​10年ほど前から目に異常を感じ始め、令和元年の10月に視覚障害者として身体障害者手帳の交付を受けました。手帳を手にした当初は弱視(ロービジョン)の状態だったため、自分が経営する会社のスタッフに必要な時だけサポートしてもらいながら、仕事は順調に続けることができていました。
​ところが、約2年前から状態が進行し、現在は全盲に近い状態となっています。右目の中心にほんの少しモヤがかかる程度で、目の前にいるのが人間なのか、あるいは熊なのかすら判別がつきません。ただ眩しい光の中に影がうっすらと見えるだけという、深い色の困難な状況に直面することとなりました。
​このような状態になると、外出の際には「同行援護(ガイドヘルパー)」の力がどうしても必要になります。同行援護とは、視覚障害者が外出する際に、移動の援護や代筆・代読、トイレの誘導、食事の介助など、安全に目的地へたどり着き、外の世界を楽しむためのすべてのサポートを行う公的な福祉サービスです。
​特別な資格を持たない社内のスタッフでは、移動の際、どうしても注意が散漫になってしまい、円滑で安全な移動を行うことは非常に困難です。しかし、この公的なガイドヘルパー制度は、会社の業務(営利目的の仕事や通勤)には利用できないという厳しいルールがあります。
​同行援護に必要な資格(同行援護従事者研修・一般課程)は、約4万円ほどの費用を払い、4日間(計20時間)の講習を受ければ取得することができます。会社でその費用を負担してスタッフに資格を取らせればいいのではないか、と思われるかもしれません。しかし、それは車の免許と同じで、資格を持っているだけでは「やっとスタートラインに立てた」という段階に過ぎないのです。頭の中で理解していることと、現場で実践することは全く違います。
​未経験の方がプロとして通用するようになるには、最低でも6ヶ月間、週に4回程度は同行援護の現場に入り、経験を積む必要があると私は考えています。たとえ6か月の経験があったとしても、ただ「歩く」という目的をこなすだけで、相手を思いやる気持ちがなければプロとは言えません。
​心のないサポートでは、歩行中の段差を見落としてしまったり、周囲の美しい風景を言葉にして伝えることができなかったりします。私たちのように、全く見えない暗黒の世界を歩く者にとって、ガイドヘルパーの方のスキルや人間力は、その一歩一歩の安心感を大きく左右します。だからこそ、素晴らしいヘルパーの方に巡り会えたとき、その存在のありがたさが身に染みてわかるのです。
​私は外出する際、1日平均して7時間という長時間のサポートを依頼しています。短い時間では、ガイドヘルパーの方の移動効率や日当の面で心苦しい部分があるからです。現在、私の日常を支えてくださっている5名の素晴らしいガイドヘルパーの方がいらっしゃいます。
​彼らは、電車やバスに乗る際にも的確な指示を出してくれます。そして、ただ目の前の風景を説明するだけでなく、そこに一言を添えて、最近の出来事や経験をおもしろおかしく話してくれるのです。
​目が見えている晴眼者の皆さんは、歩いている時、無意識のうちに膨大な情報を得ています。すれ違う人の表情、歩き方、建物の美しさ、おいしそうな飲食店。それらの風景を自然に楽しみながら歩いていることでしょう。
​しかし、私たち全盲や弱視の人間には、周囲の景色が見えません。「目の前の電柱にぶつかるのではないか」「車道にはみ出して車に轢かれるのではないか」という、常に死と隣り合わせのような恐怖を抱えながら歩いています。ガイドヘルパーの方の素晴らしいナビゲートがあるからこそ、その時だけは恐怖を忘れ、目が見えていた頃のように、周囲の情報を的確に把握して心から歩くことを楽しめるのです。
​私が出会ったプロのガイドヘルパーの仕事には、3つの素晴らしい要素があります。
第一に、的確な声掛けにより安全面への配慮が徹底していること。
第二に、視覚障害者の立場に立った、会話の心の通わせ方やおもしろさがあること。
第三に、普段からアンテナを張り巡らせ、「どのような場所に行けば、目の見えない人が心から楽しめるか」を常に考えてくれていることです。
​晴眼者であれば、自分の足でどこへでも行けますが、私たちは誰かの力を借りなければ外の世界へ一歩も踏み出せません。もちろん、すべての生活を誰かに依存しているわけではありません。先ほどもお伝えした通り、仕事の場ではこの制度を使えないため、私は日々の通勤や顧問先・クライアントへの移動には白杖を一本携え、完全に一人で移動しています。
​ですから私にとって、プライベートや社会貢献活動の時間に寄り添ってくれるガイドヘルパーの方は、単なる移動の付き添いではなく、まるで「秘書」のような誇り高き存在です。私が取り組んでいる松戸市視覚障害者協会での活動、日本赤十字社での献血支援、そして福祉支援や居住・就労サポートなどの社会活動は、彼らの支えがあって初めて成り立っています。
​このブログを読んでいる皆さんにお願いがあります。ぜひ、インターネットなどで地域の同行援護サービスについて調べていただき、ガイドヘルパーの研修を受けて、私たちのサポートに力を貸していただけないでしょうか。
​現在、日本全国の多くの地域で、ガイドヘルパーのスタッフが圧倒的に不足しています。このお仕事は、自分の空いた時間を有効に活用でき、様々な人と深く触れ合うことができる素晴らしい仕事です。まさに、自分自身の「人間力」が試され、磨かれる場所でもあります。
​人への心遣いを大切にし、誰かの人生を支えることで、自分自身も大きな幸福感を得られる。そんな温かい心を持った方であれば、まずは資格を取っていただき、あとは現場で失敗を繰り返しながらチャレンジしていくだけです。スタートの壁は、4万円ほどの研修費用だけ。健康面に問題がなく、1日に1万歩ほど元気に歩く体力があれば、挑戦する権利は誰にでも開かれています。
​最後に、文章の中で一部厳しいことも書きましたが、私のこのブログは、多くの視覚障害者の仲間や、現役のガイドヘルパーの皆様も読んでくださっています。
​私はこれまで、たくさんのガイドヘルパーの方々から、数え切れないほどの幸せをいただきました。一緒に過ごす中で楽しいお話をたくさん聞かせていただき、他の視覚障害者の方がどのような趣味を持ち、どのような人生観を持って前を向いて生きているのかという、何よりも大切な情報を、ヘルパーの方の言葉を通して毎日のように教えていただいています
​ガイドヘルパーの皆様には、心からの感謝を伝えたいと思います。皆様が隣にいて、私の福祉活動やボランティアという非営利活動を支えてくださるからこそ、私は毎日をこれほど楽しく、エネルギーに満ち溢れて生きていくことができます。
​私から見れば、ガイドヘルパーのスタッフの皆様は、私たちにとっての「お医者さん」や「看護師さん」と同じような存在です。社会になくてはならない存在であり、私たちの心を健康にし、人生に深い幸福感を与えてくれる。同行援護とは、それほどまでに誇り高く、素晴らしいお仕事なのです。いつも本当にありがとうございます。そして、この光の輪がさらに地域に広がっていくことを、心から願っています。