​提起された問題点とその優先順位
​先日、2024年分の政治資金収支報告書が公表されました。毎年この時期、私たちは政治と「お金」の生々しい実態を垣間見ることになりますが、昨年は特に衆議院選挙があった年ということもあり、その費用は膨大に上っています。
​私たちが運営する「アイズルーム」は、福祉をテーマとしていますが、良い福祉政策を実現するためには、その土台となる良質な政治が不可欠です。しかし、公表された収支報告書や、それに付随する多くの問題点を見るにつけ、現在の日本の政治構造が、本当に国民、特に最も支援を必要とする方々の声を聞ける体制になっているのか、大きな疑問を抱かざるを得ません。
​今回は、皆さまからいただいた率直なご意見や、私たちが日頃から感じている問題意識に基づき、日本の政治が抱える構造的な課題を洗い出し、それを解決するための具体的な提言を皆さまと共有したいと思います。
​いただいたご意見を基に、問題を「お金」「機会の平等」「多様性」「民主主義の質」の4つの柱に分類し、解決の緊急性と重要度から優先順位をつけました。

​最優先課題: 政治資金の透明化と、選挙活動の公平性の確保。
​重要課題: 議員の多様性（世襲、ジェンダー）の是正と、若年層への政治教育。
​中長期課題: 新しい選挙様式の導入と、SNSにおける政治活動の倫理的規制。

​1 政治と「お金」にまつわる構造的問題（最優先課題）
​政治資金収支報告書から垣間見えるのは、政治活動の「費用」が、優秀な人材の政治参入を阻み、政治のあり方を歪めている現実です。この「お金」の問題を放置すれば、政治は一部の富裕層や既得権益者のためのものになってしまいます。
​政治資金の私的流用と高額化
​政党資金が高額な生活費などに使われている実態は、政治家に対する国民の信頼を根底から揺るがしています。政治資金は、政治活動という公共目的のために使われるべきものです。
​企業や団体からの多額の現金寄付は、政治が特定の勢力の利益に誘導されるのではないかという深刻な疑念を生み出しています。
​選挙費用の膨大化と参入障壁
​衆議院選挙の年の選挙費用が膨大になることは、資金力のない一般の方が政治家を目指す際の、極めて高いハードルとなっています。
​政治活動とは無関係な報告が多数含まれることで、資金の使途の透明性が損なわれており、監視機能が十分に働いていません。

​2 政治家への機会の平等と多様性の欠如（重要課題）
​資金力や世襲といった既得権益が、多様な背景を持つ人材の政治参入を阻害し、結果として、政治が多くの国民の生活実態から遊離しています。
​世襲議員の過剰な割合
​日本の国会議員に占める世襲議員の割合は、他国と比較して非常に高い水準にあります。この「地盤」「看板」「資金」が既にある二世議員が優位な状況では、人間性や志があっても資金力のない一般の方は、勝負にすらなりません。
​政治家と貧困世帯との収入格差
​経済が疲弊する中で、政治家と貧困世帯との間に大きな収入格差がある現状は、真に苦しんでいる人たちの気持ちを、政治家が心から理解できないのではないかという懸念を生んでいます。
​ジェンダーバランスの偏り
​圧倒的に男性議員が多い現在の政治構造では、社会の半数を占める女性の視点が十分に反映されているとは言えません。物事を多角的に捉え、より良い政策を生み出すためにも、男女が均等な視点を持つことは不可欠です。

​3 民主主義の質と未来への投資（重要課題・中長期課題）
​古い選挙制度、政治教育の不足、そして新しいメディアを通じた倫理観の欠如が、私たちが目指すべき健全な民主主義の発展を阻んでいます。
​選挙投票率の低迷
​直近の衆議院総選挙の投票率は53.85％であり、国民の半数近くが政治参加を見送っている状況です。投票率を20%でも向上させることができれば、政治家の顔ぶれはより多様になり、国民の意思が色濃く反映されるようになります。
​旧態依然とした選挙活動
​大量のビラや、騒音をまき散らす選挙カーといったお金と手間がかかる古い選挙活動は、時代にそぐわず、多くの人に迷惑をかけています。
​ポスターを大量に印刷し、掲示する費用は公費を圧迫するだけでなく、写真加工が容易な現代において、その情報価値は薄れています。
​SNSを悪用した政治活動と倫理観の欠如
​SNSでの人気や炎上を目的として、政治を金儲けの道具にするような卑劣な政治家やユーチューバーが現れています。
​選挙ポスターや政見放送で、社会の倫理観を逸脱した内容が横行している以上、政治活動の自由という大原則のもとでも、細かな規制や倫理規定を設ける必要に迫られています。
​政治が単なる興味本位の金儲けにならないよう、YouTubeなどのプラットフォームにおける政治関連コンテンツの課金のあり方についても、真剣に検討すべきです。

​解決に向けた提言と行動計画
​これらの問題点を解決し、良質な政治家を選び、私たちが目指す「良い福祉」を実現するために、日本が直ちに取り組むべき具体的な行動計画を提案します。
​1 選挙制度の抜本的改革と資金の透明化
​インターネット投票の実現とデジタル選挙の推進
​若者や障害のある方も含め、誰もが投票しやすいインターネット投票を早急に実現し、投票率の大幅な向上を目指します。
​候補者全員が平等に情報発信できる公的なデジタルプラットフォームを整備し、選挙カーやビラ、ポスターなど費用のかかる活動を制限します。
​選挙ポスターは廃止し、主要な場所にデジタル掲示板を設け、公費で平等な情報公開を行います。
​政治資金規正法の厳格化と罰則強化
​政治資金の使途基準を厳格化し、生活費などの私的な支出を全面的に禁止します。
​企業・団体からの政治献金については、不透明な現金のやり取りを規制し、透明性を高めるための厳格な情報公開を義務付けます。

​2 政治家育成と多様性確保のための環境整備
​世襲制限の導入と出馬機会の平等化
​資金力や地盤に頼らず、優秀な人材が政治に挑戦できるように、世襲に対する一定の制限を設けることで、一般の方の政治参入機会を増やします。
​クオータ制の導入によるジェンダーバランスの是正
​女性候補者の割合を義務付けるクオータ制を導入し、多様な視点を持つ政治構造を意図的に作り出します。
​政治倫理教育の強化とSNS活動の規制
​政治活動の自由を悪用し、社会に迷惑をかけるような行為に対し、公職選挙法や政治資金規正法とは別に、倫理規定と罰則を設けます。
​政治を金儲けの手段にする風潮を防ぐため、プラットフォームと連携し、政治関連コンテンツの課金のあり方を再検討します。

​3 若年層への民主主義教育の徹底
​学校教育における主権者教育の早期開始
​小学校の時から、生徒会選挙やクラスの役員選挙を通じて選挙の疑似体験を繰り返し行い、主権者としての自覚と政治への関心を早期から育成します。
​政治の仕組みや資金の流れなど、実生活に直結する教育を強化し、投票行動が社会を動かす力になることを実感させます。
​これらの構造的な課題を解決し、資金力ではなく人間性と政策で勝負できる政治環境を整えることが、私たち「アイズルーム」が目指す、質の良い政治家による「良い福祉」の実現に直結します。

​私たちは、この問題を単なる政治ニュースとして終わらせるのではなく、真に困窮している方々の声が届く、公正で開かれた社会を作るための具体的な一歩として捉えるべきです。
​皆さまは、この問題についてどのように考えますか。ご意見をお問い合わせフォームからお寄せ下さい。