私は、猫よりも断然、犬が好きです。
生まれてから今日まで、数えきれないほどの犬たちと人生を共にしてきました。
その中でも、3年ほど前に別れを迎えたトイプードルの「モカ」との日々は、私にとって忘れられない、宝物のような時間です。
​ティーカッププードルと見紛うほど小さかったモカは、生まれつき、てんかんの発作という重い病を抱えていました。
予防接種を受けることすら叶わず、毎月のように生死を彷徨うような激しい発作を繰り返す。
そんなモカと病院へ通い詰め、必死に命を繋ぎ止める日々が続きました。
​そんな過酷な状況を乗り越え、モカは13年という長い年月を、私の傍らで生きてくれました。
​家の中では、モカの自由を一番に考えました。
夜になれば、彼女は私のベッドに上がり、すぐ隣で眠りにつきます。
モカが少しでも心地よく眠れるようにと、大きなベッドを新調したこともありました。
胸にしこりが見つかり、腫瘍が日増しに大きくなっていった時は、胸が張り裂ける思いで決断を迫られました。
​「手術をすれば、そのまま命を落とすかもしれない。けれど、放置すればそれも命に関わる。」
​悩み抜いた末、私は手術を受けさせる決断をしました。
モカは、その大きな試練を見事に乗り越えてくれたのです。
​元気になってからは、たくさんの景色を一緒に見に行きました。
車を走らせて向かった京都旅行。
祇園と木屋町の間に流れる、あの美しい鴨川のほとりを二人で歩いたことは、今も大切な思い出です。
お台場海浜公園の潮風に吹かれ、葛西臨海公園の広い空の下で海を眺めたこともありました。
桜の季節になれば、薄紅色の花びらが舞う中、何度も一緒に桜を愛でました。
​当時、私の視力はまだ微かに残っていました。
左目はすでに光を失っていましたが、右目だけで、愛くるしいモカの姿を必死に追いかけ、その存在を確かに確認することができたのです。
モカが自由に、そして安全に駆け回れるようにと、庭一面に人工芝を敷き詰めた時の、あの弾むような喜び。
本当に、言葉では言い表せないほどキュートな存在でした。
​けれど、最後のお別れはあまりにも突然で、今も胸に刺さったままの棘(とげ)のようになっています。
​翌日の仕事のために家を離れ、会社の寮へ移動してしまったその夜に、モカは旅立ちました。
一番大切な瞬間に、私は彼女の傍にいてあげることができませんでした。
前日まで、苦しそうな息を吐きながらも、私のベッドの下で寄り添って寝てくれていたモカ。
あの日、あの大切な時間に、もっと何かできたのではないか。
​他界した今だからこそ、強く思います。
もっともっと一緒に遊びたかった。
美味しいものを食べ、美しい景色を共有し、二人の時間を刻みたかった。
核心に触れることはできませんが、モカは私と、本当は何をしたかったのだろうかと。
​愛くるしくて、どこまでも愛おしかったモカ。
彼女がくれた13年分の愛情を胸に、私はこれからも歩んでいきます。