​医療・介護の専門的な立場から地域社会を支える福祉支援団体EYESROOM(アイズルーム)です。
​近年、東京・大阪都心部などを中心に、十分な専門性を持たずに安易に開業する精神科・心療内科クリニックが増加し、大きな社会問題となっていました。どこにでもあり、短時間で手軽に受診できることから「コンビニ精神科」などと揶揄されることもありました。
​こうしたクリニックでは、患者様とじっくり向き合うことなく、わずか5分程度の面談だけで大量の薬を処方する「薬漬け」の治療が行われたり、根本的な解決に至らないまま通院を長引かせたりする事例が後を絶ちませんでした。さらに、保険診療だけでなく、効果が十分立証されていない高額な保険外治療(自由診療)を勧め、知識の乏しい若者たちに高額な医療ローンを組ませるような悪質なビジネスモデルも横行していました。
​しかし、このような不適切な精神科医療のあり方に対して、ついに国が動き出しました。2024年6月に実施された厚生労働省の診療報酬改定です。
​この改定では、これまで経営の柱とされていた「30分未満の短い通院精神療法」の点数が引き下げられました。特に精神保健指定医ではない医師による短時間診療の点数は大幅に減算され(315点から290点へ減算)、短時間で多くの患者様を診て薬を処方するだけの経営手法は成り立ちにくくなっています。また、不要な多剤処方に対する制限も一層厳しくなりました。安易な気持ちで開業し、利益だけを追求してきた精神科クリニックが淘汰される時代に入ったと言えます。
​さらに見過ごせないのは、一部の不適切なクリニックが退職代行業者などと結託し、安易に精神疾患の診断書を発行している現状です。本来であれば治療や生活改善によって社会復帰を目指すべきケースであるにもかかわらず、簡単に傷病手当金や障害手当、障害年金などの公的支援へ誘導してしまう事例が存在します。
​精神科医が適切な診断を行わずに公的助成を過剰に利用させる行為は、行政の貴重な財源を損ねるだけでなく、患者様本人の自立や社会復帰の機会を奪うことにもつながります。
​長年にわたり居住支援を行ってきた私たち専門的な立場から申し上げますと、病院の診察室で一度会うだけでは、患者様が抱える本当の病状や生きづらさの根本的な原因を見抜くことはできません。
​本来の精神医療や福祉支援とは、単に薬で症状を抑え込むことではないはずです。患者様のご自宅を訪問し、どのような環境で生活しているのか、近隣トラブルを起こしていないか、規則正しい生活ができているか、食事や洗濯などの身の回りのことが自分でできているかといった「生活の現場」まで全体を把握して初めて、本当の治療や支援がスタートします。
​救急病院に緊急入院した際、一時的に薬で状態を安定させても、退院後に生活環境が整っていなければ定期的な通院すら困難になり、結局は元の状態に戻ってしまいます。必要なのは、患者様と丁寧に向き合い、対話を通じて抱えている問題点を見出し、生活面から根本的に改善していくアプローチです。
​最新の医学論文を学び、学会にも積極的に参加して脳科学や精神医学のエビデンスを更新し続けることは、医師として当然の責務です。精神科疾患の増加という現代社会の課題を解決するためには、医師が常に学びを深め、生活支援を行う福祉機関と強固に連携していく必要があります。
​今後、社会から求められるのは、ただ薬を出すだけのクリニックではなく、生活の背景まで見つめてチームで支える真の精神医療です。不適切なクリニックが淘汰され、志を持った専門家が患者様を安全に守る構造をつくるために、私たちEYESROOMも居住支援の現場から声をあげてまいります。