【理想と現実のあいだで。全盲の私がたどり着いた、無理のない健康朝食】

      

【理想と現実のあいだで。全盲の私がたどり着いた、無理のない健康朝食】

柏の葉公園内のドトールコーヒーで、視覚障害者が白杖を方に掛けながら、コーヒーを飲んでいる画像です。

​毎日の朝食、皆さんはどうされていますか。
私の場合、現在の朝食は大きく分けて次の4つのパターンをローテーションしています。
​・玉子かけご飯と、ミネラルウォーター
・食パンにマーガリンを塗り、コーヒーに牛乳を少し入れたもの
・シリアルに牛乳をかけたもの
・バナナ2本と、牛乳
​正直なところ、これが100点満点の理想的なメニューとは言えません。私の本当の理想を言えば、やはり和食です。五穀米や麦ご飯にとろろをかけ、野菜がたっぷり入ったお味噌汁、様々なお新香、焼き魚に納豆。もし生まれ変わったら、毎朝そんな贅沢な朝食を食べたいものです。
​しかし、現実はそう甘くありません。朝からそこまでの準備をする時間はありませんし、毎日の食事にそんなにお金をかけるわけにもいきません。何より、全盲の私にとって、たくさんの食器を使うということは、その後の片付けや皿洗いが途方もなく大変になることを意味します。だからこそ、手軽にできる先ほどの4パターンに落ち着いているのが現状です。
​現在の健康状態に目を向けると、最新型の体重計での測定結果(数値自体)には大きな問題はないものの、どうやら体内のコレステロール値が高めのようです。ありがたいことに、たばこは元々吸っていませんでしたが、お酒をきっぱりとやめ減塩もしている為、高血圧は改善し、もう2年も降圧剤を飲まなくても済むようになりました。ただ、若干ですが糖尿病の傾向があるため、予防的に少しだけ薬を服用しています。幸い、現在の血糖値は安定しています。また、緑内障のために眼圧を下げる飲み薬と目薬が欠かせず、これが毎日のちょっとした負担(面倒な作業)になっています。さらに、仕事の都合上、昼食と夕食は外食が多くなりがちです。
​かかりつけの医師からは「炭水化物を減らして、少量のおかずを品数多く摂るように」と簡単に言われます。しかし、視覚障害を抱える身にとって、火を使ってフライパンで何品もおかずを調理するのは火災の危険が伴いますし、昨今のインフレで食材費が高騰する中、何種類もの食材を揃えるのは金銭的にも大きな負担です。障害や持病を抱えていると、医療の言う「理想」と生活の「現実」は大きくかけ離れてしまい、本当に難しいと感じます。
​そこで今回、管理栄養士の方の視点から、この「安くて、簡単で、体に良い食事」という難題について見解をいただきました。現実的なアプローチとしての正しい食事の在り方をご紹介します。
​栄養士からのメッセージ
​石原さんの現在の4つの朝食パターンは、全盲という状況における安全面や片付けの負担、そして経済性を考慮した、非常に合理的で工夫された選択です。火を使わず、食器も最小限に抑えられている点は素晴らしく、まずはこのベースを維持しながら、少しの工夫でコレステロールや血糖値の対策をしていくのが現実的です。
​4つのパターンの中で、現在の石原さんのお体に最もおすすめできるのは「バナナ2本と牛乳」および「玉子かけご飯と水」の組み合わせです。
​バナナには、糖質の吸収を穏やかにして血糖値の急上昇を抑える食物繊維や、余分な塩分を排出するカリウムが豊富に含まれています。また、玉子は「完全栄養食品」と呼ばれるほど良質なタンパク質やビタミンが豊富です。コレステロールを気にされる場合でも、近年の研究では食事から摂る玉子のコレステロールがそのまま血液中の数値に直結するわけではないとされているため、1日1個程度であれば神経質に避ける必要はありません。
​一方で、少し注意したいのは「食パンにマーガリンとコーヒー」の組み合わせです。マーガリンに含まれる脂質や、シリアルに含まれる人工的な糖分は、コレステロール値や血糖値に影響を与えやすいため、回数を控えめにするか、少しの置き換えを検討するとさらに良くなります。
​では、視覚障害をお持ちの方でも安全に、かつインフレの時代でも安価に実践できる「理想的な手抜き健康朝食」の提案です。キーワードは「火を使わない、包丁を使わない、食器は1つ」です。
​麦ご飯のフリーズドライやパックご飯の活用
理想とされていた「麦ご飯」や「とろろ」は、現在、電子レンジで温めるだけのパックご飯や、フリーズドライの製品が安価で手に入ります。これなら火を使わず安全です。
​缶詰や乾燥食材で、おかずの品数を疑似的に増やす
医師の言う「小皿をたくさん」を真に受けて調理する必要はありません。例えば、お椀に乾燥ワカメや大麦若葉の粉末、大豆の水煮(パックや缶詰のもの)をそのまま入れ、市販のインスタント味噌汁の素とお湯を注ぐだけで、火を使わずに具だくさんでコレステロールを抑える味噌汁が完成します。鯖(さば)や鰯(いわし)の缶詰は、開けるだけで良質な油(EPA・DHA)が摂れ、悪玉コレステロール対策に直結します。
​納豆や豆腐をプラスする
玉子かけご飯の玉子を、時にはパックの納豆や、スプーンで すくってそのまま食べられる豆腐に置き換えるだけで、調理の手間なく、血糖値の上昇を抑える植物性タンパク質を補給できます。
​障害を抱えながらの食事療法は、教科書通りの栄養論だけでは決して rational(合理的)に回りません。大切なのは、安全と利便性を最優先に確保した上で、市販の便利な加工食品や缶詰を賢く味方につけることです。完璧を目指すのではなく、現在の4パターンに「納豆を1パック足す」「シリアルを砂糖不使用のオートミールに変えてみる」といった、10秒でできる小さな引き出しを増やしていくことこそが、持続可能で最も健康に良い食事の在り方です。 
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