障害者福祉の現場で、いま深刻な課題が浮き彫りになっています。
​福祉ビジネスは参入しやすい、あるいは安定して儲かるという甘い言葉やフランチャイズのセミナーに踊らされ、障害に対する深いご理解や強い思い入れもないまま新規参入する事業者が後を絶ちません。
​しかし、障害者福祉事業は「箱を作れば簡単に収益が出る」ような事業ではありません。利益だけを目的とした安易な参入は、事業の破綻や赤字経営を招き、最終的に困惑するのは利用されている障害者ご本人やそのご家族です。
​今回は、行政や厚生労働省などの最新データを交えながら、主要な3つの障害福祉サービスにおける現実と課題、そして正しい経営のあり方についてお伝えします。
​3つの障害福祉サービスにおける経営の実態
​まず、一般的に使われている事業所の呼称について、厚生労働省の正式名称で整理し、最新の経営状況を確認してみましょう。
​一つ目は、就労継続支援A型(雇用型)です。
障害のある方と雇用契約を結び、最低賃金以上の給料を支払いながら就労訓練を提供するサービスです。
福祉医療機構(WAM)などの最新の経営状況調査によると、就労継続支援A型事業所の赤字割合は50パーセントを超えており、半数以上の事業所が深刻な収益難に陥っています。
​二つ目は、就労継続支援B型(非雇用型)です。
雇用契約を結ぶことが難しい方に対し、作業に応じた工賃を支払う形で就労の機会を提供するサービスです。
こちらの赤字事業所割合も約35パーセントとなっており、およそ3社に1社は赤字経営が続いています。 
​三つ目は、共同生活援助(障害者グループホーム)です。
障害のある方が地域で共同生活を送るための住まいと生活支援を提供するサービスです。
これまで比較的経営が安定していると言われてきたグループホームですが、最新の調査データでは約40パーセントから45パーセント近くが赤字に転じており、業界全体で経営環境が厳しさを増しています。 
​現場で直面する構造的な課題と問題点
​なぜこれほどまでに多くの事業所が赤字に苦しんでいるのでしょうか。そこには障害福祉特有の難しさがあります。 
​就労継続支援A型における生産性と賃金ギャップ
A型事業所では、生産活動で得た収入から利用者の賃金を支払うのが原則です。しかし現実には、健常者と同じように効率よく働くことが難しい障害者の方も多く、基本賃金を賄うだけの売上を確保できない事業所が目立ちます。障害に応じた適切な指導を行いながら自社の売上も確保するという難易度の高さに対応できず、経営が行き詰まるケースが多発しています。
​就労継続支援B型における実態と工賃の問題
B型事業所では、実際の作業で得られた売上から工賃が支払われます。しかし、作業効率の低さから手元に残る工賃は月にわずか2万円程度ということも珍しくありません。そこから昼食のお弁当代などを引くと手元にほとんど残らず、利用者の生活支援や自立に繋がっていない実情があります。さらに、本来は障害者の訓練の場であるにもかかわらず、納期の遅れを防ぐために経営者やスタッフが残業して作業を手伝うといった本末転倒な現場も多く見受けられます。
​行政の規制変更と給付金振込のタイムラグ
福祉事業の運営費用は主に行政からの障害福祉サービス費(給付金)で賄われますが、利用があった翌々月に入金されるなど資金調達のタイムラグが存在します。開業初期の運転資金が不足していると、すぐに資金繰りが悪化します。
また、厚生労働省や自治体による監督官庁の指導や制度改正は非常に頻繁です。今年まで認められていた基準や評価が来年には大きく見直されることも日常茶飯事であり、制度に依存しただけの経営計画では変化に対応できません。
​大阪で起きた大規模不正受給問題(絆ホールディングス問題)
​利益のみを目的とした参入がどのような末路をたどるかを示した象徴的な出来事が、大阪で起きた絆ホールディングス(HD)をめぐる不祥事です。
​絆ホールディングス傘下の就労継続支援A型事業所において、障害者の就労支援に関する給付金や各種加算金を不正に受給していたことが発覚しました。不正受給の額は100億円を超えるとされ、行政から指定取り消し処分を受けたことで複数の事業所が閉鎖に追い込まれる事態となりました。 
​これは「障害者のため」ではなく、「不正な手段を用いて事業所側が給付金をむさぼる」という極めて悪質な例です。事業所の閉鎖によって突然働く場を奪われた障害者の方々は、計り知れない不利益と混乱を被ることになりました。こうした不正や質の低いサービスを排除するため、行政側でも創業時の規制強化や加算条件の厳格化が急速に進んでいます。
​障害福祉サービスが目指すべき今後の方向性
​福祉事業における創業規制の強化や指定基準の見直しは、今後ますます厳しくなっていきます。単に参入して給付金を得るようなビジネスモデルは通用しなくなります。
​厳しい現実をお伝えしてきましたが、これらの障害福祉サービスが地域社会において絶対に必要な存在であることは動かしがたい事実です。
​正しい経営を行うためには、以下の姿勢が不可欠です。
​確かな経営能力と財務管理の徹底
「良いことをしている」という情熱だけでは赤字を垂れ流し続け、事業を継続できません。ビジネスとして収益を確保し、正しく資金を循環させる経営計画と知恵が必要です。
​障害に対する真の理解と手厚いサポート
単なる労働力として見るのではなく、お一人おひとりの特性に合わせた指導法や作業環境を整えるノウハウを持つことです。
​社会貢献への強い意志
障害者の自立と生活の質の向上を真剣に考え、地域社会に貢献するという根幹の理念をブレさせないことです。
​経営者としてのビジネス感覚と、福祉の専門家としての温かい志。この両方を併せ持って初めて、事業所は持続可能な経営を実現できます。
​福祉支援団体EYESROOMの取り組み
​私たち福祉支援団体EYESROOM(アイズルーム)は、障害者の方々の居住支援や就労支援を無償で行っている団体です。
​千葉県松戸市を中心に、経営に行き詰まっている事業者様や、赤字からの脱却を目指す運営者様に向けて、無償での経営改善コンサルタントを実施しております。
​経営に行き詰まった事業者様を立て直すことは、そこで働く障害者の方々の安心と生活を守ることに直結します。
​福祉事業の経営でお悩みの方、改善の道筋が見えずに困惑されている経営者様は、ぜひお気軽にEYESROOMまでご相談ください。真に障害者から必要とされる事業所を、共に作り上げていきましょう。