【鉄道介助申請の標準化がもたらす未来と視覚障害者の移動の在り方】

      

【鉄道介助申請の標準化がもたらす未来と視覚障害者の移動の在り方】

リュックを背負った男性視覚障害者が、白杖を持ちながら反対側の手でリールの付いたカードケース(定期券)を自動改札にかざし、通過する画像です。

​ゴールデンウィークをどのようにお過ごしでしょうか。大型連休ということもあり、旅行や帰省で鉄道を利用される方も多い時期です。視覚障害者が鉄道を利用する際、今回ご紹介するようなサービスをすでに活用されている方もいらっしゃるかもしれません。私自身は、実はまだ一度も使ったことがありません。
​当ブログは、重度視覚障害者の視点から発信する、障害福祉に特化した内容をお届けしています。ブログの配信元は、福祉支援団体「アイズルーム」です。私たちは、視覚障害者の方が社会に溶け込み、普通に働き、共に生きる「共生社会」の実現を目指して活動しています。
​今回は、国土交通省の地域交通DXプロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」における、鉄道介助申請の標準化調査業務について深く考察していきたいと思います。
​1、サービスの概要と背景
現在、デジタル障害者手帳「ミライロID」を展開する株式会社ミライロが、国土交通省のプロジェクトに参画し、鉄道利用時の介助依頼を一本化するための調査業務を行っています。これまで、鉄道会社ごとに異なっていた介助の申し込み方法や受付時間を、共通のプラットフォームで標準化することを目指しています。ミライロIDを通じてワンストップで介助依頼ができるようになれば、利用者の利便性は飛躍的に向上します。
​2、国の方針と鉄道会社の対策
国は現在、2025年までに交通機関のバリアフリー化を加速させる方針を掲げています。その中核となるのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」による効率化と情報の共有です。
多くの鉄道会社では、事前予約を推奨していますが、電話予約の繋がりにくさや、会社をまたぐ際の二重の手間が課題となっていました。これに対し、鉄道各社は共通のシステムを導入することで、駅員間の連携をスムーズにし、介助の引き継ぎミスを防ぐ対策を講じ始めています。
​3、デジタル化の影と取り残されないための仕組み
依頼の窓口が一本化され、デジタル化が進むことは時代の流れとして避けられないことかもしれません。しかし、ここで忘れてはならないのが、視覚障害者の中にはスマートフォンを自由に操ることが難しい方も確実に存在するという事実です。
デジタル化の恩恵を受けられる人がいる一方で、操作に不慣れな方が取り残されてしまうようでは、それは真の共生社会とは呼べません。利便性を追求するのと同時に、デジタルが苦手な方でも安心して利用できるよう、比較的繋がりやすい専用のコールセンターを併設・運用していくことが不可欠です。誰一人として移動の自由から排除されない仕組みづくりが求められています。
​4、視覚障害者としての視点と今後の課題
このサービスが普及すれば、事前の準備が格段に楽になることは間違いありません。しかし、私たちが日常で直面するのは「急な予定変更」や「急ぎの移動」です。事前に予約をしていれば安心ですが、突発的な外出や、一本早い電車に乗りたいといった「急な依頼」にどこまで柔軟に対応してもらえるかが、本当の意味での共生社会への鍵となります。
​デジタル化によって手続きが標準化される一方で、現場の運用が「予約がないと対応できない」という硬直したルールに縛られてしまわないかという懸念もあります。システムはあくまで手段であり、目的は視覚障害者がストレスなく、自分の意思で自由に移動できることです。
​5、共生社会の実現に向けて
介助依頼がひとつにまとまることは、社会に溶け込み働く私たちにとって大きな一歩です。しかし、ツールが進化するだけでなく、それを受け入れる社会や鉄道現場の理解が伴ってこそ、真のバリアフリーが完成します。
​今後、このサービスが「予定通りの移動」だけでなく「自由な移動」を支えるものへと発展していくことを切に願います。私たちアイズルームも、当事者の声を発信し続けることで、誰もが当たり前に外出を楽しめる社会を共に作っていきたいと考えています。
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