​皆さんは日々の仕事や生活の中で、周囲との人間関係がうまく巡っていると感じているでしょうか。
​私自身、20歳で自らベンチャー企業を立ち上げて経営の舵を取り、その後は上場企業の役員として組織の重責を担い、さらには様々な福祉関係の非営利団体にも携わってきました。常に複数の領域に身を置き、多様な意見に耳を傾けながら自分自身を鍛え直す努力を続けてきた人生です。現在は「アイズルーム」において、困難を抱える個人や事業者の課題解決、そして福祉支援の活動に力を注いでいます。
​こうした歩みの中で痛感しているのは、心地よい関係の中に留まり続けることの危うさです。
​同じ思考を持つ仲間、趣味を同じくする友人、あるいは同世代の人たちだけに囲まれて組織を作ったり行動したりすることは、確かに精神的にも楽です。波風が立たず、居心地も良いでしょう。一人の個人として、平穏で慎ましい幸福だけを求めるのであれば、それも一つの生き方です。
​しかし、もしあなたが企業や団体で本物の成果を出し、人として大きく成長したいと願うのであれば、その温室から一歩外へ出なければなりません。
​自分とは異なる意見を持つ人と真向からぶつかり合い、対話を重ね、コミュニケーションを通じて考えを磨き合う。その摩擦の先にしか、人間的・組織的な成長はありません。これは仕事の組織づくりにとどまらず、男女の関係であっても、国と国との国際関係であっても、すべて根底は同じです。
​性別の違いも、国籍の壁も、育ってきた環境や宗教観、価値観の違いもすべて飛び越えて、多様な人々と言葉をぶつけ合わせながらも、同じ一つの方向を目指して進むこと。これこそが、物事を前に進めるための真の力となります。
​若くてもこれができる人はしっかり成果を出しますし、どれだけ年齢や経験を重ねていても、過去の成功体験が重荷となって頭が固くなり、柔軟な対応ができなくなってしまう人も多く見受けられます。新しいイノベーションや変化を生み出そうとするとき、従来の経験や技術の差が、かえって変化を阻む足かせになることすらあるのです。
​だからこそ、常に新鮮な気持ちを持ち続ける必要があります。これからの時代をどう生き抜くべきか、どのような変化に対応していくべきなのかを常に自問自答しなければなりません。逃げずに他者と関わり、自分の考えを自分の言葉で的確に表現する能力を磨くこと。それこそが、時代を生き抜くために重要なビジネスセンスです。
​また、覚えておいてほしいのは「多数決が常に正しいわけではない」ということです。みんなが賛成したからといって、その選択が正しい答えである保証はどこにもありません。
​若い人たちに強く伝えたいことがあります。自分の力を決して過小評価しないでください。意見が対立したからといって、その場から逃げ出さないでください。自分と違う考えにこそ、素直に耳を傾けてほしいのです。
​人間の想いは多様であり、自分の思い通りに人生が進むことなどまずありません。しかし、自分の中にブレない強い芯を持っていれば、どれほど思考の異なる人間であっても、共通の目標に向かって共に立ち向かうことができます。
​相手の不満を言ったり、いない場所で悪口を言ったりすることは簡単です。しかし、どれだけ裏で悪く言ったところで、相手も状況も何一つ変わりません。何の解決にもならないのです。
​せっかく人間には「言葉」という素晴らしいツールが与えられています。陰口で済ませるのではなく、言葉を通じてとことん話し合うこと。その粘り強い対話のプロセスがあってこそ、導き出される最善の結果が存在します。
​この哲学を裏付ける歴史的な知見として、古代ギリシャの哲学者ソクラテスが実践した「対話術(問答法)」という考え方があります。ソクラテスは、互いの意見の違いを対話によって突き詰め、問いを重ねることで真実に近づこうとしました。また、現代の組織論や経営学においても、同じ意見ばかりが集まる同質的なチームよりも、多様な価値観や異なる視点がぶつかり合う多様性のある組織の方がより高いイノベーションと強い解決力を生み出すことが証明されています。異なる存在と向き合う摩擦こそが、人間を最も成長させる触媒なのです。
​私がいま取り組んでいる「アイズルーム」での福祉支援の活動も、まさにこの対話の連続です。相談に訪れる方々の背景や置かれた環境、考え方は一人ひとり全く異なります。時に理解が難しい状況や厳しい課題に直面することもありますが、決してそこから逃げず、言葉を尽くして向き合うことで、一つひとつ解決の道を探っています。
​意見の対立を恐れず、異なる考えを持つ人と真っ直ぐ言葉を交わしてください。対話から逃げずに立ち向かった経験は、必ずあなたの人生を支える強靭な軸となります。