皆様、こんにちは。福祉支援団体 EYSEROOM(アイズルーム)です。私たちが地域で日々向き合う様々な福祉の現場において、心身の健康や医療のあり方は決して切り離すことのできない最重要のテーマです。そこで本日は、日本人の死因第1位であり、多くのご家族にとっても極めて身近な問題である「がん治療」の最前線で今、何が起きているのかを深く掘り下げていきたいと思います。
国のがん対策基本法が成立してから20年という節目を迎える中、日本の主要ながん治療を牽引する全都道府県の拠点病院を対象とした最新の調査結果が公表され、大きな波紋を広げています。回答した病院の100パーセントが、この20年間で医療技術自体は間違いなく大きく進展したと評価している一方で、驚くべきことに、その拠点病院の約9割が「がんの薬物治療を専門とする医師が決定的に不足している」と訴えているのです。医療の質が向上したという光の裏側で、それを扱う人間が足りていないという深刻な影が浮き彫りになりました。
​この問題を医学的・医療的な見地からさらに深く分析すると、事態の根深さがよく見えてきます。現代のがん治療、とりわけ薬物療法は、従来のいわゆる抗がん剤のイメージを覆すほど劇的な変化を遂げています。分子のレベルでがん細胞を狙い撃ちにする分子標的薬や、患者自身の免疫力を利用してがんを攻撃する免疫チェックポイント阻害薬など、革新的な新薬が次々と登場し、生存率の向上に大きく貢献しています。
​しかし、これらの新しい薬剤は、高い治療効果をもたらす半面、これまでにない極めて複雑で重篤な副作用を引き起こすリスクと隣り合わせです。例えば、心筋炎や重症の肺炎、あるいは全身の免疫システムが暴走することによる多様な臓器障害など、予測が難しく、一歩間違えれば命に関わる副作用(irAE:免疫関連有害事象など)が報告されています。
​つまり、現代のがん治療における「名医」とは、単に薬を投与する医師ではなく、患者の全身状態を徹底的に管理し、いつ起こるかわからない牙をむく副作用を未然に防ぎ、あるいは迅速に消火できる高度な専門性を持った医師を指します。これに対応できるのが、日本臨床腫瘍学会などが認定を進める「がん薬物療法専門医(腫瘍内科医など)」ですが、現在国内の認定医は2000人に満たない数にとどまっており、新薬の普及スピードに医師の育成が完全に追いついていません。
​専門医が9割の病院で不足しているという事態は、単に「現場が忙しい」というレベルの話ではありません。最先端の治療を安全に受けることができるかどうかの地域格差に直結し、かつて社会問題となった、適切な治療を受けられずに病院を彷徨う「がん難民」を形を変えて再発させかねない危険性をはらんでいます。高度化した最先端医療という武器を、安全に患者の体に届けるための体制づくりと国による確かな後押しが、今まさに瀬戸際で求められているのです。
​高度な医療がすべての人に安全に行き届き、誰一人として取り残されない社会を創ること。それこそが、私たちが目指すべき未来の姿にほかなりません。最後になりますが、私たち EYSEROOM は、難病を抱える患者の皆様が安心して地域で暮らしていくための居住支援や、自分らしく社会と繋がり続けるための就労支援に全力を注いでいます。さらに、がん治療の現場をはじめ、あらゆる大手術において命の砦となる輸血用の血液を守るため、献血ボランティアの活動にも積極的に参加しています。医療や福祉の課題を地域一丸となって乗り越え、誰もが健やかに支え合って命を繋いでいける「共生社会」の実現へ向けて、私たちはこれからも真摯に歩みを進めてまいります。