【全盲の私が音声ガイドで楽しむ映画「キングダム」と夜のお出かけ、そして未来の医療技術への夢】

      

【全盲の私が音声ガイドで楽しむ映画「キングダム」と夜のお出かけ、そして未来の医療技術への夢】

男性の視覚障害者が、映画館で音声ガイドをイヤホンで聞きながら、映画を楽しんでいる画像です。

​先日、流山おおたかの森の映画館へ、会社の若いスタッフたちと一緒に映画「キングダム」を観に行ってきました。
​私は全盲のため、映画を観るといっても映画館の「音声ガイド」を利用して耳で楽しむ形になります。この音声ガイドとは、登場人物の動きや表情、場面の情景、戦闘シーンの視覚的な状況などを、セリフや効果音の邪魔にならないよう絶妙なタイミングでナレーション解説してくれる素晴らしいシステムです。これがあるおかげで、目が見えなくても映画の世界観を肌で感じることができます。
​映画「キングダム」は、原泰久氏による大人気漫画が原作の実写化作品です。中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍を目指す戦災孤児の少年・信(しん)と、中華統一を目指す若い王・嬴政(えいせい)の熱い戦いと成長を描いた壮大な歴史スペクタクルです。
​実は以前、作中に登場する長澤まさみさんの大ファンだった時期があり、彼女が出演している「キングダム」の映画を一度観に行ったことがありました。今回はその続編ということで、再び劇場へ足を運んだ次第です。
​一緒に行った若いスタッフたちは、原作漫画の熱心なファンも多く、上映前後に「漫画のあのシーンが映画ではこう表現されていた」「ストーリーのここが違っていて面白かった」と大いに盛り上がっていました。私自身は、幼少期に父親がおらず男兄弟もいない環境で育ったため、家に漫画という文化が一切ありませんでした。そのため現実世界を実直に生きてきて、子供の頃から漫画を読んだ経験がありません。それでも、スタッフたちが楽しそうに作品の魅力を語り合う声を聞いているだけで、こちらまで嬉しい気持ちになります。
​映画館の利用システムについても、非常にありがたい仕組みがあります。一般的に夜間のレイトショーなどの上映は大人1600円ほどですが、障害者手帳を提示すると、私自身の入場料が1000円になります。さらに、私を誘導・サポートしてくれる同伴の介助スタッフも1000円で入場できるのです。2人合わせても2000円。通常の大人料金1600円を差し引いて考えると、実質的に私はわずか400円の負担で映画を楽しめている計算になり、福祉のありがたさを実感します。
​劇場の楽しみといえば、フードも欠かせません。流山おおたかの森の映画館のポップコーンは、この東葛地域にある映画館の中でも「一番美味しい」と評判です。少々お値段が高めなのはご愛嬌ですが、劇場内に広がる香ばしい香りとあの食感は、映画のワクワク感を何倍にも引き立ててくれます。
​作品自体は、迫力ある重厚な戦闘シーンが物語の約7割を占める大作です。音声ガイドが状況を丁寧に伝えてくれますが、激しいアクションが連続する映像主体のシーンは、全盲の私にとっては少し解釈のハードルが高い部分もありました。しかし、劇場の音響システムから響く大迫力の重低音や、剣が交わるリアルな音の臨場感は、耳から入るだけでも圧倒されるものがあります。また、心地よく冷えた館内の素晴らしい環境に身を委ね、贅沢な音に包まれながら、いつの間にか心地よいまどろみの中に引き込まれるという、映画館ならではのリラクゼーションのひとときも味わうことができました。映画に命を吹き込んだ制作者の方々の情熱が、音を通じてしっかりと伝わってきます。
​私にとって、映画館へ行くことの本質的な喜びは作品鑑賞だけではありません。全盲になってからは、夜に出歩く機会がほとんどなくなりました。目が見えないということは常に暗闇の中にいるようなものですが、実際の夜道はさらに危険が増します。私の暮らす千葉県東葛地域は、東京都心のように道が明るくなく、夜になると街灯が少なくなって真っ暗です。一人で白杖を頼りに歩いていると、後ろから来る車に気づかれずに接触されてしまう恐怖があり、18時を過ぎたら外出を控えるのが日常になっていました。
​だからこそ、若いスタッフたちに囲まれて夜の時間に外出すること自体が、私にとって非常に新鮮で特別なイベントなのです。みんなでポップコーンを買い、映画の迫力を共有し、上映後には夕食を取りながら会社の未来や仕事の夢を熱く語り合う。この豊かな時間こそが、何にも代えがたい宝物です。
​「キングダム」の壮大な物語はまだまだ続くようです。来年もまた、この大切なスタッフたちと一緒に、美味しい夜食と楽しい映画の時間を夜のお出かけとして楽しみたいと思います。
​そして未来に目を向けると、医療とテクノロジーの進化には大きな希望を感じています。世界一の富豪であるイーロン・マスク氏が率いる医療ベンチャー「ニューラリンク(Neuralink)」社は、脳内に高精度なICチップを埋め込み、コンピューターや外部機器と接続する革新的なブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の技術開発を進めています。この技術が進歩すれば、視覚障害者の脳の視覚野に直接映像信号を送り、原始的な形であっても再び画像として世界を見ることができるようになると言われています。
​あと10年もすれば、目が見えなくてもテクノロジーの力で見えるようになる時代が来ると私は信じています。そんな医療の劇的な進化に心から期待を寄せながら、今ある周囲の温かい繋がりと、五感で感じる日々の楽しさを大切に歩んでいきたいです。 
カテゴリー