在議論されている極めて厳しい現実について、最新のニュースを交えて深く掘り下げていきたいと思います。
​まず、障害年金はどのような方が対象になるのでしょうか。意外と知られていませんが、対象となる病気や障害は多岐にわたります。
・手足の欠損や麻痺などの「外部障害」
・視覚、聴覚、言語機能の障害
・精神疾患(うつ病、統合失調症、発達障害、知的障害など)
・がん、糖尿病(合併症)、腎疾患(人工透析)、心疾患(ペースメーカー装着)
・難病や呼吸器疾患
​このように、目に見える障害だけでなく、内臓の疾患や心の病も対象となります。しかし、ここには非常に高い「初診日の壁」というハードルが存在します。
​現在の制度では、障害の原因となった病気や怪我で初めて医師の診療を受けた「初診日」を基準にして、すべてが判断されます。ニュースでも指摘されている通り、この初診日がいつであるかによって、受けることができる年金の種類や金額が大きく変わってしまうのです。
​例えば、初診日が「会社員として厚生年金に加入していた時期」であれば、障害厚生年金という手厚い補償が受けられます。しかし、初診日がたまたま「自営業やアルバイト、学生などで国民年金のみの時期」だった場合、同じ程度の障害であっても、受け取れるのは障害基礎年金のみとなります。初診日の時点での雇用形態という、過去の「点」の記録だけで、一生の受給額に格差が生まれてしまう。これは、今の多様な働き方がある社会において、非常に不条理な仕組みと言わざるを得ません。
​さらに深刻なのは、数十年前に一度だけ受診した記録が「初診日」とみなされ、その後に長く厚生年金を納めて働いていても、初診日の要件を満たさないとして受給を阻まれるケースがあることです。制度の改定議論では「過去の点ではなく、障害の状態が悪化した時点を基準にすべきだ」という声が上がっていますが、国側の対応は遅々として進んでいません。
​ここで、現在健康でバリバリと働いている健常者の方々へ、切実なお願いがあります。どうか、年金は必ず納めるようにしてください。
​「自分は健康だから大丈夫」という保証はどこにもありません。目の前の道で車に轢かれるかもしれません。不慮の事故で下半身不随になるかもしれません。障害はある日突然、あなたの日常に割り込んでくるのです。その際、もし年金を未納にしていたら、どんなに生活が苦しくなっても、保険適用の要件を満たしていないと見なされ、障害年金を一円も受け取ることができないという過酷な現実が待ち構えています。
​障害年金は単なる老後の蓄えではなく、今この瞬間に起こり得る「万が一」に対する、社会全体で支え合う保険です。いつ誰が当事者になるかわからないからこそ、私たちはこの制度を正しく理解し、万全の準備をしておく必要があります。障害年金は、絶望の淵に立たされた時の最後の砦です。その砦を確実なものにするために、まずは年金の納付という基本的な備えを忘れないでください。