精神疾患を抱える方がアパートに入居する際や、入居後にトラブルに巻き込まれるケースは残念ながら存在します。以下に、考えられるトラブルの種類、原因、そして対策について詳しく説明します。

1. 入居前のトラブル（審査通過の難しさ）

原因：

• 家賃滞納の懸念:精神疾患により就労が不安定になり、収入が途絶えることを家主や管理会社が懸念する場合があります。
• 近隣トラブルへの不安:病状によっては、大声を出したり、不適切な行動をとったりするなど、近隣住民とのトラブルに発展する可能性を懸念されることがあります。
• 情報不足:精神疾患への理解が不足している場合、偏見から入居を拒否されるケースがあります。
• 生活保護受給の場合:生活保護受給を理由に、一部の物件では入居を断られることがあります。

対策：

• 正直な情報提供と支援体制の明確化:
  • 不動産会社には、自身の病状や通院頻度、障害の等級、訪問看護や支援事業所の利用の有無、服薬管理の状況などを正直に伝え、理解を求めることが重要です。
  • 支援者（家族、親族、ソーシャルワーカーなど）や支援機関（相談事業所、地域包括支援センターなど）との連携体制を明確にし、緊急時の連絡先などを提示することで、家主や管理会社の不安を軽減できます。
• 障害者居住サポート事業の利用:各自治体で行っている障害者の居住サポート事業を利用することで、賃貸契約が結びにくい方や保証会社が見つからない方の支援を受けられます。自治体の福祉窓口で相談してみましょう。
• 理解のある不動産会社を探す:精神疾患への理解がある不動産会社や、生活保護受給者向けの物件を多く扱っている不動産会社を探すのが有効です。
• 保証会社の利用:精神疾患を理由とする生活保護受給者でも、家賃保証会社の審査は通る場合が多いです。電話での受け答えを落ち着いて行うことが重要です。
• 「障害者差別解消法」の知識:2024年4月に改正された「障害者差別解消法」により、障害を理由に賃貸契約を拒否することは原則として違法とされています。不当な差別を受けた場合は、自治体や弁護士に相談することを検討しましょう。

2. 入居後のトラブル（近隣住民との問題）

原因：

• 騒音:大声、奇声、独り言、足音などが近隣住民の迷惑になることがあります。
• 不適切な行動:ゴミ出しのルールが守れない、窓から長時間外を眺めるなど、意図しない行動がトラブルの原因となることがあります。
• コミュニケーションの困難:病状によっては、近隣住民とのコミュニケーションが難しく、誤解が生じやすいことがあります。
• 被害妄想:自身の病状から、近隣住民からの被害妄想に陥り、トラブルを引き起こすケースもあります。

対策：

• 支援者・支援機関との連携:
  • 担当の医療機関や相談支援事業所のスタッフ、家族などと密に連携し、体調の変化や困りごとを早期に共有できる体制を整えることが重要です。
  • 必要に応じて、訪問看護や自立生活援助サービスなどを利用し、日常生活の困りごとへのサポートを受けることを検討しましょう。
• ルール順守の意識:ゴミ出しや騒音など、アパートの基本的なルールを理解し、できる限り守るように努めることが大切です。支援者と一緒にルールを確認することも有効です。
• 環境調整:騒音対策として、防音カーテンの導入や、生活リズムの調整などを検討することもできます。
• 早期の相談:トラブルが起こりそうだと感じたり、実際にトラブルになったりした場合は、一人で抱え込まずに、すぐに支援者、管理会社、大家さんに相談しましょう。
• 専門機関の活用:
  • 警察:緊急性が高い場合や、身の危険を感じる場合は110番、それ以外は警察相談専用ダイヤル「#9110」に相談できます。
  • 自治体の福祉窓口・精神保健福祉センター:精神疾患に関する専門的な相談や支援を受けることができます。
  • 弁護士（日本弁護士連合会の「ひまわりお悩み110番」など）:法的なアドバイスや、必要に応じて弁護士の紹介を受けることができます。

3. 賃貸契約の解除に関するトラブル

家主や管理会社が、入居者の迷惑行為を理由に契約解除を求めるケースがあります。精神疾患を理由とする迷惑行為であっても、契約違反が明確であれば契約解除が認められる可能性はあります。

対策：

• 早期対応:迷惑行為がエスカレートする前に、支援者や専門機関と協力して問題解決に努めることが重要です。
• 福祉との連携:家主や管理会社も、精神疾患を抱える入居者への対応に困惑している場合があります。福祉の窓口や精神保健福祉センターが間に入ることで、円滑な解決につながることがあります。
• 専門家への相談:不当な契約解除を求められた場合は、弁護士などの専門家に相談し、法的な助言を得ることが大切です。

まとめ

精神疾患を抱える方がアパートで安心して生活するためには、事前の準備と、入居後の支援体制が非常に重要です。一人で問題を抱え込まず、利用できる支援制度や相談窓口を積極的に活用し、周囲の理解と協力を得ながら、トラブルを未然に防ぎ、解決していくことが大切です。