福祉支援団体アイズルームの経営コンサルティングとして、日々就労支援事業所やグループホームの経営改善に向き合う中で、福祉の現場に潜む非常に深刻な課題があぶり出されてきました。事業所側の経営課題を解決していくプロセスで必ず直面するのが、利用者のご家族が負わされている過度な負担と、現場運用の限界という問題です。
​現在においても、多くのグループホーム(共同生活援助)では、土日になると利用者を自宅へ帰宅させる運用が当たり前のように行われているのが現状です。とりわけ、厚生労働省による令和6年度(2024年度)の報酬改定を経て以降、経営の効率化や人員配置の見直しが一層求められる中で、この「週末は自宅へ戻す」という慣習は改善されるどころか、多くの現場でより色濃く残っています。
​グループホームは本来、障害のある方が地域で継続して自立した暮らしを営むための「居住の場」であり、原則として土日を含めた365日を通じて生活の拠点となるべき制度です。しかし実際の現場では、週末の職員配置に伴う人件費の負担や人手不足、シフト構築の難しさから、週末の自宅帰宅を前提とした業務方針をとる事業所が少なくありません。その結果、事情を抱えて帰宅が困難なご家庭への対応が個別的になり、声を上げにくいご家庭ほど週末の介護負担を全面的に背負い込むという不公平が生じる要因となっています。送迎を行うにしても、お迎えや送り届けのために週末の貴重な業務体制が塞がれてしまい、現場の運用をさらに圧迫しています。
​また、利用者が発熱や突発的な体調変化を起こした際の対応も大きな課題です。グループホームは一般的な人員基準において、平日の日中や夜間の人員が限られた体制で運用されています。そのため、1人の利用者の緊急通院や付き添い看病が発生すると、他の利用者の安全や生活支援が維持できなくなる構造的な弱点を持っています。大型の障害者入所施設のように看護師や複数のスタッフが常駐する体制とは異なり、小規模なグループホーム単体では突発的な医療・看病ニーズを組織的に吸収しきれません。その結果、体調不良時にはまるで保育園のようにご家族へお迎えや対応を求めざるを得ず、「施設に預けていても、体調悪化時や土日にはご家族が仕事を休んだりプライベートを犠牲にしたりして対応しなければならない」という事態が慢性化しています。
​生活を支えるご家族の中には、経済的な事情から土日も働かなければならない方や、加齢により介護負担に耐えられなくなっている方も少なくありません。障害のある当事者が一人の大人として自立した地域生活を送るためには、ご家族の犠牲や無償のケアに依存し続ける構造から脱却する必要があります。
​アイズルームが目指す「持続可能で質の高い福祉経営」の観点からも、グループホームが経営の安定と支援の充実を両立し、ご家族の負担を根本的に軽減していくためには、次のような制度改革と経営モデルの変革が求められます。
​第一に、制度および報酬体系の再設計です。
週末利用や日中の生活支援、体調変化時の緊急対応に対して、事業者が十分な人員を配置できるよう、加算制度や基本報酬の単価を見直す必要があります。特に、突発的な発熱や通院に専任で対応できる緊急時対応の評価や、看護師・緊急要員を複数拠点で共有・派遣できる地域単位のバックアップ体制に対する制度的な裏付けが不可欠です。
​第二に、経営モデルの集約化と地域連携ネットワークの強化です。
一拠点のみの小規模な独立運営では、突発的な事態への人員の融通が利きません。近隣エリアで複数のグループホームを一体的に運営するハブモデルへ移行し、夜間や休日の緊急対応スタッフを集中管理・共有するオペレーションへ刷新することが有効です。さらに、地域の訪問看護ステーションや短期入所(ショートステイ)事業所との標準的な連携ルートを確保し、事業所単体で抱え込まない仕組みをつくることが経営の安定化に寄与します。
​第三に、「家族の支援」から「地域社会全体による生活基盤の保障」への意識転換です。
グループホームは一時的な預かり場所ではなく、障害を抱える方が生涯にわたって安心して過ごせる「我が家」でなければなりません。親なき後を見据えたとき、週末や体調不良時であっても施設側および地域インフラで生活が完結できる体制を整えることこそが、当事者とそのご家族に対する真の福祉支援となります。
​厚生労働省が掲げる「地域共生社会」の理念を絵に描いた餅で終わらせないためにも、現場の実態に即した制度の見直しと、事業所側の組織力強化・構造改革を一体となって進めていくことが求められています。