​先日、病院の帰りに少し慌ただしい経験をしました。
​私は普段、昼間は仕事やボランティアで活発に活動しています。大学病院に行く日はどうしても診察に時間がかかるため、朝からスケジュールを調整して臨みます。一方でクリニックの場合は、会社の近くに絞って17時に仕事を終わらせ、17時半からの診察を入れるようにしています。クリニックとはいえ診察には1時間ほどかかることが多く、その後に薬局へ駆け込む頃には、いつも18時半を回ってしまいます。そんな時、個人経営の薬局は少々時間を過ぎても柔軟に対応してくれるので、本当にありがたい存在です。
​実は現在、北小金南口駅前で再開発が進んでおり、あたり一帯が解体工事中です。以前使っていた薬局はそのエリアに含まれており、まるで家族のように親切で温かい対応をしてくれるお気に入りの場所でした。しかし解体に伴い移転となってしまったため、別の薬局を探す必要が出てきたのです。
​そんな折、偶然にも私が通っているクリニックの目の前に、以前の場所と同じような、新しくて小さな薬局ができているのを見つけました。数ヶ月前からその土地で営業を始めているようです。
​いつもは元気なスタッフの方々が迎えてくれるのですが、前回は閉店間際に駆け込んだ際、担当した男性スタッフの声に元気がなく、どこかやる気のないような印象を受けました。私は全盲なので相手の表情を見ることはできませんが、声のトーンや挨拶の仕方から、その時の雰囲気が伝わってきました。
​いつものように薬を頼み、本来であれば最後に自分で錠剤の最終確認をするべきだったのですが、その日は昼間の仕事が忙しく、同行してくれたスタッフに確認を任せてしまいました。
​ところが、家に帰ってから薬を確認してみると、いつも施されているはずの「一包化」がされていなかったのです。
​ここで、一包化という言葉に馴染みのない読者の方に向けて、その意味や役割について詳しく説明しますね。
​一包化とは、医師の指示に基づき、数種類の錠剤やカプセルを飲むタイミング(朝・昼・夕など)ごとに、ひとつの透明な袋へまとめてパッキングしてもらえるサービスのことです。
​どのような人が対象になるかというと、私のように視覚に障害がある人のほか、手が不自由で薬をシートから出すのが難しい方、認知機能の低下などにより薬の管理が難しくなった高齢の方などが挙げられます。医師は、患者が「自力での正確な服薬管理が困難である」と判断した場合に、この一包化の指示を出してくれます。
​一包化には、大きな役割が3つあります。
1つ目は、飲み忘れや飲み間違いを防ぐこと。
2つ目は、薬の紛失を防ぐこと。
3つ目は、服薬にかかる手間や心理的負担を減らすこと。
​私の場合、全盲ということもあり、毎回薬の粒を小さなパッケージから出していると、床に落として紛失してしまったり、数種類の薬をテーブルに並べているうちにどれを出したか分からなくなったりします。誰かのサポートを受けながら飲む方法もありますが、薬くらいは自分の力で、1人で飲みたいと思うのが本音です。一包化さえしていただければ、目が見えなくても間違うことなく、1人で忘れずに安心して飲むことができます。だからこそ、私にとって一包化は「防犯」ならぬ「服薬の安全を守るための必須の防壁」となっているのです。
​話を戻します。一包化がされていなかったことに対し、私は「あの男性担当者、たままま疲れていたのかな」と思いながらも、次からは違う薬局に変えようかと考えていました。
​それから1週間が過ぎた頃、薬局の女性スタッフから連絡が入りました。「一包化を忘れてしまっていましたよね。ご自宅まで薬を預かりに伺い、一包化をした上でお返しさせてください」という、とても丁寧な謝罪のお電話でした。そこまでしてもらうのはかえって申し訳ないので、「今度こちらからまた伺いますので、その時に残りの薬を一包化してください」とお願いすることになりました。
​一包化を忘れてしまった男性薬剤師の方は、私がギリギリの時間に行ったので本当に疲れていたのかもしれません。何か他に予定があって「こんな時間に来られても面倒だ、一包化の手間をかけたくない」と思ってしまったのか、あるいは体調が優れなかったのかもしれません。
​目が見えない私には顔の表情は読み取れませんが、数人で運営している小さな薬局だからこそ、中に入った瞬間からその場に元気がなく、やる気のなさが伝わってきてしまいました。そして最終的にこのような実務的なミスが起きてしまったのを経験し、やっぱり人間の内面や姿勢は、最初の「挨拶」にすべて表れるのだなと改めて痛感しました。
​その点、後から電話で謝罪をしてくれた女性の方は非常に明るく、これからの対応に期待が持てる素晴らしい人間性を持った方でした
​調剤薬局は医療機関の一部であると同時に、患者と向き合う「サービス業」という側面も深く持っています。ただ薬を機械的に渡すだけでなく、患者の生活や安全に寄り添う深い対応こそが、本当の意味でのサービスなのだと感じます。挨拶ひとつ、声のトーンひとつで安心感を与えることもあれば、不安にさせてしまうこともある。そんな人との繋がりの大切さを、今回の出来事から深く学んだ気がします。