【《ホテル暮らしとミニマリスト》スーツケース一つの自由な生き方から見えた「人の温もり」と「人生の価値」】

      

【《ホテル暮らしとミニマリスト》スーツケース一つの自由な生き方から見えた「人の温もり」と「人生の価値」】

YouTubeチャンネル「ミニマリストのお金事情」ホテルライクな生活の真実をイメージした画像です。
​YouTubeを眺めていたとき、ふと目に留まったひとつの動画がありました。「ミニマリストのお金事情」というチャンネルです。
​特定の賃貸マンションなどの家を持たず、65リットルのスーツケースひとつとバックパックだけで、世界中のホテルを渡り歩きながら暮らしているミニマリストです。事業であるAmazonのEC物販(せどり)を仕組み化・外注化し、PC一台あればどこでも仕事ができる環境を構築されています。仕入れの決済で貯まるクレジットカードのポイントやマイルを駆使し、マリオット系列の上級会員特典を活用してスマートに旅を続ける「サイドFIRE」のライフスタイルです。時折、1泊1000円以下のカプセルホテルにも滞在して金銭感覚を整えるなど、自分なりの価値観と合理性を持って人生を楽しんでいらっしゃいます。
​私自身、視覚障害者となり全盲として暮らす今、この方の生き方に非常に強い興味と親近感を覚えました。目が見えていたなら、一度は挑戦してみたい魅力的な職業であり、生き方だと感じます。
​世の中には「ミニマリスト」という生き方をする人が増えています。これは単に「物を減らして貧しく暮らす」ことではありません。自分にとって本当に大切なもの、必要な経験だけに意識と資金を集中させ、それ以外のノイズや無駄な所有を極力省くという「合理的な思考法」です。持ち物を減らすことで身軽になり、場所や時間、心の自由を手に入れることができる選択肢なのです。
​実は私自身も、人生60年のうち通算で約5年間ほどのホテル暮らしを経験してきました。
​かつて事業が絶好調だった時代、私は年間を通してグランドハイアットホテルに宿泊するような生活を送っていました。当時の私はミニマリストとは真逆の世界にいました。マンション、戸建て、果ては自社の工場にまで住処を構え、それぞれの場所に違う車を配置していたのです。
​しかし、そのような派手な時代が永遠に続くわけではありません。事業の波とともに家の数がひとつ、またひとつと減っていき、結果として「収入源からの強制的なミニマリスト」にならざるを得ない局面を経験しました。文字通りスーツケースひとつで人生をやり直したことが、一度や二度ではありません。
​さらにその後、私は全盲となりました。目が見えなくなると、服をたくさん所有していても自分でその姿を確認することができません。そこで現在の私は、生活を徹底的に合理化しています。
​スーツは同じブランド・同じ色のものを5着。靴下もビジネス用の黒い同じものを30組揃えています。これなら、仮にスーツの上下を間違えて組み合わせても全く問題ありません。靴下もすべて同じ種類であれば、洗濯後に左右のペアを探して揃えるという無駄な手間が一切なくなります。
​私がこだわりを持って使い分けているのは、白杖、遮光メガネ、帽子の3点だけです。これらは視覚障害者にとって安全と快適さを守るための欠かせない大切な道具であり、TPOや天候に合わせて選んでいます。不要なものを削ぎ落とし、本当に重要なものだけに絞り込むという点では、私もひとつのミニマリズムを実践していると言えます。
​また、広域メンテナンスの仕事をしていた過去の経験からも、ホテル暮らしのリアルな現場をよく知っています。ホテル暮らしと聞くと華やかに思われがちですが、実際にはコインランドリーを活用したり、急ぎのときは部屋のお風呂場で服を手洗いして夜のうちに乾かしたりといった工夫の連続です。京都の行きつけのホテルには部屋に洗濯機がついていて非常に重宝しましたし、心に余裕がある時期にはホテルのクリーニングサービスを利用することもありました。
​そして、ホテル暮らしの最大の魅力は「人との出会い」にありました。訪れる様々な都市には、それぞれ自分の自宅のように落ち着ける社交場や小料理屋があり、そこへ足を運ぶたびに新しい人との温かい出会いが生まれていました。
​現在、私は社会貢献としてボランティア活動に多く携わっており、様々なボランティア団体の方々と深く交流しています。活動の中で感じるのは、私と同じように「人に寄り添い、誰かの役に立つこと」を通して、自分の存在価値や居場所を確認している人がたくさんいるということです。
​自分のために自由に生きることも素晴らしいことですし、この方のように自分の価値観を貫いて生きる姿も魅力的です。一方で、人のことを思って生きる時間もまた、心が洗われる尊い経験です。
​同じボランティア活動をしていても、「ただ人に誘われたから」と目的意識を持たずに参加している人と、「自分の価値を見出し、誰かのために何かできることはないか」と一生懸命取り組んでいる人とでは、人生が得られる成果も充実感も全く違ってきます。
​人生の歩み方や考え方に、たったひとつの正解はありません。自由を求めて世界を旅する生き方も、身近な人に寄り添って生きる道も、それぞれに価値があります。
​しかし、どのような生き方を選んだとしても、私たち人間は決してひとりでは生きていけません。持ち物を削ぎ落としたミニマリストであっても、視覚を失った私であっても、あるいは旅先で出会う人々やボランティアで助け合う仲間であっても、人は互いに支え合い、関わり合うことで初めて「生きている意味」を実感できるのではないでしょうか。
​他者と深く関わり、思いやりを持ち、助け合って生きること。それこそが、どんな時代やどんな環境においても変わらない、人間の尊厳であり生きる目的そのものなのだと私は信じています。
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