​少子高齢化が急速に進む中、地方自治体は今、重大な岐路に立たされています。放置すれば人口は東京一極集中によって減少し続け、自治体の財政は確実に逼迫します。ここ松戸市においても、単年度で見ればすでに実質的な赤字に転じている可能性があり、抜本的な財政改革は待ったなしの状況です。財政が逼迫すれば、我々福祉団体をはじめとする社会保障予算や、地域で最も支援を必要とする弱い立場の人々への予算から削られていくことは火を見るより明らかです。
​こうした中、松戸市の未来を大きく変える可能性のあるニュースが報道されました。選挙を経て再選され、2期目に入った市川市の田中甲市長が、将来的に松戸市に声をかけ、合併によって人口100万人規模の政令指定都市を目指すという大きな構想を打ち出したのです。
​これに対し、松戸市の松戸たかまさ市長は、市民の歴史やアイデンティティーへの配慮から慎重な姿勢を示しつつも、将来的な可能性そのものを完全に否定はしていません。まずは広域連携を積み重ね、丁寧な議論が必要だというスタンスをとっています。
松戸市も市川市もそれぞれ約50万人の人口を抱える都市であり、この2つの市が一体化すれば100万人を超える大都市となり、政令指定都市の条件を十分に満たすことができます。松戸市民の一人として、また地域の福祉を守る立場として、この合併構想が松戸市にとってプラスになり、現状の厳しい財政状況を改善できるのであれば、前向きに推進すべきではないかと考えます。
​ここで、2市が合併して政令指定都市になった場合の具体的なメリットとデメリットを詳しく整理し、議論の材料としたいと思います。
​まず、メリットについて深く掘り下げてみます。
第一に、財政基盤の圧倒的な強化と経済規模の拡大です。100万人都市となることで、国から交付される地方交付税などの財源が大幅に増えるだけでなく、都市としてのブランド力が一気に高まります。これにより企業誘致や新たなビジネスの創出が活発になり、市独自の税収基盤が強固になります。
​第二に、福祉と医療サービスの飛躍的な向上です。政令指定都市になると、これまで千葉県が持っていた強力な権限や財源が市に直接移譲されます。これにより、県の判断を待つことなく、独自の障がい者福祉支援、高齢者ケア、児童相談所の設置などの政策を、松戸と市川の地域の実情に合わせて迅速に決定し、予算を投入できるようになります。財政に余裕が生まれることで、我々福祉団体への予算が守られ、弱い立場の人々をより手厚く守るセーフティネットを構築することが可能になります。
​第三に行政のスリム化と効率化です。2つの市役所の重複する管理部門を集約し、無駄な経費を徹底的に削減できます。さらに、老朽化が進む松戸市役所の建て替え問題についても、非常に大きな解決策が見えてきます。たとえば東京都豊島区役所のように、新庁舎の上層階を分譲マンションなどにして民間資金を活用すれば、建設費を最大限に抑えることができます。分譲利益で建設コストを相殺し、実質的な市負担を抑えながら、防災に強い100万人都市にふさわしい頑丈な新庁舎を建てることが可能になります。
​第四に、地理的な優位性と人口流入の促進です。両市は江戸川沿いに隣接しており、ともに東京都と境界を接しています。現在、東京のマンション価格や土地価格は高騰を続けており、一般のサラリーマン世帯が都内で住宅を購入することは極めて困難です。しかし、松戸や市川であれば、現役の働く世代でも十分に手が届く価格帯で住宅を持つことができます。都心へのアクセスも非常に良好で、下手に東京の多摩地区から都心へ通勤するよりも、松戸や市川から通うほうがはるかに近くて快適です。100万人規模の政令指定都市という強みを活かしてこの魅力を全国に発信すれば、若い現役世代や子育て世代の流入を一気に加速させることができます。
​一方で、デメリットや課題にも目を向ける必要があります。
最大の懸念点は、都道府県から移譲される膨大な業務に対して、国から支給される財源が必ずしも十分ではないケースがあるという点です。過去の事例を見ても、道路管理や大規模なインフラ業務の引き継ぎによって、かえって財政負担が重くなった都市もあります。また、行政組織が巨大化することで、意思決定がマニュアル化され、これまで地域密着で行われてきた細やかなケアや、泥臭い草の根の福祉サポートが届きにくくなるリスクもあります。さらに、新しい区役所の配置や公共施設の統廃合、職員の給与体系の統合などを巡り、内部の調整に多大な時間とエネルギーを費やしてしまう可能性もあります。
​しかし、これらのデメリットを恐れて現状維持を続けていては、少子高齢化の荒波に飲み込まれ、財政赤字から福祉の現場が崩壊していくことは目に見えています。神奈川県には横浜市と川崎市、相模原市という3つの政令指定都市が存在します。千葉県内においても、千葉市に次ぐもう一つの強力な経済・行政の拠点が誕生することは、県全体の発展にとっても極めて有意義なことです。
​前例踏襲の物理的な拡大に終わらせるのではなく、AIやデジタル技術を徹底的に駆使して効率化を進めつつ、上層階マンション型庁舎のような賢い投資を行い、財政基盤を強固にする。これこそが、これからの松戸市が生き残るための攻めの一手になるのではないでしょうか。
​未来の松戸市を守り、弱い立場の人々を切り捨てない持続可能な街をつくるために、私たちはこの合併・政令指定都市構想について、感情論を排し、財政改革の切り札として前向きかつ真剣に議論を深めていく必要があります。