【全盲のリーダーが挑む組織改革の光と影〜デジタル化への第一歩と立ちはだかるパソコンの壁〜 】

      

【全盲のリーダーが挑む組織改革の光と影〜デジタル化への第一歩と立ちはだかるパソコンの壁〜 】

視覚障害者(弱視)50代の男性がデスクトップパソコンを使用し仕事をしている画像です。

​昨日、土曜日の朝は曇り空。本来であれば、お休みの日でした。11時過ぎからは、ロサンゼルス・ドジャース対エンゼルスの試合が予定されており、最近絶好調の佐々木朗希投手が先発することになっていました。私は、自宅の事務所でコーヒーを飲みながら、YouTubeのラジオ中継でこの一戦をゆっくり楽しもうと、くつろいだ時間を過ごしていました。
​しかし、そんな穏やかな時間に、松視協(松戸市視覚障害者協会)の新会長である大脇さんから一通のメールが届きました。少し嫌な予感を抱きながらGmailを開くと、「急ぎで公共団体に提出する重要な書類を編集更新し、2部プリントアウトしてほしい」という依頼でした。
​実は、大脇さんは全盲であるにもかかわらず、前日からパソコンと格闘し、この資料の基本文書データを打ち込んでおられました。途中、メールで何度か情報の確認があったため、何時間もかけて本当に粘り強く頑張っているのだと、私も頭が下がる思いでいたところでした。その大脇さんが苦労して作成したテキストデータ(メール)が、私の元に送られてきたのです。
​松視協は今期で49期を迎える歴史ある組織ですが、主に全盲の当事者集団ということもあり、これまでなぜかほとんどの業務が手書きで進められてきました。驚くべきことに、今の時代にあっても帳簿すら手書きだったのです。
​こうした古い体制を刷新すべく立ち上がったのが、大脇新会長です。大脇さんは全盲であってもパソコン入力ができるため、組織のデジタル化を強力に推進しています。ただ、現在は大脇さんのプリンターが故障しているため、先日から副会長である私が最終的な文章構成とプリントアウトを引き受けています。
​大脇さんから送られてくるのは、テキストデータによる「ベタ打ち」の状態です。項目と項目の間がハイフン記号などで繋がれており、そのままでは公式な書類として扱えるものではありません。これをワードやエクセルのデータに整える必要がありますが、ここに大きな壁が立ちはだかります。
​私は元システムエンジニア(SE)ですので、かつて晴眼者(目が見える人)だった頃なら、こうしたデータ処理や書式設定は30分もあれば簡単に終わる作業でした。しかし、現在は私も全盲となり、状況が一変しました。昔なら30分で打てた入力に2時間もの時間がかかってしまいます。さらに、文章全体のバランスを整える視覚的な作業が極めて困難です。AIアシスタントの入力と音声読み上げソフトを頼りにしているため、いくらフォーマットを指定しても、全体の配置や余白のバランスを自分で確認して調整することができないのです。
​その上、昨日は自宅の事務所だったため、小型プリンターで出力することになったのですが、Wi-Fiの接続設定がうまくいかないというトラブルも重なりました。
​テキストのベタ打ちデータをワードに整え、Wi-Fiを経由してプリントアウトする。目が見える人であれば、トラブルを含めても1時間程度で終わるであろう作業に、私は結局3時間も費やすことになってしまいました。
​最終的には、どうしても視覚的な確認が必要になり、休日の土曜日であるにもかかわらず、自社のサポートスタッフを自宅に呼び出して文章全体のバランスを確認してもらいました。申し訳ない気持ちから、帰り際にミスタードーナツを二つ買って手渡したのですが、スタッフからは「休日に呼び出されて、ドーナツ二つでは割に合いませんよ」と爆笑されてしまいました。
​本当に歯がゆい思いです。目が見えてさえいれば、何一つ問題なく1時間で終わる仕事なのです。目が見えないために、入力には何倍もの時間がかかり、文章の確認はすべて音声読み上げに頼らざるを得ません。さらに、プリンターに紙が詰まっただけでも、エラーの原因を視覚的に把握して回避することが困難です。その都度、状況をスマートフォンで写真に撮り、AIアシスタントに尋ねながら、一つ一つの問題を執念で解決していくしかないのが現状です。
​1日も早く、松視協の活動をサポートしてくれる、パソコン操作が可能な弱視(ロービジョン)の方、もしくは晴眼者のボランティアスタッフを見つけなければ、私の休日はいずれ完全に消えてしまうでしょう。松視協の活動はあくまでボランティアです。これ以上、自分の会社のスタッフをプライベートな時間まで巻き添えにするわけにはいきません。
​それでも、私たちがこの苦労を重ねるのには理由があります。松視協の古い体制を改革し、すべてをデジタル化することで、真に機能する組織に生まれ変わらせたいからです。
​明るい兆しも見え始めています。大変嬉しいことに、この5月から正会員や賛助会員になってくださる方が少しずつ増えてきました。私たちの挑戦に共感し、支えてくれる仲間が増えていることは、何よりの励みです。
​ボランティア精神を持ち、パソコンを使って私たちのデジタル化を支えてくれる弱視の方、もしくは晴眼者スタッフが見つかるまで、まだまだ泥臭い苦労は続くと思います。しかし、新会長の大脇さんと共に、この改革の手を緩めることなく、一歩ずつ前へ進めてまいります。
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