【声なき悲鳴を抱きしめて 孤立する母親を救うために社会が今変えるべきこと】

      

【声なき悲鳴を抱きしめて 孤立する母親を救うために社会が今変えるべきこと】

若い女性が悩みを抱えもがいている画像です。

妊娠から出産、そして育児という過程は、女性の心身に劇的な変化をもたらします。妊娠期にはホルモンバランスの激変により精神的に不安定になりやすく、出産後には「産後うつ」をはじめとする深刻な精神障害を発症するリスクが高まります。特にワンオペ育児状態にある母親やシングルマザーは、激しい夜泣きによる睡眠不足、不規則な生活リズム、パートナーからの協力が得られない孤独感、そして子どもの病気や障害に対する強い不安を一人で抱え込むことになります。
​世界保健機関(WHO)や厚生労働省の研究データによると、産後うつ病は出産した女性の約10パーセントから15パーセントに発症するとされています。さらに日本の厚生労働省研究班の調査では、妊産婦の死因の第1位が「自殺」であり、その多くが産後うつや孤立感に起因していることが明らかになっています。慢性的な睡眠不足は脳の機能を低下させ、うつ病や適応障害、パニック障害、重症化すると産後精神病を引き起こします。これらの疾患は認知の歪みを発生させ、「自分が至らないから子どもが泣くのだ」「自分が消えれば子どもや周囲は幸せになれる」といった痛切な思い込みへ追い込み、最悪の選択へ向かわせてしまうのです。
​日本の厚生労働省による「国民生活基礎調査」では、ひとり親世帯(特に母子世帯)の相対的貧困率は約50パーセントに達しており、実に2人に1人のシングルマザーが貧困状態に置かれています。この背後には、社会構造上の深い問題が存在します。
​日本における父親の育児休業取得率や家事・育児への参画時間は、諸外国と比較しても依然として低い水準にとどまっています。ヨーロッパ諸国では、男性の育児休業取得の義務化や短時間勤務制度の定着、育児手当の手厚い給付など、育児を社会全体で支える仕組みが強固に構築されています。一方、日本では労働環境の柔軟性が乏しく、一度離職した女性が正規雇用として復帰するのが難しい労働市場の構造が存在します。病児保育や特有の疾患を抱える赤ちゃんを預ける体制も不十分であり、働きたくても働けないという貧困の悪循環が生み出されています。
​この惨劇を二度と繰り返さないためには、孤立を前提とした個人責任論から脱却し、社会構造そのものを変革していく必要があります。
​第一に、労働体系の抜本的な見直しです。男女問わずフレックスタイム制やリモートワークの導入を推進し、残業を前提としない労働環境を整えること。そして、シングルマザーをはじめとする育児当事者がキャリアを中断されることなく、適切な収入を得られる復職支援体制を社会全体で保障することが不可欠です。
​第二に、包括的な医療・福祉サポートの拡充です。産後ケア事業の全国的な無償化や、乳幼児健診時のメンタルヘルススクリーニングの強化、専門の医療機関とのスムーズな連携ラインの確立が急務です。
​第三に、コミュニティによる「孤立の解消」です。子育てを家庭内に閉じ込めるのではなく、地域社会が日常的に寄り添い、SOSを早期にキャッチできるセーフティネットを張り巡らせなければなりません。
​福祉支援団体アイズルームは、これまで様々な過酷な環境下で苦しむ方々のサポートを続けてきました。私自身、母子家庭で育ち、言葉では言い尽くせないほどの苦労や痛みを肌で感じて生きてきました。だからこそ、今この瞬間も暗闇の中で一人苦しみ、声を上げることすらできずにいるお母さんたちの痛みが痛いほどよくわかります。
​誰も一人で悩む必要はありません。一人で抱え込ませる社会にしてはならないのです。アイズルームでは、シングルマザーへの生活相談や心のケア、福祉制度への橋渡しなど、一人ひとりの現実に寄り添った温かな支援を展開しています。社会の仕組みを変える取り組みを進めると同時に、私たちは今まさに助けを必要としているお母さんの差し出された手に、真っ先に触れる存在であり続けます。二度と命が失われることのない未来を目指し、社会全体で温かく包み込む支援の輪を広げてまいります。
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