今から約20年ほど前のことです。私は沖縄に9ヶ月ほど滞在していました。
当時勤めていたのは、東京の銀座に本社を置く医療系レセプト(診療報酬明細書)開発の会社です。韓国での事業展開が一段落したタイミングで、沖縄支店長としての打診を受けました。
​私に課せられたミッションは、沖縄支店の経営改善です。
銀座本社で活躍していた営業の精鋭部隊から2人を引き連れ、意気揚々と沖縄へ乗り込みました。
​拠点として最初に選んだのは、那覇市の国際通りにも近い安里(あさと)というエリアです。
安里は昔ながらの栄町市場をはじめとするディープなレトロ感と、国際通り沿いの華やかさが隣り合わせになった非常に魅力的な街です。ここに月15万円のマンスリーマンションを借り、東京から連れてきた営業マン2人と共同生活をスタートさせました。安里からはオフィスまで徒歩で通うことができ、生活の立ち上がりとしては非常に便利な場所でした。
​沖縄支店は、那覇の有名な歓楽街である松山にも近く、官庁街の久茂地などにもほど近いコンパクトなオフィスでした。
沖縄の温かい風土もあってか、現地スタッフはみな穏やかで本当に良い人たちばかりでした。しかし、ビジネスの現場としては甘やかすわけにはいきません。
​わざわざ銀座から乗り込んだ以上、徹底的な経営改善と営業努力を重ねました。
オフィスでの仕事にとどまらず、マンスリーマンションに戻ってからも「どうやったら契約を確定させられるか」というクロージングの手法について、連日連夜チームで熱い議論を交わしました。その甲斐あって、短期間で沖縄支店は本土の売り上げを追い抜くほどの驚異的な成果を上げることができたのです。
​目標を達成した週末には、海へ飛び出し、青い空と青い海を眺めながら何も考えずにぼーっと過ごす。そんなメリハリのある時間を過ごしたのも良い思い出です。
​滞在から半年が経つ頃、高額だったマンスリーマンションを引き払い、那覇空港の近くにある住宅地、小禄(おろく)へ引っ越すことにしました。
小禄は那覇市内でも区画整理が進んだ静かで落ち着いた街並みが広がるエリアで、大型ショッピングモールや綺麗な住宅が立ち並ぶ住みやすい地域です。この引っ越しに合わせて、システムメンテナンスを担当していたサーファーのサポートスタッフも同居することになりました。
家賃は以前の半額になりコストパフォーマンスは抜群でしたが、以前の安里と違って徒歩通勤はできません。全員で1台の車に乗り込んで車通勤を始めましたが、毎朝の那覇市内の通勤ラッシュと渋滞には本当に苦労させられました。
​私たちの主な顧客層は医師のみなさんです。
クライアントであるお医者様が、仕事と観光を兼ねて本土から沖縄を訪れることも多くありました。そこで、行きつけとなっていた松山の高級クラブでの接待や、沖縄市内の観光案内も私の重要な仕事の一部となりました。
​お医者様はこだわりが強く細やかな配慮が必要な方も多いため、宿泊するホテルのグレードから巡る観光地まで、綿密に戦略を立てておもてなしをしなければ気分を損ねてしまいます。中国や韓国での取締役としての仕事の際には、接待したお医者様方をそのまま海外へお連れして現地をご案内することもありました。
​がむシャラに働いて営業成績が上がった日は、歓楽街の松山で営業スタッフと朝まで祝杯をあげました。沖縄の夜は本当に暑く、冷えたオリオンビールや泡盛(島焼酎)を飲んでも、次から次へと汗となって流れていってしまったのをよく覚えています。
​沖縄での過酷ながらも充実した暮らしを満喫し、当時は「老後は沖縄で過ごすのもいいな」という夢を抱いていました。
​しかし、人生は何が起こるかわかりません。
まさか自分が60歳で全盲になるとは、当時は思いもしませんでした。
​目が見えなくなって改めて気づいたのですが、沖縄の街は白杖をついて歩くにはなかなか大変な場所でもあります
特に印象的だったのはバスのルールです。沖縄のバスは、バス停に立っているだけでは目の前を徐行して走り去ってしまうことがあります。同じバス停を数多くの系統のバスが通過するため、自分が乗る意思をしっかりと身振りなどで示さないと止まってくれないという、現地ならではの特別な慣習があるのです。
​私が住んでいた当時はちょうどモノレール(ゆいレール)の建設工事が進んでいる最中でした。現在はモノレールが全線開業して便利に移動できるようになっているので、街のバリアフリーや移動のしやすさも少しずつ変わっているかもしれません。
​だからこそ、まだ沖縄に行ったことがないという方がいらっしゃれば、若いうちに、そして自分の体で自由に泳げるうちに、ぜひ足を運んでほしいと切に願っています。特別なダイビングライセンスがなくても、シュノーケリングだけで息をのむような美しい海の世界を楽しめます。
​最後に、これから沖縄を訪れる方へ向けて、私がおすすめする「沖縄の楽しみ方 5選」をご紹介してこの記事を締めくくりたいと思います。
​シュノーケリングで体感する美ら海
特別な技術や大がかりな装備がなくても、シュノーケリングセット一つで透明度抜群の海へ飛び込めば、カラフルな熱帯魚やサンゴ礁の世界が広がります。体を動かせる若いうちに絶対に体験しておくべき魅力です。
​歓楽街・松山の夜と泡盛・オリオンビール
昼間の観光だけでなく、夜の沖縄も魅力的です。活気あふれる松山の街で、地元の美味しい料理とともに冷えたオリオンビールや味わい深い泡盛を嗜む時間は、大人の沖縄旅の醍醐味と言えます。
​安里・栄町市場のレトロなディープ散策
国際通りの華やかさから一歩足を踏み入れ、歴史感じる安里の栄町市場周辺を歩いてみてください。昼と夜で雰囲気がガラリと変わり、地元の人々の温かい人情とディープな沖縄の風情を感じることができます。
​国道沿いをドライブしながら楽しむ沖縄の渋滞と風景
那覇市内の朝夕の渋滞は大変ですが、車窓から見えるガジュマルの木々や南国特有の街並み、ふと見える青い海を眺めながらドライブする時間は、本土では味わえないゆったりとした時の流れを感じさせてくれます
​開発が進むモノレール(ゆいレール)沿線の街歩き
那覇空港から首里方面、さらに浦添方面へと伸びるモノレールに乗って、高台からの景色を眺めながら沿線の街を巡るのもおすすめです。車とは一味違った角度から那覇の街並みを一望できます。
​かつて熱い情熱を持って駆け抜けた沖縄の街。みなさんもぜひ、自分だけの素敵な沖縄の思い出を作りに出かけてみてください。