【自らの生い立ちと医療システム開発の足跡を重ねて読む、医療サスペンス小説『禁忌の子』が問いかける生命倫理と人間存在の深淵】

      

【自らの生い立ちと医療システム開発の足跡を重ねて読む、医療サスペンス小説『禁忌の子』が問いかける生命倫理と人間存在の深淵】

女性の方が病院で、CTスキャン検査を放射線技師の指示に従い撮影している画像です。
全盲となった今も、音声読み上げ機械フレックス・トークを相棒に、週に4冊ほどの本を耳で楽しむ生活を続けています。目が見えていた頃から変わらないこの読書習慣の中で、先日2日間で聴き終えたのが、第34回鮎川哲也賞を受賞した山口未桜さんの医療サスペンス小説『禁忌の子』です。
​著者の山口未桜さんは現役の医師であり、現場のリアルな空気感や医療技術の描写が緻密で非常に引き込まれました。作品は単なるミステリーにとどまらず、不妊治療、体外受精、精子凍結、そして出生の秘密といった現代社会が直面する生殖医療と生命倫理の問題を深く問いかけています。主人公の救急医が自分と瓜二つの遺体と出会ったことから動き出す物語は、科学の進歩と人間の尊厳についての深い洞察に満ちています。
​私がこれほどまでに医療系のリアルな物語に惹かれるのには、自分自身の歩んできた人生が深く関係しています。
小学生の時に髄膜炎を患い意識不明となって長期入院したことや、高校時代にスポーツで脊椎圧迫骨折を負ったことなど、幼少期から病院という場所は私の人生と切っても切れない縁がありました。医師を目指す道は頭脳や家庭の事情から叶いませんでした。母子家庭で育ち、高校卒業後は体調を崩した母を支えるために給与の良い肉体労働を選びました。
​しかし、医療への強い思いを諦めることはできませんでした。肉体労働(技術系)の仕事を経て独学でプログラミングを学び、やがて医療系システム事業を自ら立ち上げました。日立メディコの超音波診断装置やMRIのシステム受注を受け、それらの機器は現在も私が通院している北柏の慈恵医大柏病院に納品されました。
​現在、私は重度視覚障害者となり、かつて機器を納めたその病院へ患者として通っています。39年が過ぎても建物の配置は変わらず、目が見えなくなった今でも迷うことなく館内を歩くことができます。レントゲン技師という夢は形を変え、医療機器のシステム開発という形で結実し、その後もクリニック向けのマーケティングやレセプト機械を手がけて役員として国内外を飛び回りました。
​現在は赤字の福祉事業所の経営再建、行政や企業での研修、メディア出演やSNSでの発信など、福祉の現場で活動しています。波乱に満ちた半生の中で常に医療や福祉と隣り合わせで生きてきたからこそ、生殖医療の最前線と人間の葛藤を描いた『禁忌の子』のようなリアルな医療小説は、今も私にとって特別な感銘を与えてくれる大きな存在なのです。
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