【風と定位置が教えてくれる、全盲の私が快適さを生み出す暮らしの流儀】

      

【風と定位置が教えてくれる、全盲の私が快適さを生み出す暮らしの流儀】

視覚障害者の5.5畳のマイルームの写真です。

​窓のない3.5畳の納戸から、ハーフ窓のある5.5畳の部屋への移動がようやく完了しました。実に3年ぶりに、窓から入る自然の風を肌で感じています。
​目が見える晴眼者の方からすれば、5.5畳の部屋は狭いと感じるかもしれません。しかし、全盲に近い状態の私にとっては、この広さこそが理想的な空間なのです。何かを一度手放してしまうと、それを見つけ出すだけで一苦労を伴います。だからこそ、この5.5畳の中に私の持ち物のすべてを詰め込み、手の届く範囲に収めることが、最も動きやすく心地よい環境を作ることにつながります。
​私の部屋の中は、極力シンプルに保たれています。物を無くしたとしてもすぐに見つけられるよう、徹底的な配慮を重ねているからです。
​暮らしの中にあるすべての物、たとえば小物から洋服に至るまで、完全に定位置が決まっています。一度使ったら必ず元の場所に戻す。このルールを徹底しなければ、生活のリズムが一瞬で壊れてしまいます。
​クローゼットにかかっているハンガーの位置はもちろん、下着や靴下、ハンカチの場所、トレーニングウェアが収納されている引き出しの中まで、すべてを頭の中で把握しています。服を選ぶときは、わずかな布地の違いによる肌触りや、縫製の構造を手指で感じ取りながら見分けているのです。
​靴下に関しては、まったく同じ種類の黒い靴下を、なんと50足もまとめ買いしています。これなら、洗濯して乾燥させた後に左右をペアリングする手間がありません。すべてが同じ靴下ですから、右と左を間違える心配もなく、いつでも安心して手にとることができます。
​仕事で着用する5着のスーツも、ローテーションを組んで1日ごとにずらしながら着回しています。また、洗濯が終わった衣類は、必ずいつもと同じ定位置へと戻します。
​このこだわりはお風呂場でも同様です。シャンプーやリンス、ボディーソープ、髭剃りに至るまで、すべてがいつもと同じ場所にセッティングされています。これらがほんの少し移動しただけでも、私にとっては見つけることができなくなってしまうのです。
​さらに、視覚障害があると部屋の汚れを視覚で確認することができません。晴眼者のように、汚れている場所をピンポイントで見つけて拭くことは不可能なのです。そのため、棚の上やテーブルの上は、汚れの有無にかかわらず、頻繁に全体を拭き掃除するしかありません。そうして常に清潔を保っています。
​全盲の生活にテレビは不要と思われるかもしれませんが、実は欠かせない存在です。ラジオだけではどうしても番組数が少なすぎますし、デイジー(録音図書)で本を聴くだけでは、毎日そればかりで飽きてしまうことがあります。
​最近の動画配信サービス、たとえばNetflixなどでは、音声ガイドが付いている映画が数多く配信されており、画面を見なくても物語を十分に楽しむことができます。
​また、YouTubeでは「ラジオ調配信」と呼ばれる、画面がほとんど動かずに音声を中心に届けている配信者がたくさんいます。お気に入りのチャンネルを登録しておけば、見たい番組が毎日自動的にセレクトされるため、今ではテレビ以上にYouTubeを聴いて過ごす時間が多いほどです。
​ただ、我が家のテレビは大画面(約50型)のTCL中国製(約45,000円)であるため、ジェイコム(J:COM)のチャンネルに一部対応していません。そのため、通常のテレビチャンネルとJ:COMのチャンネルという2つの系統を、自分なりに制御しながら使いこなす必要があります。
​このように、日々さまざまな不自由や課題と戦いながらも、私は生活の中の仕組みを改善し、工夫を重ねて暮らしています。工夫次第で、世界はいくらでも快適に、そして豊かに変えていくことができるのです。 
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