【視覚障害者の私にとって帽子は命を守る「大切な仕事道具」――お気に入りの帽子紛失騒ぎと「天使のガイドヘルパー」の心温まる優しさに感謝して】

      

【視覚障害者の私にとって帽子は命を守る「大切な仕事道具」――お気に入りの帽子紛失騒ぎと「天使のガイドヘルパー」の心温まる優しさに感謝して】

白い壁にキャップ(黒い帽子)3個と、ボディバッグが吊り下げられている画像です。
​白い壁にかけてあるのが私の帽子(キャップ)たちです。
写真を見ていただくと分かりますが、右下にかけてあるのは帽子ではなく「ボディバッグ」です。
​実は私、視覚障害になるまでは帽子をかぶる習慣が全くありませんでした。
「男性が野球でもしないのに、なぜ日常的にキャップをかぶるのだろう? 私はハゲてもいないのだから被る必要はない」と本気で思っていたほどです。
​ところが、緑内障が進行して視野塞栓(視野狭窄)が現れるようになると、状況が一変しました。外に出ると日差しが強烈で、眩しくてたまらないのです。
​私の左目は8年前に全盲(失明)となったため、幸いにも日差しの影響は受けません。
しかし、右目にはまだ中心部にわずかな光が入ってきます。
その大切な光と視界を守るため、私は帽子をかぶるようになり、今ではそれがすっかり習慣となりました。
​私にとって帽子をかぶる理由には、実は5つの重大な要素があります。
​眩しさから目を守るため
緑内障で狭まった視界に入り込む強烈な光を避けるため、キャップのつばで上からの日差しを遮っています。もちろん、真っ黒な遮光サングラスも併用しています。
​人の傘の先から目を守るため
私の身長は180cmあります。ガイドヘルパーさんが差す傘や、狭い道ですれ違う身長160cmほどの一般の方が掲げている傘の先端が、ちょうど私の目の高さにくるのです。目が見えていればサッと避けられますが、視覚障害があると避けられず、万が一ぶつかれば目が潰れてしまいます。帽子があれば、つばが先に当たってガードしてくれます。
​角や電柱への顔面衝突を防ぐため
白杖を使って歩いていても、目の前が見えないため、看板の角や電柱などに顔をぶつけそうになることがあります。帽子をかぶっていれば、顔面が直接ぶつかる前に「つば」が先に当たって危険を知らせてくれるのです。
​急な雨のときの雨具代わり
突然雨が降ってきたとき、私の左手はガイドヘルパーさんの肩に添えられており、右手は白杖を固く握りしめています。両手がふさがっているためカッパを着るのも一苦労です。しかし小雨程度であれば、帽子のおかげで雨具を使わずに凌ぐことができます。
​身だしなみを整えるため
全盲の私は、鏡で自分の姿を見ることができません。そのため髪の毛を整えるのが少し難しいのですが、帽子をかぶってしまえば頭のセットを気にせず整った状態を保てます。
​普段、周りから「もう日が落ちて暗くなってきたのに、なんで帽子をかぶっているの?」と聞かれることもあります。しかし、いちいちこの5つの理由を説明するのは大変なので、一言「眩しいからなんです」とお答えするようにしています。
​さて、前置きが長くなりましたが、ここからが今日の本題です。
​私の毎日の睡眠時間は夜の8時から12時までの4時間と、移動中の仮眠1時間ほどです。そのため、車の後部座席や電車に乗るとすぐに眠りについてしまいます。
​ある日の朝5時、目が覚めたときに「お気に入りの帽子がない!」と気づきました。ニューヨークのデザイナーが手がけた、一番気に入っている帽子です。
焦る気持ちを抑えつつ、お店が開く時間を見計らって、最近訪れた流山のお寿司屋さんや飯田橋の飲食店に連絡を取りました。
​さらに、日頃から大変お世話になっている「天使のガイドヘルパー」さんにも確認の連絡を入れました。
(※「天使のガイドヘルパー」というのは、あまりにも素晴らしいサポートをしてくださるので私が勝手に親愛を込めてそうお呼びしているだけで、実際のガイドさんのお名前は別にあります)
​すると、そのガイドヘルパーさんから、このようなお返事をいただいたのです。
​「いえいえ、全然お気になさらないでください! 利用者様の忘れ物管理も、そもそも私たちの大切な仕事の一環ですから。何も気にせずお任せください。もしお店などに見つかりましたら、私が自分の時間を使って取りに行き、次回お会いするときに責任を持ってお届けいたしますね」
​私はこの言葉に心から感動いたしました。
本来であれば、私自身の不注意による忘れ物です。それにもかかわらず、一切私に罪悪感を持たせないよう包み込むような優しさで寄り添い、どこまでも責任を持とうとしてくださる。
トラブルが起きたときのこの完璧で温かいご対応に、「やはり本物の天使のようなガイドヘルパーさんだ」と胸が熱くなりました。
​しかし、結果はどうだったかというと……
完全に私個人の、仕事中のミスだったのです!
​社用車の後部座席で帽子を外し、降りるときにかぶり忘れてしまっていただけでした。後部座席のドアとシートの隙間に、見事に挟まっているのを後から発見しました。
つまり、飲食店様も、ガイドヘルパーさんも全く関係のない、私一人のうっかりミスだったのです。
​「なんだ、ただの置き忘れか」と思われるかもしれません。
しかし、私たち視覚障害者は、一度手から物を離してしまうと目視で位置を確認することができないため、置き忘れのリスクが健常者の方以上に非常に高いのです。
​以前にも、このような失敗がありました。
新幹線の車内でスマートフォンを操作したあと、窓のフレーム(窓枠のスペース)に携帯をふと置いたのです。その後、心地よい揺れもあって少しうとうとと眠ってしまい、目的地の京都駅に到着した際に慌てて車外へ飛び出していきました。
そして降りた後に「あ! 携帯を窓枠に置いたままだ!」と気づいたのです。
​そのときは京都での打ち合わせを何とか終えたあと、慌てて新大阪駅まで携帯を取りに行きました。たまたま私が乗っていた新幹線が「新大阪行き」だったから回収できましたが、もし「博多行き」だったら福岡まで取りに行かなければならないところだったとJRの方に言われ、冷や汗をかいたのを覚えています。
​携帯電話も、そして視覚を守る帽子も、私にとっては仕事や生活に欠かすことのできない大切な「道具」です。
手から離した瞬間の確認を徹底し、これからはこれまで以上に忘れ物に注意を払わなければと強く反省いたしました。
​お店の開店時間に対応してくださった飲食店の皆様、そして温かい言葉で安心させてくださった「天使のガイドヘルパー」さん、お騒がせして本当に申し訳ありませんでした。そして、心からの感謝を申し上げます。(もちろん、皆様には直接しっかりと丁寧なお詫びと感謝をお伝えいたしました)
​道具を大切に、そして周りの方々への感謝を忘れずに、これからも前を向いて歩んでいきたいと思います。 
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