​日本の食生活の変化や高齢化に伴い、大腸がんは身近な病気となっています。厚生労働省や国立がん研究センターの最新データをもとに、正しい最新情報と医療の知見を整理したうえで、障害当事者目線からの実情をお伝えします。
​第1章 大腸がんとは
​大腸がんは、結腸や直腸に発生する悪性腫瘍です。厚生労働省のがん登録統計によると、日本人が最も多く罹患(りかん)するがん(部位別罹患数第1位)となっています。
​食生活の欧米化による動物性脂質の摂取増加や食物繊維不足、飲酒や喫煙、運動不足などが主な発症要因として指摘されています。
​一方で、医療制度の違いによる国際的な傾向もあります。米国をはじめとする諸外国では、医療費の高額化を背景に「早期発見・予防」に重点が置かれてきました。特に大腸内視鏡検査によるポリープ切除などの普及により、罹患率や死亡率が低下傾向を見せた時期もあります。日本の場合は、定期的ながん検診の受診率向上や早期検査の徹底が今後の大きな課題とされています。
​症状と兆候
初期段階では自覚症状がほとんどありません。進行すると以下の症状があらわれます。
・便に血が混じる(血便・血便に伴う貧血)
・便秘と下痢を繰り返すなどの排便習慣の変化
・便が細くなる、残便感がある
・お腹がはる、腹痛がある、体重が減少する
​検診と検査
早期発見に有効なのが、40歳以上を対象に推奨されている年1回の「便潜血検査(2日法)」です。これは便に目に見えない血液が混じっているかを調べる簡単な検査です。この検査で陽性となった場合は、確定診断のために「大腸内視鏡検査(カメラ)」を行います。
​ステージと生存率
国立がん研究センターの集計データによると、大腸がんの5年生存率は早期で発見・治療できれば非常に高い水準となっています。
・ステージ1:90%以上
・ステージ2:80%台後半
・ステージ3:70%〜80%程度
・ステージ4(他臓器への転移あり):20%前後
このように、いかに早期の段階で発見するかが命を守る鍵となります。
​治療法(手術・その他)
治療の基本は、がん病巣をきれいに取り除くことです。早期であれば内視鏡切除で終了します。進行している場合は外科手術が行われ、近年では身体への負担が少ない「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」や「ロボット支援手術」が広く普及しています。進行度や切除部位に応じて、抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療を組み合わせて行います。
​第2章 視覚障害者と大腸がん
​ここからは、当事者の視点から見た大腸がんと検診の課題についてお話しします
​大腸がんの最も分かりやすいサインの一つは「便に血が混じっていること」です。しかし、全盲や重度の視覚障害がある場合、トイレの後に自分の便の色や血の混ざり具合を目で確認することができません。身体からの最初のサインに気づくことが構造的に難しいという問題を抱えています。
​さらに、行政から検診の案内(市区町村の受診券)が届いても、検査キットの採便作業自体が大きな壁となります。
現在の便潜血検査キットは、スティックの先で便の表面をまんべんなく擦り取り、専用の細い容器に収納する仕組みです。洋式トイレで目が見えない状態のまま、便の表面を的確に狙って擦り、小さな容器の口へ正確に入れる操作は、極めて難易度が高く不衛生になりやすい作業です。結果として、検診キットを持ち帰っても検査を断念せざるを得ないケースが少なくありません。
​また、大腸がんが直腸の肛門近くにできた場合や手術の影響により、本来の肛門を切除して腹部に「人工肛門(ストーマ)」を造設することがあります。ストーマを装着した当事者はオストメイトと呼ばれます。
​ストーマの管理には、装具の定期的な交換、皮膚の清拭、排泄物の処理、皮膚トラブルの目視チェックなど、細かな作業と清潔保持が求められます。視覚障害がある中でこれらを一人で衛生的に管理し続けることは非常に困難であり、周囲の手厚いサポートや専門的なケア指導が不可欠となります。
​発見の難しさから治療後の生活維持に至るまで、視覚障害者にとって大腸がんは特有の大きな障壁が存在しているのが現状です。
​福祉支援団体 アイズルームは、当事者団体として今後も皆様の健康と安心に役立つ情報をお届けしてまいります。疑問点や特集してほしい病気・テーマなどがございましたら、下部の問い合わせフォームよりお気軽にご意見をお寄せください。