​神奈川県川崎市の運河に約8年間も放置され、近隣で海賊船と呼ばれていた遊覧船が、ついに川崎市の手によって強制撤去され始めました。この行政代執行にかかる費用はなんと約3300万円。しかも、過去の事例を見てもこの巨額の費用が所有者から回収できる見込みは薄く、実質的に国民の血税が使われる形になります。
​この事件は、単なる一企業のモラル欠如の問題ではありません。現在の日本の法律が抱える「水上の盲点」を明確に示しており、この教訓を今後の日本社会の法整備に生かすための重大な問題提起となっています。
​そもそも、なぜこれほど悪質な放置が平気で行われるのでしょうか。それは、車と船のあいだにある制度や罰則の圧倒的な格差に原因があります
​車の場合、持っているだけで毎年高額な自動車税が課され、定期的な車検を受けなければ公道に置いておくことすらできません。車検切れや不法放置には厳しい罰則が待っています。しかし船の世界はどうでしょうか。航行させず浮かべておくだけなら、毎年の保有税は原則としてかからず、船検切れに対する強力な取り締まりもありません。この「乗らなければ維持費がタダ」という制度の歪みこそが、日本全国の川や河川に無数の放置船を生み出す温床になっているのです。
​この現状を打破するためには、船に対しても車と同じような厳格な義務と重い罰則を持たせるべきです。
​まず、船を他人の土地や行政が管理する河川に不法放置した場合、一発で前科がつくような強い刑事罰や、巨額の罰金などの強い罪を科す仕組みが必要です。さらに、車と同様に定期的な診断や検査を完全義務化し、常に安全な走行状態を保っていることを証明させ、怠った場合は即座にペナルティを科すべきです。
​そして、日本の国家財政が非常に厳しい現状を鑑みれば、これは新しい財源(新税)の確保としても極めて有効な手段になります。
娯楽や余暇の釣り、レジャー目的で船を所有する行為は、生活必需品である車とは異なり、明確な贅沢品の範疇に入ります。特にこうした船を所有できるのは一定以上の富裕層が多いのですから、車と同等、あるいはそれ以上の高額な税金をしっかりと課するべきです。富裕層への課税強化は、社会的な公平性の観点からも理にかなっています。
​一方で、私たちの食を支える漁業の現場に配慮は欠かせません。漁船に関しては、仕事の道具であるため税金の仕組みを少々安く優遇するべきです。しかし、優遇するからといって管理を甘くしていいわけではありません。漁船に対しても登録や状態の管理は徹底して行い、業界全体で不正な放置を出さない体制を敷くことが求められます。
​このような船の放置問題は、単に地域の景観を損なうというレベルの話では収まりません。台風や地震といった災害の際には、固定されていない船が流されて橋に激突したり、堤防を破壊したりして、甚大な二次被害をもたらす凶器へと変貌します。
行政が何千万円もの税金を立て替えて撤去するような理不尽な事件を二度と繰り返してはなりません。1日も早く、車両と同じような厳格な法整備と税制改革が望まれます。